教育フォーカス

【特集30】大学教育学会第44回大会 ラウンドテーブル
「コロナ禍が学生の学びと成長に与えた影響〜大規模調査から大学教育の今とこれからを考える〜」リポート
〜「第4回 大学生の学習・生活実態調査」結果より〜

総括コメント

川嶋太津夫

大阪大学 特任教授 川嶋太津夫

名古屋大学教育学部助手、神戸大学大学教育推進機構教授、大阪大学未来戦略機構教授、同大学高等教育・入試研究開発センター長等を経て、現在、同大学スチューデント・ライフサイクルサポートセンター長。専門は、教育社会学、高等教育論。中央教育審議会大学分科会大学、大学振興部会臨時委員、国立大学協会入試委員会専門委員。主著に、『大学改革を成功に導くキーワード30』(共著、学事出版、2013)、『教学マネジメントと内部質保証の実質化』(共著、東信堂、2021)、『未来志向の大学入試デザイン論』(共著、大阪大学出版会、2022)など。

学生が学習に集中できる環境をどう整えるか

 川嶋特任教授からは、まず自身の課題意識を基に大学生の学習時間に焦点をあてた考察がなされました。大学生の1週間の生活時間を図示し、授業内学習時間が徐々に減少している一方で、横ばいだった授業外学習時間は第4回調査(2021年調査)で増加したことを示しました(図13)。いずれも、遠隔授業の影響が考えられるものの、1単位は45時間の学修を要する規定から考えると学習時間は明らかに少なく、大学生の学習量は依然として重要な問題であると指摘しました。
 「その解決には、履修単位数の上限設定(CAP制)の義務化、厳格な成績評価を実行化するために収容定員の柔軟な運用、アルバイトなどをせずに学習に集中できる奨学金制度などを検討すべきでしょう(図14)」(川嶋特任教授)
 次に、報告1〜4の分析を踏まえて、高校と大学でいずれもAL型の授業が充実しても、それが大学生の学びの質向上に結びついていないという矛盾について言及しました。
 「高校での学びを大学教育へとつなげるのが、高大接続改革です。ただ、高校ではAL型授業が増えていても、それが入学者選抜と関連性が見られないとなると、入試のあり方を考え直すことが課題となります」(川嶋特任教授)
 最後に、2022年度入学生のコロナ禍の影響、そして、コロナ禍の影響を受けた大学生が社会人となった時の動向についても重要な研究課題だと指摘しました。
 「高校2・3年生でコロナ禍の影響を受けた現1年生が、大学生活に適応できるのか、どのような支援が必要なのかも見ていくべきでしょう。そして、コロナ禍の影響を最も受けた現3年生が、社会や仕事において、他の世代と異なる点があるのか、今後の調査によって明らかにできればと期待しています」(川嶋特任教授)

図13 1週間の生活時間 クリックで拡大します

図14 学習時間を確保するための課題 クリックで拡大します

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