教育フォーカス

【特集9】少子化社会と子育て

[第2回] 知りたい!「子ども・子育て支援新制度」
  ~家庭、園への影響は?~  [2/2]

② 家庭への影響は?

大豆生田 啓友先生

大豆生田 啓友●おおまめうだ ひろとも

玉川大学教育学部教授。青山学院幼稚園教諭等を経て現職。専門は幼児教育学、保育学、子育て支援。著書に『「子ども主体の協同的な学び」が生まれる保育』(学研教育みらい)など。

■ 保護者の働き方も議論されるべき

今後、新制度によって待機児童が減少すれば、ますます共働き家庭が増えていくと思います。子どもを預けやすくなることで、長時間保育、低年齢からの保育も増加するでしょう。今回の新制度とは別の問題ですが、保護者の働き方についても議論される必要があるのではないでしょうか。

園側については、保護者が園を選択することができるようになることで、これまでは働く保護者は主に保育所を、そうでない保護者は幼稚園を選ぶという形でしたが、幼稚園、保育所、認定こども園、そして公立、私立すべてが同じ園選びの土俵にのることになり、競争原理がはたらくかもしれません。

都市部のある自治体のニーズ調査などでは、認定こども園に入れたいと考えている保護者が多い傾向が見られます。従来の保育所にも教育機能はあるのですが、それがあまり目立たないためかもしれません。よって、保育所がこども園に移行するケースも増えてくることも予想されます。

■ 子育ての悩みにこたえられる場所・人を

今後、より大事になっていくことの一つは、就学前教育と小学校教育の接続についてです。保護者の中では就学への関心がとても高くなっており、5歳児への幼児教育はこれからますます着目されると思います。

また、幼稚園、保育所、こども園ともに、これからは家庭との連携が鍵になると思います。私が「いい保育をしているな」と思う園は、保護者との連携がうまくいっています。保育は実態や成果が見えにくいのですが、とても大事な教育をしています。これからは見えにくいものを見えやすくするための情報の発信が重要になってくるでしょう。それによって保護者を園に巻き込み、園のファンになってもらうことが大事になると思います。

もう一つは保護者への支援についてです。新制度の柱のひとつに子育て支援サービスがありますが、これにより、保護者自身が“育つ”ということが期待されます。子どものことだけでなく、保護者自身のことについても相談にのることができる人や場所が求められていると思います。

3.質疑応答

Q : 新制度は、保護者にはとてもよいと思いますが、子どもにとってもよいと言えるのでしょうか。特に障害児保育などについてはいかがでしょう。

A(無藤氏) : 新制度は保育の質の向上も重視しているので、子どもにもプラスになると思います。保育者への研修や待遇の改善もうたわれているので、結果的に子どもの保育や教育にも良い影響を与えるでしょう。障害児保育についても予算は増えており、すべての園で入園を拒否しないことになっています。

Q : 幼稚園教育要領(以下要領)や保育所保育指針(以下指針)は2014年秋から改訂に向けた議論が始まるそうですが、どこがポイントですか。

A(無藤氏) : 要領と指針は同時改訂の予定です。ポイントとしては、①双方をより近づける、②小学校への接続、特に5歳児への幼児教育をどうするか(幼保連携型認定こども園教育・保育要領にその芽が少し出ています)、③未就園児と家庭とのつながり、の3点が挙げられます。また、小学校の学習指導要領の改訂も併せて行われるので、0~18歳の大きな教育の流れの中で、幼稚園、保育所、こども園がどのような役割を果たすかについても、要領、指針に入るのではないかと思っています。

次世代育成研究室「研究室トピックス」も合わせてご覧ください。

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