いま日本が目指すべき教育とは何か
急速にグローバル化が進む社会で求められる人材像とは
小中高生の学びはどのように変わっていくのか、教師はどうあるべきか
最新の教育トレンドを内外の第一線の識者に聞く「教育フォーサイト」。
第一弾は日本学術振興会理事長の安西 祐一郎氏に聞きました。
聞き手 : ベネッセ教育総合研究所理事長・新井健一
新井 前回は社会とのつながりから大学の在り方をお話しいただきました。高校と大学の関係の在り方、いわゆる高大接続の課題についてはどうお考えでしょうか。
安西 日本の高大接続の大きな課題は、高校教育の質の保証が一方で問題、大学教育の質の転換が他方では問題、そういう山積した問題のほとんどを大学入学者選抜、あるいは大学入試が背負ってしまっている、という点にあります。その中で、大学入学者選抜の方法としては、1回のペーパーテストでなく、多様な能力や経験を多角的に評価することが重要になっていくでしょう。多様な能力や経験と言いますが、大事なことは主体性です。これまで「自分で」何をしてきたか、ということですね。たとえば、臨場体験というか、海外体験、ボランティア、病院で働く、インターンシップなど、高校時代の体験を全部ポートフォリオ的に組み合わせる評価方法はこの機会に深く検討する価値があります。受験の「ために」体験するということも起こり得るので、それを見抜くパフォーマンス評価が大切になりますね。
新井 現在、高校の学習到達度テストの議論が行われていますが、これについてはどのようにお考えですか?
安西 問題は、こうしたテストの話題が出るとそればかりに議論が集中して次のような論がすぐに出てくることです。「テストは学力格差の縮小にはつながらない」、「学力以外の評価方法はなかなか良いものがないから結局テストの点数だけが大学入学者選抜に使われる」、「何度もテストを受けられるようにすればするほど高校の貴重な時期がテストのための勉強に費やされてしまう」といった論です。テストだけでなく多様な力の多角的な評価をできるだけ公正に行うことが大切で、これができないと言うなら何をやってもうまくいかないでしょう。テストの議論ばかり流布している現状は、昔からの日本を引きずっているように思います。
新井 臨場体験については、評価方法と、公正性が課題ですね。一方で、従来型の1回のテストで選考する方法も、どの程度の公正性があるのかは議論になるだろうと思います。自分にとってラッキーな問題が出たとか出ないとか、評価能力と尺度の問題などです。とはいえ、多様な評価に変えていくことになるでしょうか。
安西 総論としてはそうだと思います。大学ごとに、多様な評価を組み合わせてウェイトづけをした評価尺度を工夫していくべきでしょう。東京大学も推薦入試の定員枠を設けると発表していますし、京都大学も入試改革の議論を随分やっています。そうやって徐々に変わっていくのだと思います。また、公正性を保証するには入学者選抜における評価項目やウェイトづけなどの情報も含めて、大学の情報公開を徹底する必要があります。
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