私は、3つの観点から話題を提供します。 1つ目として、妊娠期における母親・父親の行動・感情に関する回答を、「ポジティブ感情」「ネガティブ感情」「配偶者との協同」などに分けてご紹介します(図7)。
ポジティブ感情については、どの設問でも「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の割合が80%以上を占め、中には100%に迫るものもありました(図8)。母親・父親ともに、妊娠を非常に前向きに捉えていることが分かります。 一方、ネガティブ感情は、母親のほうが高くなる傾向がありましたが、出産や子育てに不安を感じる父親も少なくありませんでした(図9)。「不安だった」という父親の回答は、「出産」で54.6%、「子育て」で43.8%であり、第一子に限ると、「出産」で65.1%、「子育て」で56.4%に達します。
また、妊娠期における配偶者との協同について尋ねた図10を見ると、「配偶者は妊娠生活を支えてくれた」という母親が85.3%、「配偶者の妊娠生活を支えた」という父親が79.8%となるなど、多くの夫婦が協同して妊娠生活を送っていたことが分かります。ただし、「出産後の家事・子育ての分担を配偶者と話し合った」は、母親・父親ともに40%台にとどまっています。妊娠期を無事に乗り切ることに意識が集中し、産後のことまで考えられないのかもしれません。 2つ目の観点は、出産時・出産後の行動・感情であり、「出産時のポジティブ感情」「産後のネガティブ感情・大変さ」に分けて見ていきます(図11)。
多くの母親・父親が出産にポジティブ感情を抱いていましたが(図12)、「出産の後すぐに、また産みたいと思った」という母親は35.1%にとどまっており、出産の大変さが伝わってきます。
一方、産後のネガティブ感情・大変さでは、母親・父親ともに「子どもの世話」「家事」が「大変だった」という回答が目立ちます(図13)。また、「出産後、身体の疲れがとれなかった」という母親は68.2%でしたが、疲れがとれない要因として、子育てや家事の負担が大きいことが考えられます。
3つ目の観点として、妊娠期の行動・感情と子育て開始期の大変さや夫婦関係との関連を見ていきます(図14)。
まず、母親では、妊娠期からネガティブに捉えていた場合は、子育て開始期の大変さも強くなっています(図15)。また、妊娠期における配偶者との協同は、産後期~子育て開始期における夫婦関係とかなり強い関連が見られます。
次に、父親ですが、母親と同じように、妊娠期のネガティブ感情が、産後の大変さを、妊娠期の配偶者との協同が産後期~子育て開始期の夫婦関係を、それぞれ強めています(図16)。
こうして見ていきますと、子育て開始期に夫婦関係を良好に保つためには、妊娠期における配偶者との協同が大きく影響していることが分かります。そのため、よりよい子育てのあり方を検討する上では、産後期だけではなく、妊娠期から母親・父親両方の不安を軽減し、夫婦で支え合えるよう支援していくことが重要になります。
【特集21】赤ちゃんの生活と育ちを追う〜乳幼児の生活と発達に関する縦断研究の挑戦〜
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