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対談:遠山敦子氏に聞く   「挑戦のススメ」 [3/9]

 教育体系に組み込みたい5つの体験

遠山 先日、「こころを育む総合フォーラム」というパナソニック教育財団の仕事で熊本へ行きました。その財団が表彰する「こころを育む活動全国大賞」を取った学校を訪れるためです。その学校のプログラムは、4年生になると毎週昼休みに皆が隣接する特別支援学校へ行って、パートナーを作り、仲良くなり、友達になり、その子がどうやったら喜ぶだろうか、どうやったら心が通じるだろうかという活動をしています。この学校の素晴らしいところは、35年前に開校して以来、校長先生が何代も変わる中、全ての校長先生と先生方がこのプログラムを引き継いでいることです。

その子どもが書いた感想文を読んで、本当に心を打たれました。障害のある子どもたちにどう対応すればいいのかということが、自分たちの実践を通してわかってくるのです。そうすると、支援学校の子どもたちへの対応だけではなく、町に出たときにお年寄りを手助けしたり、小さい子どもと遊んであげたり、頼まれなくても積極的に他人を思いやって行動するようになったそうです。

新井 思いやりは、教えるよりも体験ですね。

遠山 はい。先ほど申し上げた5つの体験を、学校の教育体系の中に組み込んでくれるといいですね。

新井 5つの体験のことや富士山のお話などは理屈ではないですが、感性や情動の大事さにつながっているような気がしますね。

遠山 そうですね。人間にとって大事なのは、しっかりした知力を持つことと、豊かな感性、豊かな心を持つことですね。心を養うという角度から言うと、感性を磨くような経験、あるいは対人関係で具体的に学んでいくようなことが大事だと思います。

道徳の教科化という話がありますが、それはそれで理屈として学ぶことは大切でしょう。人類の歴史の中でどのように心の問題が取り扱われてきたとか、民族や宗教の違いとか、あるいは素晴らしい物語があって感動するとか、いろいろな方法があると思いますが、それに加えて体験するということはとてもいいものです。

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