シリーズ 未来の学校

秋田県発、 リベラルアーツ教育がグローバル人材を輩出する

【前編】 国際教養大学が実践する、英語で学ぶリベラルアーツ [6/6]

 世界中の人々に、秋田のよいところを広めたい

菅原さんには夢がある。将来、秋田でツアーコンダクターになり、世界中の人々に秋田のよいところを広めていくことだ。最終的には起業して、この地に会社をつくりたいのだという。だからこそ、秋田のことも深く学ぶために、地元の大学に入学することにこだわった。

「この大学は、周囲に遊ぶところはなく交通の便も悪いですが、本当に自分のやりたいことを見つけて、やりたいことに集中するには最適な環境です。友達と遊びに行って、ランチをしたいと思うこともありますが、そのために大学へ通っているわけではありません。周りの学生が高い志をもっているので、いい刺激や影響をたくさん受けます。そんな仲間たちとの繋がりや手厚い教育制度、24時間開いている立派な図書館などの施設、これだけ揃っている環境の中で学べるのはとても恵まれています」と菅原さんはキラキラとした目で語ってくれた。

この日の最後の取材を終えると、外はすでに真っ暗。図書館の中をのぞくと、多くの学生たちが机に向き合い、黙々と勉強していた。

─ ジャーナリスト 林 信行の視点 ─

国際教養大学のキャンパスを歩き、寮や授業の様子をのぞいてとても懐かしい感じがした。私は日本の大学ではなく米国に留学し、しばらく寮住まい、最初の数カ月はその寮でシリア人とルームシェアをしていて、その雰囲気があまりにそっくりだったからだ。米国の寮では生徒たちは自分ならではの個性を自ら探り(ルームメイトがいる場合は、お互いの共通項を探り)ドアの飾り付けで自分の個性をアピールする。異国のルームメイトと話し合って、あらためて世界を知り、自分が住んでいた世界の外側から見た境界線を知る。自分がどういうバックグラウンドをもった人間かをあらためて認識して、教室ではそのバックグラウンドを基盤に全力で課題に挑む。国際教養大学の学生たちは、まずは秋田にある大学の寮でそうした体験をし、3年生になると今度は実際に海外に出て体験する。1年という期間は本当の意味での海外住まいやその国の文化を知るには少し短いかもしれないが、これからのグローバル社会、ずっと日本だけにこもっている大学生よりは、はるかに広い視点を持つことにつながるはずだ。

次回後編では、学長へのインタビューを中心に、在校生の声や卒業生の現在、地域交流プログラムの取り組みなどをレポートする。

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