学校でも塾でもない、躍進する
「アフタースクール」という新たな選択肢

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 世界が進学先になる

東京都目黒区、都会の公園の前に立つ洒落たビル。その前に1台のミニバスが停まると、中から大勢の小学生たちが飛び出してきた。子どもたちは、そのビルの1階にある「東京インターナショナル 中目黒アフタースクール」の中へ入っていく。 子どもたちは教室に荷物を置くと、教室とすぐ隣り合わせの広いホールで遊び始める。

やがて先生が現れると身体を使ったゲームが始まった。学童保育によくある風景だ。

だが、子どもたち2人がおしゃべりをしていると先生がファーストネームでその子を呼び、「English, please.」と正した。そう、ここは「東京インターナショナルスクール」という国際バカロレア校に附属するアフタースクールで、授業も生徒たちの会話も「すべて英語」がルールなのだ。

「ひとつの語学をマスターするには2000時間から2500時間掛かります。アメリカ国務省が、外国語をマスターするためのレベル分けをしていて、レベル1は語源が近い言語。例えば、英語が母国語の人がスペイン語を学ぶ場合。日本語と英語は語源が一番遠いレベル4で、日常会話のマスターには2180時間掛かるそうです。2000時間というと、1週間に1時間の学習で40年掛かります」と語るのは本校の創設者の坪谷ニュウエル郁子さん。同校は、坪谷さんの教育理念に賛同した住友商事と全国のパートナー企業によって運営されている。

東京インターナショナルスクール アフタースクールでは、1日3時間のプログラムのあいだ、英語をずっと使い続ける。ここに週5日間通えば2.8年、週4日なら3.5年で英語学習2000時間を達成することになり、小学校1年生から入って週5日通えば、小学校3年の頃には難なく英語で話せるようになる計算だ。

これだけで、子どもの選択の幅は大きく広がる。それまでは多くの日本人が思い描いていた国内の大学への入学がゴールだったものが、自分が本当にやりたいことを軸に世界中の大学が選べるようになり、日本の大学は選択肢の1つでしかなくなる。これからのその子の一生を大きく変える武器となることだろう。

今の日本の学校教育では、基本的には中学から英語を習い始めるが、 音を聞き分ける聴覚や聞いた音をそのまま発音する喉と舌の筋肉は幼少期に形成される。思春期を越えると聴覚が完成してしまい、それまで聞いたことのない音を聞き分け、発音することが難しくなる。いつ英語を学び始めるのかは今後ますます重要な問題になるだろう。

 楽しくグローバルスキルを

もっとも、同校が教えようとしているのは英語だけではない。坪谷さんによれば、同校は「自分自身と社会に責任をもち、自信をもって英語で自分を表現できる人を育むという理念に基づいています」という。

東京インターナショナルスクール アフタースクール創設者の坪谷さん

東京インターナショナルスクール
 アフタースクール創設者の坪谷さん

坪谷さんは続けていう。
「英語は世界の共通言語なので言葉として身につけておくと便利ですが、それだけでは不十分です。本校では、コミュニケーション能力のみならず、思いやりの気持ち、独立した考え方、自己表現力、偏見のない広い心や探究心を育てることを目的として、子どもたちを世界で活躍できるグローバル人材へと育てる基礎、真のスキルを身につけます」

 

いわゆる「21世紀型スキル」、「グローバルスキル」と呼ばれているものだ。だが、坪谷さんはこう付け加えた。

「ただし、保護者の方から最も評価をいただいているのは、子どもたちが本当に楽しんでいることです」

実際に教室を覗いてみると、子どもたちの元気のよさが目につく。1クラスあたり多くても10人くらい。生徒一人ひとりに先生の目が届く少人数制。その雰囲気はアットホームで堅苦しさがなく、実施しているプログラムが楽しそうだ。

Show&Tellの様子

Show&Tellの様子

あるクラスでは「Show&Tell」が行われていた。「Show&Tell」とは、米国では幼稚園や小学校低学年から行われているパブリックスピーキングのスキルを身に付けるためのプログラムだ。指名された子どもが、自分が好きなものや何かの方法などについて他の生徒に発表する。発表後、生徒たちから質問が飛び、それに答える。このクラスでも、発表、質問、回答すべて英語だ。

別のクラスを見学すると、アートのプログラム中。全員、机を使わずに床に寝転がり、遠近法の描き方についての英語の説明ビデオをiPadで見ている。ビデオ視聴後、スケッチブックにビデオで学んだ遠近法を再現していた。知的好奇心をくすぐる大人も楽しめる内容に思えた。

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