シリーズ 未来の学校

石巻市雄勝町のムーブメント、 地域住民と支援者がつくるホンモノの自然学校

未来を生きる子どもたちは何をどう学ぶべきなのか
そこで大きな役割を果たす学校はどうあるべきなのか
「未来」といっても決して空想や夢物語ではない、実は
もう始まっている先端的な意味での未来の学校を探訪します。

【後編】 雄勝の自然学校の先生は、地元の人々 [1/6]

リアス式海岸や豊かな森林、川に囲まれた宮城県の北東部に位置する石巻市雄勝(おがつ)町。2011年3月11日、東日本大震災の大津波によって町の8割が甚大な被害を受けた。前編では、雄勝町で起こっているムーブメント「雄勝学校再生プロジェクト」を支援する人々の奮闘を伝えた。後編では、地元の人の視点を手がかりに、外部から来た支援者との共生と復興への道を探る。

制作協力:株式会社百人組
コメンテーター:林信行(ジャーナリスト)

 雄勝ローズファクトリーガーデン

「徳水さんは花畑にいる」とだけ聞いていた。行けばわかるというので、ひとまず指定の場所に車を走らせる。指定の場所とはいっても、住所がわかっているわけではない。ざっくりとした道順を教わっただけだ。その道順を頼りに進むと、果たして花畑が見えてきた。花畑の周囲は道路以外には何もない。きれいに整地された地面がずっと続いている。なるほど、この場所を正確に伝えるのは難しい。同時に、この場所が東日本大震災の大津波によって深刻な被害にあったことを直感した。

徳水博志(とくみずひろし)さんは、花畑のテラス席で口元に笑みをたたえて座っていた。徳水さんは現在、この花畑「雄勝ローズファクトリーガーデン」を拠点に、緑化支援や被災者支援、防災教育、環境教育などを行っている。妻の利枝(としえ)さんが注いでくれた新鮮な自家製ミントティーを飲みながら、「ローズファクトリーガーデン」がどのように造られたのか、話を聞いた。

 被災地を花と緑で彩ろう

「ここローズファクトリーガーデンは、妻の実家の跡地です。この場所で、妻の母、叔母、いとこの3人が津波で流されました。妻が彼らを弔うために、実家跡地に花を植えたことが、花畑を造るキッカケになりました」と徳水さんは話す。

「ローズファクトリーガーデン」は、「雄勝花物語」という「雄勝町を花と緑の力で復興する」ために被災した住民が立ち上げたプロジェクトの一環で作られた。2011年9月に徳水さんが千葉大学・園芸学部の秋田典子先生や「花と緑の力で3.11プロジェクトみやぎ委員会」の鎌田秀夫(かまたひでお)さんに出会ったことから花畑造りが本格化したという。

徳水さんは、自宅を失った雄勝町の人々のために、故郷と繋がる場所となる花畑にしようという「物語」を思い描いた。この「物語」は多くの人たちの心をとらえ、地元住民のほかにも全国から1000人以上がボランティアとして花畑造りに参加するまでになった。2014年には活動をさらに広げるために、「一般社団法人 雄勝花物語」を設立し、ハーブ栽培や果樹の試験栽培を開始した。 事業を軌道に乗せて若者を雇用して、雄勝の復興を後押ししたいと考えている。

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