第9回 | プログラミング教育で地域創生、 官民学が連携して地域人材を育成する島根県松江市の一大プロジェクト |
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オープンソースラボで開かれるプログラミング教室は、今では松江市が主催するもののほかに、島根県が主催しているものもある。Ruby City MATSUEプロジェクトの影響は、松江市の枠を飛び越え、島根県全体にも及んでいるのだ。
島根県の産業振興課の安達昌明さんは、Ruby City MATSUEプロジェクトの県内他地域への影響を次のように話した。
「県としては、Ruby City MATSUEプロジェクトの松江を軸として、他地域に施策を展開しています。例えば、本日県が主催するプログラム教室は、益田市から講師が来ています」
松江市の盛り上がりは、県西部にも広がりを見せている。例えば、中学生Ruby教室は出雲市、益田市などでも開催されており、先日開かれた出雲の教室では、定員20名のところに応募が40名もあったという。また、Rubyプログラミング少年団の高尾さんは、昨年益田市の中学校でスモウルビーの体験講座を開いている。さらに、中学で学んだスモウルビーを足掛かりにキャリアアップできることを伝えるために、県内の高校で講座も開いた。
「『アントレプレナーの教科書』を訳した堤孝志さんと、飯野将人さんなどを講師に招いて、県立浜田商業高校の生徒約15人にRubyを使ったビジネスモデルを新しくつくってもらう授業を行いました。生徒たちが、自分たちの立てた仮説をインタビューで確認するようなフィールドワークをともなうものです。また、県内全域や県外の高専生や大学生を対象に4泊5日のスケジュールで学生Ruby合宿も行っています。この参加者たちは、島根県内の企業に就職する確率が高いです」と安達さんは説明する。
このように、島根県では中学生から高校生、高専生、大学生と段階的に未来を担う県人材の育成に力を入れているのがわかる。県としては、「Rubyの島根県」ではなく、「Rubyを使った価値あるサービスを展開する島根県」を目指している。そのためには、若者たちに地域の課題をITで解決し、新たなサービスを創造して、イノベーションを起こせる人材になってほしいと願っているのだ。
今年で7回目を迎える「RubyWorld Conference 2015」は、松江で開かれる国際会議として定着してきた。当会議は、一般財団法人Rubyアソシエーションや島根県、松江市、島根大学、松江高専、しまねOSS協議会、経済産業省などで構成される「RubyWorld Conference開催実行委員会」が主催する。今年の目玉は、世界220以上の都市に広がりを見せているフィンランドで始まった女性向けのプログラミングのワークショップ「レイルズガールズ」を立ち上げた、リンダ・リウカスさんを迎えることだ。
リンダさんは、スタンフォード大学在学中にRubyを学び、自身の経験から、男性のイメージが強いプログラミングを女性にも楽しんでほしいと思い至り、「レイルズガールズ」を立ち上げた。フィンランドでは、プログラミングが2016年度から小学校の必修科目となる。当政府には、特殊技能としてのプログラミング自体を学ぶというよりは、今や世界を正しく理解するためにはコンピュータサイエンスの知識・技能は不可欠だという考えが根底にある。
一方、リンダさんも、世界を変える一番よい方法はプログラミングを知ることだと語っている。だからこそ、そんなに素晴らしい方法を男性だけでなく、女性も獲得できる機会を増やすことがフェアだろうと考えているのだ。
「RubyWorld Conference 2015」でリンダさんとともに基調講演を任されたまつもとゆきひろさんは、子どもたちに最も学んでもらいたいことを次のように話した。
「自分の子どもも含めて、すべての子どもたちに伝えたいのは、『フェアであれ』ということです。理想論かもしれませんが、すべての人間がそういうものを身に付けていたら、世の中の大半の問題は解決するのではないでしょうか」
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