教育フォーカス

 

【特集17】学生の学びと成長のプロセスを可視化する
第24回大学教育研究フォーラム 参加者企画セッション 開催報告
学修成果の多角的・継続的な可視化とその活用
~育成と一体化した評価への試み~

■ 指定討論


 立命館大学 教育開発推進室機構/大学評価室 教授 鳥居朋子


3大学のみなさまは、かなり謙遜してパイロットやプロトタイプというふうにおっしゃられたと思います。非常に充実した3大学の取り組み事例を深く学ばせていただくよい機会をいただいたと感謝しております。同時に、これだけ個性の異なる3大学の取り組みを俯瞰し有益なコメントを差し上げるという役割は非常に難しいことと思っております。




本学の法人部門には大学評価室がございまして、2016年度から副室長を兼務しております。2018年度に、本学は第3期認証評価のトップバッターとして受審しますので、現在いろいろと試行錯誤しています。そこで、本日は教学IRと認証評価対応の現場からの視点ということで、与えられたテーマについて、内部質保証の課題として何が求められているのかという点と関係付けながらお話しさせていただこうと思います。

内部質保証の考え方として、認証評価機関の一つである大学基準協会が出している定義をスライドに示しました。最後のところに、「プロセス」と書いてあります。内部質保証という考え方そのものの中に、システム的な考え方が内包されているということになります。とりわけ、第3期の認証評価では、これまで基準10であった内部質保証が、基準2に持ち上がりました。なおかつ、今日のテーマにも関連しますが、基準4では、把握し評価した学修成果を適切に「活用」することが求められています。そこで、認証評価を受審するときには、この「活用」まで意識して自己点検・評価をする必要があるということになってきています。

とは言いましても、大学が持っている特性として、複雑な組織体だということがあります。このことを我々はもういちど押さえておく必要があるだろうと思います。例えば、階層的な組織構造からみますと、大学というレベル、教育プログラムというレベル、個々の授業というレベルに分かれます。また、水平方向にも学術機関が組織的に展開しており、学部や研究科等があります。

いま重視されている内部質保証システムに関する課題は、各階層におけるPDCAを回すことはさることながら、それらがいかに連動しているのか、つまり全学的な観点での、1つの組織体としての大学の成果がどのようになっているのかを挙証せよ、というメッセージを発していると理解できます。このメッセージを各大学がいかにスマートに受け止めて、どのように大学固有の文脈の中で実現していくのかということが、いっそう求められるのだろうと考えます。

なかでも、教育プログラムのレベルが重要になると思っています。スライドでは、質的転換答申で、教育プログラムがどのように説明されているかを示しました。高等教育の政策文書で初めて「学位プログラム」という言葉が登場したのは、2005年の将来像答申だったと思います。そこから現在まで、教育プログラムという概念が主張されるようになってきました。スライドに示したのはNIAD-QE(大学改革支援・学位授与機構)の定義なのですが、大変興味深いのは青字の部分です。教育プログラムは基本的には学位プログラムだが、必ずしも学位にはつながらないプログラムも含むという理解です。教育プログラムの意味合いが、広がりをもってきているとも見なせるでしょう。今日報告された3大学の取り組みも、いくらかの部分はこの教育プログラムの枠組みに収まるものもあるのだろうと思います。

大学評価室でのしごとを通じて、全学レベルでPDCAサイクルを回し、学部・研究科レベルでPDCAサイクルを回し、授業レベルでPDCAサイクルを回し、さらにそれらが連動しているということをどうやって客観的に説明するかが大きなチャレンジだと捉えています。どのような可視化のツールを使って、だれがどのように関わってPDCAが回っているのかを描き出すか、それが第3期の認証評価で非常に強く求められているというのが、試行錯誤をしている我々の実感です。

こうした発想は、「逆向き設計」という考え方に通じるものです。Wiggins & McTigheによれば、先に究極の目的を明確にする、その次に承認できる評価方法、証拠を決定する。そして最後に学習経験と指導を計画するという設計の流れになります。こうした流れは、カリキュラムや単元の設計において重要であるということが、とくに初等中等教育で浸透していますが、今後大学の教学マネジメントでも適用されていくでしょうし、その必要があるだろうとも考えます。

ここから先は、企画者および3大学に対するコメントとなります。東京大学の小方直幸先生が学生のエンゲージメントと大学のアウトカムに関するご研究の中で、「3つのポリシーとの関係において、『入学から卒業までの成長』という時の『から』と『まで』がキーポイントになる。大学生の能力を1時点で測ったものと、大学教育を通じて形成された能力とは違うのであり、大学のインパクトがどのくらいあったのかを示す必要がある」という趣旨のことをおっしゃっています。既に3大学でしっかりと取り組まれているように、間接指標と直接指標を組み合わせて使う、1大学だけで完結するのではなく全国データを使ってベンチマークするという点で、これについては非常に進んでいると思います。

また、個人的に感銘を受けたのは、いずれの大学も「ぬくもり」のある成果の可視化をやってらっしゃるということです。「血が通った」と言い換えてもよいのかもしれません。例えば、高知大学では学生とのリフレクション面談を実施されていますし、追手門学院大学でも面談をされています。一体的な指導と評価という場面では、やはり人的なエフォートが必要になってきます。この会場にも恐らく大学の執行部の方々が何人かいらっしゃるのではと思いますが、大学としてそうした人的なエフォートを必要なコストであると認識するのであれば、それをしっかりとしたリーダーシップのもとでバックアップしなければ、「手間がかかるからやめよう」というふうに、取り組みは簡単に消えてしまうだろうと思っています。

もう一つ興味深かったのは、ピアの相互作用についてです。高知大学には、8割が県外出身者ということで、多様な学生が在学していらっしゃるということですが、もしかしたら、そういった学生集団の個性や特徴そのものを学習資源とする、ないしは学習環境として捉える、その上で学生同士の相互作用を見てみる、という分析視点も成立するのかなと思っています。それは、影響を受ける側の学生の成長ということだけでなく、その学生が誰かほかの学生の成長に対する影響要因になりうるかもしれない、というダイナミクスへの視点です。この相互作用をどのように捉えていくのかというのも面白い論点になるのではないかと思いました。

さらに、追手門学院大学では、成長モデルの探索を現場レベルでやっていらっしゃいます。本学でも、「学びと成長調査」という独自開発した学生調査を実施しているのですが、指標を設定したり項目を精査したりするときに担当者間で話していることがあります。それは、大学の側が認識している学生の成長と、学生本人が感じている成長にずれがあるかもしれないということを、冷静に認識しておく必要がある、ということです。言い換えれば、これまで明らかにされていない未知の成長課題がまだまだたくさん存在するかもしれないということに、我々調査を実施する側の人間は謙虚にならなくてはいけないということかもしれません。その意味では、アサーティブ入試を実施し、アサーティブ・ラーナーとして入ってこられた学生が、実際にどのような成長の曲線を描いていくのかということを、学生に寄り添いながら見ておられるというのは、探索的で意義深い実践だと思いました。

それでは、論点提起に移りたいと思います。1点目です。先ほど岡田さんが示された検証・活用のプロセス①における育成した人物像と成長の定義は、各大学の目標、大学ないし学部のディプロマ・ポリシーとどうつながっているのか、これをまずお聞きしたいです。率直に申せば、可視化手法の精緻化が進むあまり、部分最適に向かっていないでしょうか・・という老婆心も若干あります。

2点目は、いま進めておられる取り組みは、大学が全学的な視点から育成したい人物像の実現に、どれくらいインパクトをもっているのかということです。例えば、関東学院大学での総まとめ科目の取り組みはとても素晴らしいと思うのですが、受講人数を見るとまだまだ小規模です。今後、専門・学部の教育にどのように踏み込んでいくのかは、なかなか難しいところだと思います。

3点目は、先ほども申し上げた3つの階層のPDCAサイクルがどうやって連動しているのかということです。実はここが一番難しく、大事な論点だと考えています。難しいことですが、システムとしての内部質保証のボトルネックから目を背けていませんか、ということを確認させていただければと思います。

最後に、各大学にお伺いしたいのは、他の2大学の取り組みから得た示唆として、自校に適用可能なこととは何でしょうか、ということです。逆に、ご自身の大学の取り組みは、どんな大学であれば参考にしやすいとお考えなのか。この点をはっきりとさせることは、自らの取り組みの有効性を考える上でも非常に重要だと思います。やや唐突なたとえかもしませんが、「フルーツ」という一つの区分でも、苺や林檎や蜜柑等、様々な果物があるように、私は大学という存在はこのくらい多様性を備えていると思っています。ですので、現在やっておられることが他大学で応用できる、波及できるのであれば、どういう大学だったら参考になると思われるのか、お聞かせいただければと思います。



■ 論点提起に対する回答




1.「育成したい人物像と成長の定義」は、大学としての目標や大学ないし学部のディ
  プロマ・ポリシー等とどのようにつながっているのか?
  可視化の手法の精緻化が部分最適に向かっているのではないか?

〔塩崎〕 ディプロマ・ポリシーから起こしていって評価指標につながっているというところでは、かなり緊密に連携しているとは思っています。ただし、ディプロマ・ポリシー見直しの際に、当初のものを温存しているという点は留保が必要で、今後評価していって、いまのディプロマ・ポリシーは評価ができない抽象的なことばになっていますね、というところへもっていきたいという目論見はあります。

〔志村〕 本学では、アサーティブの取り組みは、もともと大学の教育理念である「独立自彊・社会有為」をもとに作っています。これは、自分の足で立ってしっかりと歩んでいくというふうに解釈していて、ディプロマ・ポリシーよりはアドミッションポリシーへつなげていくことを考えて設計してきています。そのために受験生像というものを設定し、入学者像へつなげていく、という考え方になっています。全ての部分で、自分で決める、自分で踏み出すという力を養っていけるように、という思いで取り組んできています。そこから連動して、カリキュラムポリシーのところも見直しをして、学生が自分で学ぶ中身を選べる・決められるように、そのためのツールを開発するというところにもつながっています。

〔杉原〕 育成したい人物像の定義について、これはディプロマ・ポリシーが先にあって、その中でも特に成長している学生の特徴として5角形のモデルが出てきた、という前提があります。本学のディプロマ・ポリシーでは、<知識・理解><技能><思考・判断・表現><関心・意欲・態度>の4領域12項目を設定しています。その中でも5角形モデルで示したPDCAを回す力というのは、<思考・判断・表現><関心・意欲・態度>というところをカバーしているのかなと思います。

〔岡田〕 少し補足させていただきますと、追手門学院大学や関東学院大学との共同研究は当初、ディプロマ・ポリシーに基づく成果検証というところからスタートしたプロジェクトではありませんでした。ですから、ディプロマ・ポリシーとの紐付けをこれからしていかなければいけないというのが実際のところで、まさにご指摘の通りそこが今後取り組むべき課題になると思います。ただ、FDを支援・推進する部門や、アドミッションポリシーの設定と実現に責任を持つ主体として、全学で行う学修成果の可視化に対してどのような貢献ができるのか、という観点から考えたときに、1つのモデルを示すということが今回の研究のねらいのひとつでもありましたので、それをどう学内に根付かせていくことができるか、今後考えていく必要があると思います。


2.学内の3つのレイヤー、授業レベル、教育プログラム、大学のレベルでPDCAを連動
  させるために今後予定されていることは?

〔塩崎〕 プログラムレベルのところが、認証評価の肝になるところだと思っています。本学の場合、授業レベルでは改善が進んできていると思いますが、いま用意している可視化のデータは、授業レベルのみならずプログラムレベルでの改善に使えますよ、ということを学部等がどう理解してくれるかがこれからの課題だと思います。いま用意している可視化のしくみと改善のプロセスが、認証評価に対応できるものですよ、AP事業でその準備をしてますよという形で、学内で理解を得ようとしています。

〔志村〕 まず大学レベル、プログラムレベルでは、教育改革本部が設けられており、そこで中期計画に定められた教育改革の進捗状況を、全学部・各部署で年2回、チェックをする仕組みを設けています。これをPDCA会議と呼んでいるのですが、そこから授業レベル・個人レベルのところに落としてきて、主に学生の授業評価が思わしくない授業については、学部長がその授業を見に行き、教育開発センターでコンサルテーションを受けたり、ピアレビューによる授業改善につなげたりという形で連動させていると考えています。

〔杉原〕 大学レベルでは、全学的な組織となる教学に関する会議体を設けてチェックしようとしています。教育プログラムレベルでは、これは学部レベルと解釈していますが、各学部にFD委員会があり、それを支援するのが我々のいる高等教育研究・開発センターの組織である、という位置づけで、カリキュラムマップの作成や活用の支援などを行っています。授業レベルでは、授業改善アンケートや公開授業、新任教員研修などにより、ミクロのレベルのチェックをしています。これらの動きと今回の研究とを、今後、認証評価・質保証の中でつなげていこうとしています。もっと早い段階でつなげに行くべきではないか、という議論も研究会の中であったのですが、私としては、形にして見せられるものがないと共感してもらいにくいと考え、形ができた12月くらいから各セクションを少しずつ回り始めているところです。

〔鳥居〕 お示しした論点に対して、丁寧にお答えいただきありがとうございました。第3期の認証評価では全学的な観点が重要だということで、大学、学位プログラム・教育プログラム、授業の3階層のサイクルの連動が強く押し出されています。一方で、学部横断型のプログラムや、連合大学・連合大学院の展開、海外の大学とのジョイント・ディグリー・プログラムの開発等が見られます。さらには、産業の観点から、教育以外のセクターによる高等教育の領域への参入や、テクノロジーの進展による、キャンパスという物理的な基盤を持たない高等教育機関が今後発展してくる可能性も大いにあります。そういったマクロな動きの中で、この第3期の認証評価の枠組みがいつまで適応可能なのかという問題は、将来的には出てくるのではないかと個人的には思っています。とは言え、ひとまず現段階では、我々大学としては一つの組織体としての大学の内部質保証に対するメッセージを受け止めざるを得ない。そこで、今日はこのようなお話をさせていただきました。自らの大学の教育を実質的によくするためにはどうしたらよいかということを第一に考えつつ、外部から何が求められているのかということをスマートに捉え、受け止めていくという振る舞いが必要になるだろうと思います。


3.いま進めている取り組みが、育成したい人物像の実現にどれくらいインパクトを持
  っているのか?あるいは今後、持ちうるか?

〔木村〕 今日、志村先生にお会いして最初にお聞きしたのが、大学教育再生加速プログラム(AP事業)の中間評価で、テーマⅢ(入試改革部門)で唯一S評価をうけた、ということでした。追手門学院大学の強みは、トップのリーダーシップとともに、現場の方々が一体となって動いているところで、その部分が高く評価されています。大学の中核的な施策であるということとも相まって、学内でのインパクトは相当大きいのではないかと思います。それに加えて、先ほど鳥居先生が「個性の異なる3大学」とおっしゃいましたが、それぞれの大学の良さをどう活かしていくかということが大事だと感じます。この点は第三者的な立場で関わっていて、悩ましい部分でもあります。第三者としては、高等教育としての共通性を抽出して、広く適用できる知見を得たいところです。しかし、育成したい人物像を実現するためには、各大学の個性を生かす必要がある。両者のバランスが、非常に大事だと思います。

〔松本〕 高知大学でも、AP事業のテーマⅤ(卒業時における質保証の取組の強化)の中間評価でS評価を受けておられると伺いました。今回、既に在学生に対して設計・実施されているセルフアセスメントシートを卒業生まで拡大して検証していくということを行ったのですが、それが卒業後の社会での活躍も十分測るにたりうるものである、という手応えを共同研究から得ることができました。入口から出口、また出てからの卒業後の活躍までをひっくるめた形で確認していく上で、育成したい人物像とその指標が社会に受け入れられるものであるということを、学内で認識して頂けました。今後も、この方向でさらに検証を拡大し深めていくことの妥当性とインパクトを示せたのではないかと思っています。

〔友滝〕 現場の授業をお手伝いさせていただいている立場で、感想になりますが述べさせていただきます。鳥居先生が「ぬくもりのある検証」とおっしゃってくださったのが非常にありがたいと思っています。高知大学でのお取り組みで、学生同士の刺激のしあいが資源となりうるかもしれない、ということが、これまで我々が取り組んできた初年次の授業でのことと重なる部分がありました。第一志望ではない形で入学してくる学生が、入学当初しょんぼりしていたりする中で、第一志望で期待にあふれて入ってきた学生と話し合う中で、大学を知る、シラバスを知るということだけでなく、学生同士知り合うことを通して前向きな気持ちになっていく、という姿を見てきました。すべての学生が、入学後に改めて第一志望になれるようなお手伝いができれば、と感じました。


4.自校の取り組みは、どんな大学であれば参考にしやすいか?
  他の大学の取り組みから得た示唆は?

〔塩崎〕 高知大学の取り組みは、中小規模の大学でのものだと思います。追手門学院大学や関東学院大学の大学規模で同じことをやるとすると、相当な無理があるかもしれません。一方、我々の取組は、教育プログラムレベルの改善だけでよいのか、という話になりますので、2大学のように「大学全体として何をしていますか」ということが言えるように、今後挑戦していかなければならないのかなと思っています。

〔志村〕 本学の取り組みについては、この間たくさんの大学からヒアリングにお越しいただいたのですが、「うちでは無理だな」と最後に言って帰られることがあります。それは、ある意味、当たり前だと思います。アサーティブの取り組みは、本学の学生の特徴、立地条件、これまで培ってきた大学の歴史、そういったものを全部含めて考えた上で設計している取り組みです。それをそのままほかの大学で適応できるかというとそれは難しいと思います。そういった前提を踏まえて、各大学が独自に取り組んでいかなくてはいけないと思います。ただ根本的な、学生に対する手間暇の掛け方、熱意、それはどの大学でも参考にしていただけると思います。あとは、学ぶ姿勢に焦点を当てるということでは、特に「分厚い中間層」の育成を担う大学に参考にしていただければ、と思っています。

〔杉原〕 我々の研究は、基本的にセンターとしての取り組みでしたが、各部署では学生を支援するために様々な取り組みをしています。つまり、こういった先端の取り組みを様々な部署に共有しながら、新しいことを起こすことも大事である一方で、このような取り組みを既存の組織で行っていることや、今ある資源をうまくつなげることで、相乗効果を得られるのではないかと思っています。

〔岡田〕 私が外から関わっている立場で、3つの大学での取り組みの肝、コツというとおこがましいかもしれませんが、そのように捉えたのは、その大学が自信を持って検証できるところから始める、ということです。追手門学院大学では、力を込めて実施し、多くの大学から注目もされている施策を起点にして検証を始めました。そういった自信があるので、たとえネガティブな結果が出ても、大きな心で受け止められる。もちろんそれは関係者のみなさんの度量と努力とに支えられているところでもありますが、一見ネガティブな結果が出たとしても、それを受け止めて次のステップに進みますから、どうぞ公開してください、とおっしゃいます。また、関東学院大学では、アセスメントの結果をもとに、とびきり輝いている「著しい成長が見込まれる学生」を特定してインタビューを行うところから研究プロジェクトを立ち上げて、指標を作ってきました。これも、活き活きと学ぶ学生の皆さんを目の前にしてエネルギーをもらいながら前向きな検証ができる場を設定した、という点が有効だったように思います。高知大学では、PBLなどを積極的にされていて授業に長けた先生方が集まって、成果を可視化したいというところから始められて、それが今や地域協働学部という全国的にも注目される学部に昇格する、という形で発展してきています。ポジティブなところから始められる、やらされ感でやるのではないところで始めて、それを拡大していく、ということが肝になっているのかなと思います。

大学・学位プログラム・授業の各レイヤーでPDCAが相互に連動しながら回っていく、ということが理想的な形、最終的なゴールであって、それがトップダウンで一気にできるのであればよいですが、現実問題としてなかなかそれが難しい状況下で、それでもどこかに突破口を作ろうとするときに、本日の事例が参考になるのではないかと思っています。


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≪セッションを終えて≫

高知大学、追手門学院大学、関東学院大学では、いずれも、育成のための評価であるという軸をぶらさずに、評価と育成が一体となった実践を、一歩ずつ積み上げてきておられると感じています。認証評価で求められる内部質保証や学修成果の可視化が「プロセス」であるとするならば、まさにその現在進行形のプロセスを広く共有していくことに意味があるのではないか、そのように考えてこのセッションを企画しました。

3大学で蓄積してこられたこれまでの取り組みの真価を、短い時間の中でどこまでお伝えすることができたか、心もとないところも多々ございますが、何か少しでも皆様のお取り組みのご参考になれば幸いです。

本セッションに参加して下さった皆様に、心より御礼申し上げます。

 

 

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