グローバル教育研究室

研究室トピックス

【英語】何のための英語教育か?②
‐しなやかさ(対話する力)を育てる‐

2014年07月23日 掲載
 グローバル教育研究室 主任研究員 加藤 由美子

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前回 は、ECFが提案する「英語コミュニケーション能力」の要素には、'Diversity'(多様性)の中で'Conviviality'(共生)し、新しい価値を創出するために必要な2つの力-たくましさ(自己表現する力)としなやかさ(対話する力)-があること、またそのうちの1つ「たくましさ」についてご紹介しました。今回は、もう1つの力である「しなやかさ(対話する力)」についてご紹介します。

「しなやかさ(対話する力)」とは、他者との違いを楽しみながら、意見の違いや関係性を調整する共創力です。これは、たくましく自分をしっかり持って表現しながらも、他者を論破して自分の意見だけを押し通したり、他者は他者、自分は自分と、それぞれが自らの主張だけをして終わるのではなく、議論の場にいる人の多様な価値観を認めながら、それぞれの意見や立場の違い(関係性)を調整しながら、問題を解決したり、新しい価値を「共に創る」力です。

英語を使う状況を考えますと、異なる文化背景や価値観を持つ人を相手にコミュニケーションする可能性が非常に高いです。また母語ではない外国語を使用するわけですから、意見や関係性を調整することを、より意識して行うことが求められます。英語を使う状況では、「しなやかさ」が強く求められるということです。もちろん、この「しなやかさ」も、「たくましさ」と同様に、まずは国語教育を基盤にして育成されるものですが、英語を使いながら、英語コミュニケーション能力を育成することを目標とする英語教育の果たす役割は重要です。

「和を以て貴しと為す」という聖徳太子のことばがあります。辞書には、「人々がお互いに仲良くやっていくことがもっとも大切なことである。何事も調和が大事であるということ」(*)という解釈が書かれています。このことばの意味は、違う意見や価値観を持つ相手と、意見や関係性の調整を行うような対話をしないで葛藤を避けるのではなく、関係者が「和」を保ちながら、新しい合意点を見出していくことが大事であるということだと思います。日本人は、この「和」の精神を持っているわけですから、しなやかにコミュ二ケーションする素養、すなわち、英語コミュニケーション能力の素養を備えていると考えられます。グローバル社会の中で、日本人らしく「しなやかさ」を発揮できるよう、英語を学習する子ども達を応援していきたいです。

(*)三省堂編修所「新明解故事ことわざ辞典」三省堂(2001年)

 

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