教育フォーカス

 

【特集15】アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究
 ~授業レポート~

[第3回] 生徒同士が話し合い、教え合う「対話を通した学び」で教科学力と生徒自身が学び取る力を、共に育む ~東京都立国立(くにたち)高校3年生「生物」での実践  [2/5]

2.授業の様子

定期考査の振り返りを、生徒たちの話し合いを通して行う

まず、大野先生が行う3年生「生物」(4単位)の授業の流れを見ていこう。センター試験まであと1か月という、12月中旬に取材をした授業である。

この日の授業は、第3回考査の答案を返却して、模範解答を配布し、復習するという内容だった。冒頭の10分間で、先生は答案を生徒に返却後、各問題のレベルを説明し、到達度の目安を伝えた。黒板には本年度と、比較対象としての前年度の得点分布を示した。

先生の講評が終わると、残り約90分間はすべてグループワークとなった。席が近い生徒同士で自分の解答と模範解答を見比べながら、中間考査の復習を進める。1グループは3~5人。グループ分けは特にしていないが、生徒たちはだいたい同じ席に座るという。途中で違うグループに移る生徒もいる。「お互いを知る中で、気が合う仲間ができ、それに伴って座る席も決まっていったようです。また、その日に学ぶ内容を考えて、主体的にグループを変える生徒もいます」(大野先生)

まず個々で問題を振り返るグループ

まず個々で問題を振り返るグループ 

生徒はこのような授業に慣れている様子で、やり方などを大野先生に確認することもなく、学習はスタートした。復習の進め方は生徒によって様々だ。1問目から、正解だった者がそう解答した理由を説明して、ほかのメンバーが聞いているグループ、特定の問題にずっとかかりきりのグループなど、自分たちに必要な学習を進めている。あるグループでは、全員が誤答だった問題について、各自が解答とその理由を説明して、どこがどう違うのかを資料集を見ながら話し合っていた。「時間をかけて考えたら、難しくなかった」「あいまいに書いていたから得点にならかなった」と、振り返りによって学びが深まっていく様子がうかがえる。

大野先生は、その間、各グループの様子を見て回る。先生からはあえて説明することはなく、生徒からの質問があれば答えるというスタンスだ。

みんながいる教室でなければできない「学び」をする

定期考査の復習が一段落すると、家庭学習の進め方や志望校の出題傾向など、受験情報を話しているグループもあった。また、周囲の会話に加わりながらも、1人で自分に必要な学習をしている生徒もいた。大野先生は、「あくまで生物の時間であるという認識があれば、学習法や入試の情報交換も含め、自分に必要な学びをすればよいと考えています」と語る。

自分たちで疑問を出し合い、学び合う

自分たちで疑問を出し合い、学び合う 

「今日は中間考査の復習だとは言いましたが、授業中ずっとそれに取り組む必要はありません。今の時期であれば、志望校の合格という目的を果たすために、この時間を自分の中でうまく使ってくれたら、それでよいと思っています。授業は、教員が知識を伝達するだけの場ではありません。このメンバーが集まっている時にしかできないこと、得られないことをすればよいのです」

「生物」の授業では、普段から「対話を通した学び」を中心とした授業を行っているが、中間考査では、生物が入試科目でなくなった生徒も含めて、全員が基準点以上を取っていた。このような授業形式で、教科学力は十分につくことがうかがえる。


 

Topへ戻る

 【特集15】 一覧へ