教育フォーカス

 

【特集15】アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究
 ~授業レポート~

[第1回] 批判的思考力を育む~玉川学園高等部 国語科と理科で創出した「理系現代文」の実践  [6/6]

3.生徒の成長

授業後も思考を深めていく生徒たち

授業後、ある生徒が教員に、「文学者だったら、どういう言葉が入ると思いますか」と質問していた。「理系現代文」の授業では、そのように、授業後に問いをさらに発展させて、質問する生徒の姿が見られるという。

「『理系現代文』で目指しているのは、授業終了のチャイムと同時に思考を止めてしまうのではなく、その後も興味を持って考えを深め、発展させていこうとする生徒の姿です。授業後に生徒が質問に来るのは、その表れだと捉えています」(島津先生)

「理系現代文」の学習を積み上げる中で思考を深めたり、自分の思いを表現したりすることが習慣となり、思考したり表現することを得意と感じる生徒もいるという。AO入試などで面接や小論文の試験を受けた生徒が、「この授業のおかげで怖さを感じなかった」などと話すことは多い。また、「当時は何のための学習なのか分からなかったが、大学に入ってからやっていてよかったと思えた」と話した卒業生もいるという。

「理系現代文」を開講し始めた4月は、自分の考えに疑いを持たずに発表する生徒が目立つが、次第に理由や根拠を十分に考える姿が見られるようになっていく。「確かに間違ってはいないけれども、自分の発表内容とつじつまの合わない部分には触れないというプレゼンテーションが4月当初にはよく見られました。自分の意見に対して賛成と反対の両面から検討するように指導していることもあり、11月の今はよく考えているなと感じられる発表が増えています」(小林慎一先生) 授業を通して、批判的思考力が生徒の中に育ってきていることを、先生方は実感している。




今回は、玉川学園高等部で批判的思考力向上を目指して行われている「理系現代文」の文章読解の授業をレポートしました。批判的思考力は、大学進学後、そして社会に出た後、ますます重要な資質となっていくでしょう。この力を高校生の段階で十分に育むためには指導と評価が重要になります。今回お伝えしたのは、その授業の一例です。

ベネッセ教育総合研究所では、玉川学園や専門家のご協力をいただき、「理系現代文」の年間カリキュラムやその指導と評価について分析・検討を行いました。そのポイントは、当研究所のカリキュラム研究開発室の「調査・研究データ」で報告しています。こちらもご覧いただき、批判的思考力の育成を目指す授業づくりのご参考にしていただけますと幸いです。


Topへ戻る

 【特集15】 一覧へ