川嶋特任教授からは、まず自身の課題意識を基に大学生の学習時間に焦点をあてた考察がなされました。大学生の1週間の生活時間を図示し、授業内学習時間が徐々に減少している一方で、横ばいだった授業外学習時間は第4回調査(2021年調査)で増加したことを示しました(図13)。いずれも、遠隔授業の影響が考えられるものの、1単位は45時間の学修を要する規定から考えると学習時間は明らかに少なく、大学生の学習量は依然として重要な問題であると指摘しました。
「その解決には、履修単位数の上限設定(CAP制)の義務化、厳格な成績評価を実行化するために収容定員の柔軟な運用、アルバイトなどをせずに学習に集中できる奨学金制度などを検討すべきでしょう(図14)」(川嶋特任教授)
次に、報告1〜4の分析を踏まえて、高校と大学でいずれもAL型の授業が充実しても、それが大学生の学びの質向上に結びついていないという矛盾について言及しました。
「高校での学びを大学教育へとつなげるのが、高大接続改革です。ただ、高校ではAL型授業が増えていても、それが入学者選抜と関連性が見られないとなると、入試のあり方を考え直すことが課題となります」(川嶋特任教授)
最後に、2022年度入学生のコロナ禍の影響、そして、コロナ禍の影響を受けた大学生が社会人となった時の動向についても重要な研究課題だと指摘しました。
「高校2・3年生でコロナ禍の影響を受けた現1年生が、大学生活に適応できるのか、どのような支援が必要なのかも見ていくべきでしょう。そして、コロナ禍の影響を最も受けた現3年生が、社会や仕事において、他の世代と異なる点があるのか、今後の調査によって明らかにできればと期待しています」(川嶋特任教授)
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