グローバル教育研究室

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【英語】子どもにとって「英語を使って何ができるようになるか」の意味することは?
-文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」を傍聴して-

2014年10月15日 掲載
 グローバル教育研究室 主任研究員 加藤 由美子

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文部科学省の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を具体化するために、2月から実施されてきた「英語教育の在り方に関する有識者会議」の最終回(全9回)が9月26日に実施されました。一連の会議では、小学校英語の早期化・教科化(高学年)、大学入試4技能化などが議論されましたが、審議まとめ「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~」の中に、国が示す教育目標・内容の改善の1つとして、「学習指導要領では、小・中・高等学校を通して、『英語を使って何ができるようになるか』という観点から一貫した教育目標を示す」ことが記載されました。

グローバル化の進展に伴い、日本人が「英語を使う力」を身に付けることは必然的な要請です。どうしても文法や語彙の知識習得に偏りがちになる伝統的な学校の指導を、4技能を通じて「英語を使って何ができるようになるか」を目標にした指導に転換・発展させていくことはたいへん重要なことです。しかし、それが教育する側からの論理だけでは十分ではないと思います。審議まとめの中では、「英語を使って何ができるようになるか」の例としてCAN-DO形式が挙げられています。文部科学省が2013年3月に発信した「各中・高等学校の外国語教育における『CAN-DOリスト』の形での学習到達目標設定のための手引き」の中に、CAN-DOリストの形で学習到達目標を設定する目的が記述されています。そこには学習者への重要な視点が入っています。 

1.教員が生徒の指導と評価に活用すること 
2.4技能を有機的に結び付け、総合的に育成する指導につなげること
3.教員と生徒が外国語学習の目標を共有すること


3の詳細として、「生徒自身にも、言語を用いて、『~ができるようになりたい』、『~ができるようになることを目指す』といった自覚が芽生え、言語習得に必要な自律的学習者としての態度・姿勢が身に付くとともに、『言語を用いて~ができるようになった』という達成感による学習意欲のさらなる向上にもつながる」という記述が続いています。

英語教育改革の審議まとめは、中央教育審議会等の全体的な議論の中でさらに検討されていくことになるので、その検討を引き続き見守りたいと思います。一方で、子どもが英語を学習することを「自分ごと」とし、自ら意欲的に目標を立て、それに向かって努力する態度や姿勢を身に付けられるよう、彼らに寄り添って、応援し続けたいと思います。そのためには「英語を使って何ができるようになるか」が子どもにとってどういう意味を持つのか、それを子どもが感じられるようにどのように伝えていくのか、保護者・教員などさまざまな大人の立場からできることをよく考えたいと思います。

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