第3回調査(2016年調査)までで、友人関係、教員・職員との関係は、大学へのコミットメントや学習意欲に影響があることがわかっています。それが、人間関係が長く遮断されたコロナ禍ではどのような状況なのか、谷田川教授が考察しました。
コロナ禍における学生生活の経験は、入学年度によって異なります。そのため、学年別に分析しました(図7)。まず、大学内の友人関係を見ると、コロナ禍(2021年調査)では、全体的に「友人がいない」の割合が高くなりました。とりわけ2年生(2020年度入学生)では、学年間の比較でも、コロナ禍前との比較でも、「友人がいない」割合が顕著に高いという結果です(図8)。彼ら彼女らは、SNS上でのやり取りも多くありません。
さらに、大学内での人間関係の希薄化が大学での学びに与える影響を見るため、クロス集計をしたところ、「話をしたり一緒に遊んだりする友だち」が多い学生ほど、学びが充実し、成長実感を持っていました(図9)。友人関係が大学での学びに影響していることが推察されます。
次に、大学職員との関係を見ると、3・4年生ではコロナ禍で人間関係が深まっていましたが、1・2年生では希薄化していました。一方、大学教員との関係を見ると、4年生においては過去の調査と比べて希薄化していることがわかりました。
「3・4年生は、コロナ禍前に職員との人間関係を築けていたため、物理的に会えなくてもメールなどで相談しやすかったのではないでしょうか。しかし、教員との関係においては、コロナ禍前の教員と学生との密な関係を知っているため、コロナ禍で同様の関係にないことが希薄と感じているようです」(谷田川教授)
さらに、「コロナ禍における大学生」とひとくくりにはできず、2020年度入学生(調査時2年生、現3年生)への影響はとりわけ大きいものがありました。
「コロナ禍でも、友人関係が広い学生は、学びの充実度が高く、成長実感も持っており、人間関係は大学での学びに大きな影響があることを改めて認識しました。2020年度入学生は、今年度の後半から就職活動が始まり、2023年度は4年生となり、研究室に配属されます。キャリア形成や対面授業にどのような支援が必要か、引き続き検討することが重要でしょう」(谷田川教授)
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