大学教育におけるコロナ禍での最大の変化は、遠隔授業の普及です。どの大学でも遠隔授業が定着し、ポストコロナでも対面授業との併用が続くと考えられます。山田教授はその点に着目し、大学生の学びと成長を促すための両者の最適なバランスを考察するために、対面授業と遠隔授業の割合を7つに区分して、学びと成長に関する分析を行いました。
大学生に対面授業と遠隔授業の理想の割合を聞くと、「5:5」が約25%で最多になり、すべて対面授業を望む学生は約14%とそれほど多くありません。学生はある程度、遠隔授業を歓迎しています。その理由を探るために遠隔授業のメリットを聞くと、「学びの質がよくなる」ことよりも、「自分の好きな時間に学習できる」といった利便性の方が多く挙がました。
では、大学生はどのような学習形態を「効果が高い」と感じているのでしょうか。学習効果を高めるうえで効果的と感じているのは、高い順に「対面」「リアルタイム型」「オンデマンド型」「教材提示型」となり、対面により近い方が学習の質を高めると感じていることがわかりました。
次に、対面授業と遠隔授業の割合と、学びの質の関連を見ていくと、遠隔授業の割合が3割以上になると、学びの充実度や授業への動機づけ、教育満足度が低下していました(図10)。学習時間においても、対面7:遠隔3が分岐点となり、遠隔授業が3割以上になると、「授業の予習復習や課題をやる時間」「大学の授業以外の自主的な学習」が少なくなる傾向が見られました(図11)。
一方、アイデンティティやレジリエンスといった成長の指標を学年別に見ていくと、2020年度入学生(調査時2年生、現3年生)、2021年度入学生(調査時1年生、現2年生)はともに、遠隔授業の比率が高い学生はいずれのスコアも低いという結果でした。ただし、対面授業の比率が高ければ、スコアは他学年と大きな違いはありません(図12)。
「分析結果を踏まえると、対面7:遠隔3がベストバランスだと言えそうです。ただし、ポストコロナでは、対面の割合がもう少し高くなるかもしれません。また、遠隔授業は、『学びを止めない』という点で有効でしたが、青年期を過ごす大学生にとって、成長に大きな影響があったことが見て取れます。今後も、その点をしっかり検討していきたいと考えています」(山田教授)
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