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日本教育工学会 2021年秋季全国大会「中学校学習指導要領に基づく言語能力Can-do statementsの開発」

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はじめに

ベネッセ教育総合研究所言語教育研究室研究員の小野塚若菜と鳴門教育大学准教授の泰山裕先生が、2021年10月16日から17日に行われた日本教育工学会 2021年秋季全国大会において共同発表を行いました。

開発の目的

平成29年告示の学習指導要領において、すべての学習の基盤となる資質・能力のひとつである言語能力は、教科横断的に育成されることが期待されています。しかし、授業内の学習活動において、児童生徒のどのような言語行動を言語能力の側面と捉えるかといったことは明確になっていません。また、教科横断的な視点での指導目標や内容の設定に関する議論も十分とは言えない状況です。そこで、中央教育審議会答申(2016)の「言語能力を構成する資質・能力」に基づいて言語能力を位置づけ、「教科横断的に育成する」ことを目指し、言語能力Can-do statements(以下、Cds)を、開発しました。本研究では、まずは中学校領域を範囲とし、国語、数学、理科、社会の四教科において整理を行っています。本Cdsは、児童生徒の言語能力の到達目標、学習内容、そして評価観点の3つの役割を担うことが期待され、カリキュラム・マネジメントの設計に用いることを想定しています。

概要

<Cdsの構成と開発手順>

開発にあたり、Cdsに求められる要件として、a)国語、数学、理科、社会の各教科の学習プロセスをある程度適切に反映でき、b)各教科を横並びで比較できること、そして、c)各教科の具体的な指導とそれがひもづく教科横断的な能力をイメージできることの3つを設定しました。その上で、以下の手順で開発しました。

(1)各教科の学習指導要領解説の学習活動記述から、思考スキル(泰山 裕、 小島 亜華里、 黒上 晴夫、2014「体系的な情報教育に向けた教科共通の思考スキルの検討」)が抽出された箇所を分類し、思考スキル別に表現を抽象化し、教科別ならびに教科横断的に抽象化された記述を記します。

(2)(1)を思考スキルの共起頻度(小野塚 若菜、泰山 裕、2021「中学校学習指導要領およびその解説における教科ごとの思考スキルの共起頻度」)で見いだされた特徴を参考に、Cds項目に反映させます(表1のZ・A列)。ここでのA列は教科担当者がイメージしやすくするために各教科の文脈で解釈したものです。その指標の例として、B列に単元例を記載しました。

(3)各教科の学習過程を、探究的な学習の過程【課題の設定/情報の収集/整理・分析/まとめ・表現】にカテゴリ化し、各教科の能力記述文をこのカテゴリ別に分けて教科横並びに整理します(同X列)。

(4)各教科の能力記述文(同A列)を教科間で比較しながら類似した概念に分類、その分類ごとに抽象化し教科横断Cdsの記述(同Y列)を記述します。

(5)各教科担当者による検証を行いました。

(表1:本学会発表ポスターより引用)

 

<教科担当者の解釈から考察する成果と課題>

4教科の教科担当者各1名に対し本Cdsに関するインタビュー調査を行った結果、Cdsの整理によって、各教科担当者が言語能力の目標・指導・評価を教科横断的な視点で捉えることに貢献できたことが示唆されました。これはCdsの開発の目的に適うものです。

一方で、一部の能力記述文には、汎用的な表現になっていない可能性が指摘されています。また、必ずしもつながらない要素が混在しており、適切な粒度でない可能性も指摘されています。

<今後の計画>

以上の成果と課題をふまえ、今後はCdsの有用性の検証を複数の側面から行い、精緻化することを繰り返しながら、開発目的に適う、3つの役割を担うCdsを完成させていきます。

 

詳細については、以下の資料をご覧ください。

⇒発表資料(ポスター)へ

関連研究

  • Cdsの能力記述文の一部を“めあて”とした、中学校国語科『書くこと』の実践内容を報告したもの。教科横断的な資質能力である言語能力の一側面に対し、本実践がどのようにアプローチし、成果と課題を見いだしたかを論じています。
    2021年第141回全国大学国語教育学会世田谷大会(オンライン)「教科横断的な目標としての思考力の育成を目指した中学校『書くこと』の実践」
  • 言語能力Cdsを評価の枠組みとしたアセスメントの開発を目指し、2種類(総括的目的と形成的目的)のアセスメント・フレームワークを整理し報告したもの。指導と評価の一体化を企図し、具体的な作問の方針についても展望しています。
    日本テスト学会第19回大会「教科横断的に育成される思考力のアセスメントの設計」 [PDF]

 

本ページの研究の内容に関するお問い合わせは、ベネッセ教育総合研究所ホームページhttps://berd.benesse.jp/の画面右上にある「お問い合わせ」からお願いします。

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