次世代育成研究室

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仕事と子育てに忙しい現代日本の父親と
「ライオンキング」の関係とは?

2014年06月13日 掲載
次世代育成研究室 室長 高岡純子

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子育て

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 少子化が急速に進行する日本社会で、父親と家族との関わりはここ最近注目されてきました。ベネッセ教育総合研究所次世代育成研究室では、「乳幼児の父親についての調査」を行い、日本の父親の子育て意識や行動について把握してきました(2005年、2009年)。この調査では、父親がどのような教育観を持ち、これからの時代を生きる子どもに何を期待するのかなどを明らかにしています。

 ところで、小さな子どもに親しまれている「ライオンキング」という作品をご存知でしょうか。この作品の中心テーマである「父と子の心の絆」は、先の調査より見出された父親の姿と一致するところがあります。この度、劇団四季の会報誌に「乳幼児の父親についての調査」を紹介させていただきましたので、掲載いたします。

 また、2014年9月には、「第3回 乳幼児の父親についての調査」を実施する予定です(2015年1月頃リリース予定)。

 ぜひ、今後にご期待ください。

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『ライオンキング』は日本のお父さんへの応援歌~劇団四季会報誌『アルプ』より~ 高岡純子

"男は仕事"と言われていたかつての時代とは異なり、現在は共働き世帯がもっとも多くなり、子育てにも一緒にかかわる夫婦が増えています。『ライオンキング』が歩んできた15年間は、日本社会の中で父親の生き方が注目されてきた時代でもありました。今日は、日本の家族の形が変わりつつある時代の『ライオンキング』について考えてみたいと思います。

 ベネッセ教育総合研究所で小さな子ども(0歳~6歳)を持つ父親に調査を行ったところ、出産に立ち合う父親は約半数を占め、育児や家事に取り組む割合も少しずつ増えており、家族を大事にしようとしている様子がうかがえました。しかし、先進国の中では、日本の父親が家事・育児に費やす時間は少ないほうです。日本のお父さんは、平日の仕事が忙しく、小さな子どもが就寝するであろう21時以降に帰宅する割合が約4割を占めています。子どもとかかわりたいと思っても難しい状況にありますが、仕事に追われて帰宅が遅くなる平日の分を休日に埋め合わせしようとするかのように休日は「10時間~ほぼ一日」子どもと一緒にすごしているという人が半数を超えています(図①)。このように忙しい中でも、もっと子どもや家事にかかわりたいと思っている父親は54%を占めています。



 仕事に子育てに涙ぐましい努力をしている日本の父親ですが、父親自身が抱く理想の父親像とは、一体どのようなものでしょうか(図②)「頼りになる」「尊敬できる」「相談にのれる」「理解がある」父親であることが上位にきています。子どもから尊敬され、頼られ、ときには子どもの相談にものるといった、たくましさと優しさを併せ持った存在が父親にとっての理想の姿だといえるでしょう。


 また、子どもに「将来どのような人になってほしいか」という質問では、「自分の考えをしっかり持つ人」「自分の家族を大切にする人」「友人を大切にする人」「他人に迷惑をかけない人」が上位にあがりました(図③)。ここからは、変化の激しい社会の中で流されずに自分の考えをしっかりと持ってほしい、また周囲の家族や仲間を大切にして生きていってほしいという父親の思いがうかがえます。


 たくましさと優しさを併せ持つ父親は、『ライオンキング』に登場する王のムファサの姿にも重なります。ムファサは王国の長としてサバンナに生きる動物たちを支配することに忙しい一方で、息子シンバに父親として向き合い、この世界で仲間と共に生きることの大切さを教えます。やがて青年に成長したシンバは、自分が世の中ですべきこと、生きる意味をかつて父親から受け取った言葉の中に見出し、ふるさとを守るために帰っていきます。そこには時を超えて、父親ムファサのメッセージがシンバの生きる指針となっている様子が描かれています。



ムファサ 宇龍真吾、ヤング シンバ 野々田桂輔
撮影 山之上雅信

 子どもたちがこれから生きる未来は、私たち大人の想像をはるかに超えたものになるでしょう。どんな社会になったとしても、強さと優しさを持ち、未来に向かってしっかりと生きていってほしいという願いは、すべての親に共通のものだと思います。そんな願いは、親子のきずなを通して子どもへと伝わっていくものだという応援メッセージを『ライオンキング』は、私たちに伝えているように思われます。

 日頃、仕事や子育てに頑張っているお父さん、忙しさから少し離れて、お子さんと一緒に『ライオンキング』を味わうひとときを持ってみてはいかがでしょうか。


出典:「第2回 乳幼児の父親についての調査」ベネッセ教育総合研究所、 2009年
0歳.6歳の子どもを持つ首都圏の父親4,574名を対象に、父親の子育てへのかかわり、父親としての不安、ワークライフバランスなどの意識と実態を把握している。
http://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=3219


ムファサ 平山信二、ヤング シンバ 原 光希、ザズ 明戸信吾
撮影 堀 勝志古

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