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中学版 企画室より

「ビジュアル図書室」で利用者増!
~東京都 文京区立音羽中学校~

2015年01月20日 掲載
『VIEW21』中学版 編集長 草場 隆志

関連タグ: 学校経営 教科指導 キャリア教育 学習意欲 読解力・表現力・言語活動

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 2013年12月に中学校の図書室をリニューアルし、利用者の増加に成功した文京区・音羽中学校(愛川睦校長、生徒数307名)。リニューアルのポイントを文芸部顧問の穐田剛教諭におうかがいしました。

 

★ビジュアル図書室とは?

 音羽中学校の図書室に入ると、まず最初に「宇宙」や「動植物」などのビジュアルな書物や、時節に応じた特別コーナーが目に飛び込んで来ます。背表紙が並んでいる図書室が多い中、大きな写真やイラストが入った表紙を見せることで、生徒たちの好奇心をくすぐるのです。

 前年は蔵書率が5割以下で、本棚はガラ空きでした。そこで選書に際して、知り合いの出版社に相談したところ、児童文学評論家の赤木かん子氏を紹介されました。彼女は選書だけでなく、図書室の改装も申し出てくれ、「ビジュアル図書室」に大変身させたのです。

 「『学校の図書室は、文学書などの読み物を数多く並べるのが一般的ですが、まず図書室に興味を持ってもらえるよう、写真の多い“自然科学”系を一等地に配置しましょう』という赤木先生のご指摘を参考に、本の配置を大幅に変更しました」(穐田先生)

 

★リニューアルのポイントは?

 音羽中の図書室リニューアルは、全ての書物を取り出すところから始まり、清掃、再陳列、閲覧席のレイアウトまで変更。図書委員会・文芸部の生徒、教員に加え、赤木氏とともに学校を支援するボランティアの方々も全国から集まってくださり、総勢約30名で丸1日かかりました。そのポイントをいくつかご紹介します。

①  図書室に入って最初に目に付く場所に、ビジュアル系の書物を、表紙を見せながらゆったり目に配置して興味を引く

 

②  文学書は、落ち着いた雰囲気でゆっくり読めるように、図書室の一番奥の静かな場所に、ソファーや縫いぐるみと共に配置する

 

③  ジャンルを細かく分けたうえ、一目で分かるイラストシールを背表紙に貼る

 

④    そのイラストシールで、図書室マップを作成。図書室のどこにあるかが視覚的にすぐ分かるようにする

 

⑤    季節コーナー、地元出身作者コーナー、修学旅行用コーナーなどのテーマ別コーナーを作る

 

⑥    読書テーブルを斜めに配置することで、空間的な広がりを感じさせる

 

また、選書にあたっては、以下の観点でそろえていきました。

●中学生に人気の書物(ヤングアダルトなど)も、リクエストを募って積極的に揃える

●銀河系宇宙が飛び出したり、星の爆発音がするような仕掛けのある本も積極的に揃える

●クモ大図鑑や、長さが1メートルもある本など、マニアックな本も(高価だが)揃える

●百科事典は最新のものを揃える

★「見る空間」にすることで利用者増!

 リニューアル後も毎月、赤木氏は同校を訪れ、選書や読書指導をボランティアで続けてくださっています。今では約五千冊の蔵書のうち、彼女が選んだ書物は約三千冊にもなりました。「感性豊かな中学生には、いろいろな書物に触れることで、興味を広げていって欲しいと思っています」(赤木かん子氏)

 図書室の入り口には、文芸部員や図書委員が推薦文を書いた「としょの木」も掲示してあります。図書室の利用者は前年度より二割増えました。


 
「改装の日は、色々な作業を通じてたくさんの本に触れているうちに、読みたい本がいくつも見つかり、とても楽しい時間でした。改装後は多くの人が本を手に取っている姿を見て、色々と大変なこともあったけれど、改装して良かったと心から思いました」(前図書委員会委員長・3年生女子)。

 「改装前は無機質な本棚に本が無造作に置かれていて、皆が正しい場所に本を戻さないこともあったけど、生まれ変わったことで快適な空間になりました。この空間をこれからもずっと維持していきたいと思います」(文芸部部長・2年生女子)。

 穐田先生も「まずは本に親しみ、図書室を利用してほしいのです。読むのではなく、見る空間にしてもらえれば、興味を持ったことを百科事典で調べたり、文学書を読んだりする活動にもつながっていくと期待しています」と、手ごたえを感じていらっしゃいました。

 ベネッセ教育総合研究所の調査でも、携帯電話やインターネットなどのメディア利用時間が増え、読書時間が減少していましたが、音羽中学校のような取り組みが広がっていけば、生徒たちの意識や行動も変わっていくのではないでしょうか。

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