教育フォーカス

【特集28】乳幼児期の社会情動的発達を支える子育てとは?~夫婦ペアデータからみたチーム育児の葛藤と協働~ 乳幼児の生活と発達に関する縦断研究より

 【研究概要】 

    「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017-2020」調査概要

真田 美恵子●さなだ・みえこ

ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 主任研究員。これまで乳幼児領域を中心に、保護者や幼稚園・保育所・認定こども園の園長を対象とした意識や実態の調査研究を担当。2016年より「乳幼児の生活と育ち」研究プロジェクトを担当。

夫婦ペアデータが特徴の長期縦断研究

話題提供の前に、私からは本調査の概要とコロナ禍に関するトピックについてご報告します。本調査は、乳幼児の生活と発達、子育てに対する親の意識と行動をテーマにしており、乳幼児が育つプロセス、乳幼児の発達と親の関わりや環境の因果、乳幼児の親(家族)が育つプロセスと因果の解明の3つを主な調査目的としています(図1)。

同一個人(世帯)を追跡する縦断調査であり、2017年から開始し、2020年(3歳児期)の調査は4回目の調査になります。4回目の調査は、2020年9~10月にかけて、0~2歳児期までの継続回答者など2,245世帯を対象に自記式質問紙を郵送して実施しました(図2)。

図1 クリックで拡大します

図2 クリックで拡大します

本調査は、調査票を世帯単位で配布し、保護者 2 名に回答を依頼していることを特徴としています。回答者の組み合わせは、母親・父親が一番多く、本調査でペアデータを用いる際は、最も多い組み合わせである母親・父親についての結果を報告します。子どもの属性や世帯年収は図3、母親の就労率や子どもの就園率は図4の通りです。

図3 クリックで拡大します

図4 クリックで拡大します

コロナ禍における環境変化をうまく生かしてチーム育児を

今回の調査は、新型コロナウイルス感染症の第一波が落ち着きを見せた9〜10月に実施しました。4~5月頃を振り返って、コロナ禍における子どもの生活や親の働き方についてもたずねました。それらの調査項目の中から本調査に関連のあるトピックについてご紹介します。

まず、子どもの生活についてです(図5)。感染が拡大していた4〜5月頃は、通常通り園に通えなかった子どもが保育園や認定こども園では約8割、幼稚園では約9割を占めていました。ただ、そうした中でも規則正しく過ごした子どもは約8割と多く、4〜5月のメディア利用時間は前年に比較して増えたものの、9〜10月には前年と同程度の数値になり、様々な不安を抱えながらも、生活リズムを崩さないよう、親が配慮して過ごしていたことがわかりました。


図5 クリックで拡大します

次に、親の働き方について、父親の在宅勤務の利用経験は、この2年で26ポイント増加して30.9%になりました(図6)。一方で、1週間のうち、在宅勤務をする日数については、約7割の方が「まったくない」と答えていて、依然として多くの親が在宅勤務できる環境にはないことがわかります。では、在宅勤務の日数が増えると平日の育児時間が増えるのでしょうか。在宅勤務が週3日以上である父親は、在宅勤務が週2日以下の父親と比べて、平日の平均育児時間が「2時間以上」の比率が増えるものの、「1時間未満」も約3割いることがわかりました。

また、働き方改革の影響もあるのか、父親の職場について「定時で帰りやすい雰囲気がある」という項目は、4年間で42%から56%になり、14ポイント増加しました。平日、夜7時前に帰宅する父親がこの1年間で8ポイント、増えていることがわかり、職場の様子にやや変化があったことがうかがえます(図7)。

そうした環境変化の結果でしょうか、父親の平日の平均育児時間もゆるやかに増えていることがわかりました。

図6 クリックで拡大します

図7 クリックで拡大します

働き方改革などを背景にした職場環境の変化、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、まだ十分とは言えないものの、父親が家庭や子育てに少しずつ向き合いやすくなってきているようです。そうした環境変化をうまく生かしてチーム育児をどのように進めていくかが問われています。次からの話題提供でそうした話を詳しくご紹介していきたいと思います。

 ページのTOPに戻る

 教育フォーカス【特集28】