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小さな子どもとメディア
親と子のメディア研究会
最新!メディア研究ニュース
ここでは、「小さな子どもとメディア」についての最新の研究をご紹介します。
研究会メンバーによる座談会 テレビやビデオが乳幼児に与える影響をどのように捉えるとよいのでしょうか?
汐見稔幸先生写真
大日向雅美先生写真
榊原洋一先生写真
汐見稔幸先生
東京大学大学院教育学研究科教授
同教育学部附属中等教育学校校長
大日向雅美先生
恵泉女学園大学大学院教授
榊原洋一先生
お茶の水女子大学
子ども発達教育研究センター教授
Q子どもが、生まれてすぐにテレビやビデオと関わりながら育つ状況を、
社会はどう受け止めているのでしょうか。
汐見稔幸先生写真
汐見 テレビが、子どもの発達にマイナスの影響を与えるといった話は、テレビが登場した当初からいわれていました。これまで、60年代、80年代、そして現在と3度目の盛り上がりを見せています。80年代後半はバブル華やかな時代で、父親が仕事に忙しく母親が一人で孤立した育児を行っていた。そこに登場したのがビデオで、育児をサポートするアイテムとしての位置を占めるようになりました。その結果、長時間ビデオを見せると、社会性が育たないなどの警告が発せられるようになったのです。こうした警告に反応する母親のタイプは、1研究者や専門家の意見に過敏に反応する、2警告は警告と受け止めながら自分の考えで判断する、3全く関心を示さない、の三つに分けられますが、特に1と3の母親への対処を考えなければいけません。
榊原洋一先生写真
榊原 乳幼児がテレビ、ビデオを含めたメディアと関わる時間は、1日にだいたい約3時間といわれています。起きている時間を12時間として、入浴、授乳など生活に必要な時間をのぞくと、自由になる時間は5時間と、意外に少ない。その中で子守をテレビ、ビデオに長時間任せている現状があり、親自身も「本当は良くないのではないか」と不安を抱いています。小児科学会では「2歳以下の幼児にテレビを見せるのは控えましょう」という勧告を出しています。科学的な実証はこれから行なおうとしていますが「言葉が遅れるかもしれない」「社会的な関係がうまくつくれない」といった可能性を揚げており、子どもに長時間テレビやビデオを見せてきた親たちは非常に混乱しています。
大日向雅美先生写真
大日向 母親というのは、子育ての最中は常に不安と期待の間で揺れるものです。心理学の立場からいえば、「成功達成動機」と「失敗回避動機」という見方ができます。前者は、より良い方向に向かって成功を収めようというのに対し、後者は何とかして失敗を回避しようという心の動きです。成功達成動機をモチベーションとした方が楽しい子育てができると思います。「子どもが楽しめるビデオを選ぼう」とか「子どもといっしょにテレビを楽しもう」という発想を持つことができれば、メディアの使い方に対しても積極的になれるでしょう。しかし、失敗のリスク要因の情報が勝っていると、汐見先生が挙げられたようなタイプ1(過敏に反応する)のお母さんは、良いコンテンツをセレクトしようという発想は持ちづらくなるかもしれません。子育てはファジーなものなのに、世の中の傾向として、目に見える結果を早く出したがっている。そんな社会状況の中で、権威ある団体や専門家がテレビは悪と伝えれば母親はどうしても過敏に反応してしまいます。
Q過敏に反応してしまう母親に対して、どのように働きかけていくべきでしょうか。
汐見稔幸先生写真
汐見 専門家のいうことだけに頼るのではなく、常識で判断することが大切、と訴えていくべきです。テレビがついていても、興味がなければ子どもは見向きもしません。テレビが生活の中の多様な活動の一部というのであれば、発達にそれほどのマイナスが生じるとは考えられない。生活のバランスを図ってテレビ、ビデオを見せるという常識を働かせることが肝心です。専門家は専門の立場から国民に対して正確な情報を提供すべきです。しかし、その上でどう行動すべきかは、国民が自分の体験に照らしてなるべく自分で判断すべきだと思います。そこで大切なのは「常識」だと僕は思っています。親が常識力を身に付けて、最終的に自分で判断することが重要なのです。
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榊原 今回のテーマに関していうと、専門家として乳幼児にテレビやビデオが与える影響についての勧告を出す際に、根拠の提示や「調査中」といった説明を入れる必要があったと思います。現状は、1000人くらいの子どもを対象に、どれくらいメディアを見たか、その子どもがどのように発達するか調査している段階です。
大日向雅美先生写真
大日向 数量やデータだけでなく「こういう事例がある」と語り合うことも必要です。人間はデータ通りにはいきません。個々の家庭それぞれに生活条件が違いますし、子どもの発達には個体差もあります。多様な条件を踏まえた上で事例を出し、さまざまな見解を共有すれば、それが常識を育てることにつながっていくのではないでしょうか。
Q今後、研究者と親はどのような関係にあるべきだとお考えですか。
大日向雅美先生写真
大日向 研究途上のものは、「ここから先は分からない」と説明することが、研究者の社会的使命だと思います。育児に関していえば、親に寄り添って、いっしょに問題を解決していこうという姿勢が専門家には必要でしょう。また、情報の受け手となる親の方も、やはり常識を育みながら、判断していくことが大切だと思います。
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榊原 テレビやビデオの影響を予測するのは、非常に難しい。人間の学習能力は非常に複雑で、テレビやビデオに限った影響を推し量ることが困難だからです。子どもの発育にはさまざまな要因があって、メディアはその一つでしかないことを、親にも理解していただくように働きかけていくべきです。
Q先生方は研究と共に臨床の現場も持たれています。それについて、お話しいただけますか。
大日向雅美先生写真
大日向 NPO法人で子育てひろば「あい・ぽーと」(東京都港区)を運営しています。とかく子育てひろばというと、集まるのは母親と子ども、話題も育児のことばかりになりがちですが、「あい・ぽーと」では、母親になった女性を子育てにだけ閉じこめないひろばづくりを心がけています。「あい・ぽーと」にはボランティアや地域の支援者、研究者をはじめ、いろいろな方々が出入りしています。母親の社会参加を積極的に応援する企画にも力を注いでいます。「子育て・家族支援者養成講座」もその一つです。主に子育てが一段落した女性が、子育て経験を基に有償活動ができることを目標としていますが、男性もシニア世代の参加も大歓迎。こうした方々が増えていくことが、地域の育児力の向上につながることを願っています。
榊原洋一先生写真
榊原 お茶の水女子大学の「社会人講座」で、現職の保育者の方々に講義しています。現在は、「乳幼児の発達と脳科学」「子どもの病気とそのメカニズム」など、小児科の立場から見た子どもの育ちに関するテーマを取り上げています。受講者の皆さんは、現場でいろいろな経験を積んでいるわけですが、なかなかその経験を消化しきれていない。幅広い教養を持つことで経験を自分のものとして取り込めるような、そんなお手伝いができればと思っています。
汐見稔幸先生写真
汐見 「臨床育児・保育研究会」を軸に、現場の保育の先生方と育児の勉強を行っています。この研究会は、10年ほど前、保育現場の先生方が、問題のある子が増えている現状に危惧を抱いたことをきっかけに、立ち上げました。先生方は「他園の見学がとても勉強になった」と、おっしゃっていましたが、よその事例を見ることで、自分たちのやり方を再考するきっかけになったようです。この会の体験を通じて、学びながらも、どうすればよいかをワイワイ議論しあうことが、結局は一番大事だと痛感しています。それは親も同じだと思うのです。心配があったら議論する。そして夢を語り合う。そういう場をあちこちにつくっていくことが時代の課題だと感じています。
 
 
 
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