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小さな子どもとメディア
親と子のメディア研究会
最新!メディア研究ニュース
ここでは、「小さな子どもとメディア」についての最新の研究をご紹介します。
佐藤朝美先生の研究レポート インタラクティブメディアでの親子の対話分析から見えてきたこと
佐藤朝美先生
東京大学大学院情報学環  助教
親子のデジタルメディアについて、「アプリギャップ」と「参加格差」が注目されている

 現在、テレビやDVD、デジタルカメラや動画アプリなど、デジタルテクノロジーは生活に偏在しており、子どもを取り巻く環境にあふれています。最近では、子どもが容易に操作できることから、タブレットPCに人気が移っており、デジタル絵本や知育アプリが多く登場しています。2012年のThe Joan Ganz Cooney Center1)のレポートによると、アプリのトップセールス80%が子どもを対象とした教育アプリで、そのうち72%が幼児対象だったそうです。

 「デジタル格差」の認識も変化していて、従来は「ネットワークに接続したPCにアクセス出来るか」が問題でしたが、今は「アプリギャップ」が生じているといいます。Common Sense Media2)のレポートによると、アメリカにおいて、経済所得別のグループごとに親のデジタルテクノロジーの使用方法を調査したところ、アプリの選択や使用状況に差がありました。高所得者層の親は、コンピュータゲームを語彙やアルファベットの習得の機会として取り扱い、子どもたちに使用するよう言葉がけをするのに対し、低所得者層の親は、子どもがコンピュータを使い出すと離れて座り、どんな操作をしても何も言わないという行動が多く見られました。また、使用するゲームの種類も異なるようで、特に低所得者層の子どもたちは文章がない、簡単な色彩ゲーム等を好んで使用していました。さらに、子どもが何らかのメディアを利用する際、親や他の大人が意味のある重要な情報を探すよう促したり、実際の書籍を読むようつなげたりするかどうかで、メディアの「参加格差」と呼ばれる状況が生じているようです。

 このように、子どもがデジタルテクノロジーを使用する際、周囲にいる大人たちがどのように使用方法を促すかによって、子どもたちの学びに大きな格差が生まれてくると考えられています。


1)Pioneering Literacy in the Digital Wild West: Empowering Parents and Educators by Lisa Guernsey, Michael H. Levine, Cynthia Chiong & Maggie Stevens December 10, 2012

2)Common Sense Media. (2011). Zero to Eight: Children's Media Use in America.

インタラクティブメディアを親子で使ったときに生まれた会話

2012年8月末に新たなメディアでの親子のインタラクションの具体的な状況を把握するために、ベネッセ次世代研究所とともに調査を行いました。幼稚園に通う年少〜年長児の親子25組に対し、紙でのお絵描きとiPadアプリである「空想どうぶつえん」3)の使用時を観察しました。 まず、両者の発話について比較すると、対話の流れが異なっていました。お絵描きでは、子どもの描くモノに対話が方向づけられます。描いているモノを子どもが説明したり、親が質問したりする対話が見られました。また、描き方について子どもが質問し、親がアドバイスをしていました。また、対話が多かった親子では、子どもが週末に家族で出かけた時のことを描き、その時乗った乗り物が楽しかったなど、話がふくらんでいく様子が見られました。

一方、アプリ使用時の親子の対話は、アプリの機能、使用フェーズにより異なりました。たとえば、枠を選択するフェーズでは選択や形から連想される話題が展開され、色塗りや飾りを付けるフェーズでは色の選択やパーツの選択について相談しあっていました。もちろん、初めてさわるアプリでしたので、操作方法に関する発話は多かったですが、回数を重ねるごとに減っていきました。興味深かったのが、25組の親子が4つのタイプに分類できたことです。お絵描き時とアプリ使用時のどちらも対話数が多い親子(対話型:7組)、アプリ使用時の方が対話の多い親子(i対話型:6組)、お絵描き時の方が対話の多い親子(2組)、どちらも対話が少ない親子(10組)です。タイプ別に特徴を分析したところ、対話型の親子は、親からのアドバイスを聞きながらアプリを進め、パーツの種類を確認し、パーツの付け方を相談しあう様子が見られました。また、塗った色やパーツの付け方についてほめてあげる等何らかのフィードバックを多く行っていました。i対話型の親子は、アプリの名前付けや鳴声を再生して確認する機能に伴い、言葉がけを多くしていました。お絵描きではどんな言葉がけをして良いのか分からないのに対し、アプリでは機能のタスクを達成するために言葉がけをすることで対話が増えたと考えられます。対話型とi対話型の両タイプ共通の特徴としては、動物を作成した後、動物園で自分の動物を確認したり、他の作品を見て感想を言ったり、さらには動物の状況を描写しながら対話する様子が見られました。また、次にどうしたいのかなど、子どもの気持ちを確認していました。


3)(株)ベネッセコーポレーションが提供する主に3歳から6歳を対象年齢とするタブレットPC(iPad)アプリ。自分だけのオリジナルの動物を作ることができる。

対話分析から見えてきたことと、これからの課題

以上、内容まで踏み込んで親子の対話を分析してきましたが、どのような対話を行えばいいのか分からない親にとっては、これらの結果がヒントになるかもしれません。子どもにアドバイスをするだけでなく、色塗りや選択を親子で相談しながら行い、適切にフィードバックをしていくことで、子どもは動機づけられ継続できます。また、親自身がアプリの機能を把握しておくと、親は子どもがどのフェーズにいてどんな作業をしているのか分かるので言葉がけがしやすいと思います。さらに、活動への意味付けを持てるようなきっかけを与えていくことが重要です。

氾濫(はんらん)するデジタルアプリから何を選択するか、子どもの使用方法も含めて親の責任はますます問われます。SNSや電子書籍、オンデマンドのビデオ・DVDを含めてどのようにリテラシーを促進するよう支援していくか、親自身のデジタル格差の問題とも関わってくるかもしれません。 タブレットPCは子ども一人で使えてしまうものですが、幼児期には人とのインタラクションが大事です。家庭では親や兄弟との相互作用が増え、遊びが豊かになるようなアプリの使われ方が望ましいと思います。また、良いアプリだからといって長時間使わせず、生活の中でいろんな体験を行うこと、体験の1つとしてメディアを取り入れることを意識していくことが大切なのだと考えます。


 
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