15分はあっという間に過ぎた。各班の代表者が自分たちの話し合った結果を発表する。すると女子生徒がススッとホワイトボードに近づき、書記役を買って出た。6つの班が考えた目標は次の通り。
それぞれの班の話し合いでは、個人個人が自分たちの意見を臆する事なく発言しているのが目についた。また、高校1年生とは思えない話し合いの段取りのよさがあり、1年足らずの間に相当鍛えられているな、という印象を受けた。
すべての班が目標を発表した時点で、制限時間まで残り5分。1人の生徒が、「1分間考えてから、多数決で3つ決めよう」と提案した。すると別の生徒が、「まとめられるものは、まとめてみたらどうか」と皆に問う。そしてこの案が採用され、まとめ作業が始まったが、ここから迷走する。結局、制限時間内で3つの目標を決めることはできなかった。
豊田氏は「今回の君たちの話し合いを振り返り、もっといい話し合いにするにはどうしたらいいのか5分間考えてみよう」と生徒たちに促した。
その5分後、生徒からは、
「最初、腹のさぐりあいがあった。もっと自発的に発言すればよかった」
「時間配分を事前に考えていれば、話し合いのスピードは上がっただろう」
「制限時間ぎりぎりになると反対意見を言いにくい雰囲気はよくなかった」
などといった意見が挙がった。
豊田氏は生徒たちの言葉を聞いたうえで、次のように話した。「話し合いでは、常に目的を意識することが大切。これは大人でもなかなかできないこと。みんなが目的を意識していればもっといい話し合いになったのではないか。これは社会に出ても重要なことだから、忘れないでほしい」。
彼の指導からは、「企業人としての豊富な経験」が感じられる。夢ゼミは、「多様な大人と関わりながら興味ある分野について学習する」ということをうたっているが、豊田氏こそが多様な大人の代表として生徒に映っているのではないだろうか。
ドバイなど海外での生活が長い岩井元君も夢ゼミは自分を鍛えてくれるという。
「みんなで意見を出し合い、コミュニケーションを取る授業を受けるのは初めてのことで、いい経験になっている。海外にいたので日本の部活動をするのも初めて。バレー部に所属しているが、想像していたよりも厳しい。だけど、ここで頑張ることはきっと将来の役に立つはず。教師になるという夢に向かって、いろんなことを吸収していきたい。」
平成26年度に新校舎建設予定の隠岐國学習センターには、高等学校だけではなく、義務教育にまでサポート範囲を広げる展望がある。地域の担い手を渇望する島全体からの期待は大きい。
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