グローバル教育研究室

研究室トピックス

【英語】何のための英語教育か?①
‐たくましさ(自己表現する力)を育てる‐

2014年06月27日 掲載
 グローバル教育研究室 主任研究員 加藤 由美子

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ベネッセ教育総合研究所が設置され、グローバル教育研究室の活動を開始して1年が経ちました。今年度は、英語領域を担当する3人の研究員から、これまでの研究成果や進行中の研究の中間成果、それらへの考察や意見などを発信させていただきます。第1回目は、ベネッセ教育総合研究所・グローバル教育研究室が考える、英語教育を通して育てたい「英語コミュ二ケーション能力」についてご紹介します。

 

グローバル教育研究室では、日本の英語教育に関する調査研究を行うとともに、ARCLE という英語教育研究会を運営する中で、国内外の研究者や教育者と連携して学術的・実証的な英語教育および言語教育研究を行い、その研究および活動の成果を発信しています。その研究活動の中核をなす理論が、ECF :幼児から成人まで一貫した英語教育のカリキュラムフレームワークです。ECFでは、幼児から成人までの一貫した能力育成の視点とともに、学習者の発達段階および学習者を取り巻く現実的な制約や実態を考慮することを大切にしています。

 

ECFが提案する「英語コミュニケーション能力」は、英語を単なる道具として使うという語学力を超えた能力です。それは、'Diversity'(多様性)の中で'Conviviality'(共生)し、新しい価値を創出するために必要な2つの力-たくましさ(自己表現する力)としなやかさ(対話する力)-です。

 ecf

 注:上の図は 「ARCLE編集委員会『幼児から成人まで一貫した英語教育のための枠組み ECF English Curriculum Framework』(2005)リーベル出版」の内容から筆者が解釈し、図にまとめたものである。


「たくましさ(自己表現する力)」とは、自分で考え、判断し、主体的に表現・行動する独創力です。その前提に、「自分を持つ」ということがあります。自分を持っているからこそ、自分で考え、判断し、表現・行動することができるわけですが、逆に、自分で考え、判断し、表現・行動することで、「自分を持つ」ことができるようにもなります。この力の育成は、まず国語教育を基盤に教育すべてで行われるべきものです。英語は「ことば」であり、'I'を大切にするという、「たくましさ」を発揮しやすい言語の特徴を持っているので、英語教育は「たくましさ」を育成するために重要な役割を果たします。

 

予測不可能な時代、正解がひとつではない時代において、自分をしっかり持ちながら、自分一人でではなく、多様な仲間とともに問題解決や価値創出をすることが求められます。そのためには、「たくましさ」を持ったうえで、他者としなやかに対話することも求められます。次回はその「しなやかさ(対話する力)」 についてご紹介します。

 

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