今後、協働学習とICT活用に関して、より充実した実施がなされるためには、以下の点を考慮したり、議論したりすることが必要だろう。
上記したように、協働学習自体をまだ充実させていないのに、そこにICTのことを加えて考えないといけないのは、教員にとって大きな負担となる。図5をみてみると、学校現場に定着しやすい学習とそうでないものが推測できる。
具体的に言えば、まず一斉指導における教材の提示から入ることが肝要である。低活用の教員をみると、ここの中にもさらにひとつの区切りがありそうだ。まずは、実物投影機などアナログ教材を提示することから入り、次にデジタル教材の提示に取り組むことになろう。次に、子どもにパソコンやタブレット端末等を活用させるという取り組みを通して、調べ学習を進めるという段階がある。この段階から、子ども主体の学習の要素が強くなるので、教員としては適切な機器の活用方法だけではなく、子どもの情報活用プロセスを子ども自身に振り返らせるような指導法が求められる。メタ認知の育成が重視されるようになるのもこの段階からであろう。協働学習は、これらの次の段階になるだろう。調べたものをお互いに交流・議論させたり、ひとつの問題に対し、チームを組んで調べてまとめて発表すると言ったイメージである。
なんとなくICTを活用しているだけでは、次の段階には自然と移行はせず、活用の幅は広がらない。次の段階に入るためには、改めて学力観や授業そのものを考えないと、ICT活用のレパートリーは増えていかないのである。
ICTを活用した協働学習への取り組みに対し、まずは授業のイメージを持つところから始めたい。ところが、1人1台端末の活用事例を見ても、協働学習としての活用を試みているような学習はまだ少ない。中川ら(2014)は協働学習とICT活用に関する事例を幾つか紹介をしている。例えば、以下のようなものがある。
このような活動には、以下の様なメリットがあると思われる。
将来の形を言えば、ひとりひとりが個々に調べ活動を行い、その結果を統合し議論するようなスタイルがあるだろうが、このように話し合い活動を発展させたような取り組みから始めるのはどうだろうか。また、こうしたスタイルであれば、1人1台端末でなくても、グループに1台あれば取り組めるので、教室にタブレット端末を常駐させることができる可能性も高くなる。
重要なのはこうした学習を通して実現をする学力観となる。本稿を通して述べてきたような、表現力や思考力の育成に関していえば、まず子どもが考える機会を増やすことや、「考える技法」そのものを経験を通して学ぶことが必要である。その際、協働学習を通して、思考し、発信する機会を量として増やしながら、振り返りを通して成長していけるような学習環境が求められよう。こうした学力を志向し、実現しようとしない限りは、協働学習に取り組むことの意義を見出せないであろう。[END]
中川一史・寺嶋浩介・佐藤幸江(編著)(2014)『タブレット端末で実現する協働的な学び』 フォーラム・A、大阪
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