高等教育研究室

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【アナリストの視点】
2018年問題とその次元を超える留学生の受入を考える

2014年02月28日 掲載
 ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室
 アナリスト 野村徳之

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コンサルティング グローバル

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2018年問題が来るまであと4年

 ソチで行われた第22回オリンピック冬季競技大会が閉幕した。この大会を機に第一線の競技者としての生活から引退する選手もいれば、次の大会に向けて既に始動している選手もいる。第23回の冬季大会は韓国の平昌で2018年に開催される。ウインタースポーツに関係する人々にとって、2018年は強烈に意識される年であろう。
 2018年は、高等教育に従事する方々や我々研究者にとっても大事な意味を持つ年となる。それは、日本が2018年以降、再び18歳人口の減少期に突入するからである。2011年まで減少傾向にあった18歳人口は、2017年まで約119万~120万人規模のまま推移する。が、2018年から2025年までの8年間で約10万人が減少する。その学齢の半数が高等教育を受けるべく進学する現状を考えると、10万人が減少することの意味は重い。

世界の留学生は増大する

 以降も続く減少にどう対応するか。進学率を高める、社会人の受け入れを拡大する等々があるが、多くから注視されているのは日本への留学生を増やすことだろう。
 2008年に文部科学省が策定した「留学生30万人計画」では、2020年までに留学生を30万人受け入れることを目標としている。留学支援を行うオーストラリアの非営利組織IDPは、主にアジアの学生が増加するとし、2025年の全世界の留学生数を約700万人強としている(Global Student Mobility 2025)。
 世界の留学生は増大する。しかしながら、仮にそのときの日本への留学生のシェアが、国際化拠点整備事業(グローバル30)の始まった2009年の3.6%と同程度では、25万人ほどにしかならない。30万人を超えるためには、過去になかった次元にたどり着かねばならない。それでも文部科学省は、単に減少する18歳人口の補てんにとどまらない、近未来以降の日本の高等教育のあり方を見定めている。その企図と目標を果たすべく、提供する教育内容、留学生の質の確保、日本人学生の海外への派遣、学事暦やギャップイヤーのあり方等が議論され、グローバル社会を見据えた人材育成の検討がなされている。2020年という時機に様々な意見があるとしても、その方向性、目標の達成に私も力を尽くしたい。

個々の対応任せではなく

 ただ、包括的な議論や検討を重ねて行くことと同じくらい重要なことがあるように思われる。現状は、日本に来ている留学生の実際を把握しその問題や障壁を解消することが、個々の対応任せになっていないだろうか。
 高等教育研究室がこの年末年始に行った「留学生満足度調査」において、中国や韓国、ベトナムからの留学生は、「留学手続きや学費の支払い等にクレジットカードが使えない」ことに不便を感じ、「大学のウェブサイトからの願書入手やオンライン出願ができない」、「母国語で入手できる情報が少ない」ことが不満で、「どこにアクセスすれば効率的にサポートしてくれるかがわからない」と言っている。日本への留学生を増やすことを考えるのであれば、こうした「先人」の実感も明らかにしながら、日本への留学意向を喚起し、その受入環境を整えることを併せて志向したい。その一助を私が担えるよう、引き続き留学生たちの実像に迫っていきたいと考えている。

プロフィール

野村 徳之 (のむら のりゆき アナリスト)
1994年(株)福武書店(現(株)ベネッセコーポレーション)入社。進研ゼミ中学講座にて広告・調査等に従事。スタッフ部門での顧客・従業員満足の向上業務、採用・研修・新入社員育成業務を経て、全社ブランドマネジメントを担当。2010年経済産業省商務情報政策局に出向。サービス産業の生産性向上・海外進出支援、新卒採用市場変革等委託事業に従事し、事務局ほか省内外での報告・講演を担当。2012年帰任しグローバル教育研究に従事。2013年1月より現職。

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