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現役教員をはじめとした教育実践者たちが挑戦する、新しい「学びの場」づくり。あなたも、この実験に参加しませんか?


2020.02.21 update

小・中・高の次期学習指導要領では、今後の社会で求められる資質・能力の育成に欠かせないものとして、「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った指導改善がより重視されている。では、そうした指導改善は、具体的にどのように行えばよいのだろうか。2019年9月、新しい「理科」の授業づくりを推進している、東京都内の公立中学校に勤務する井久保先生による模擬授業が実施され、小・中学校の教員ら約40人が参加した。その様子をレポートする。

1.児童・生徒が物質についての根源的な問いと向き合う授業

 井久保先生は、自身が「質問の焦点」を示し、参加者がそこから問いを立てる活動「質問づくり」を主軸に据えた模擬授業を行った。実際の授業でも、「質問づくり」を重視しているという。

 「各単元の最初の授業では、必ず『質問づくり』を行っています。その単元の学習内容に児童・生徒の関心を引きつけ、学習意欲を喚起するねらいがあります」(井久保先生)

 今回の模擬授業では、中学1年生の「理科」における「身の回りの物質」の単元を取り上げた。「質問の焦点」として示されたのは、「アリストテレスは、『すべての物質は、火・水・空気・土からできている』と言った」だ。

 「現在では、物質が火・水・空気・土から構成されるとする『四元素説』は否定されています。しかし、『物質は何からできているのか』という根源的な問いを意識することは、物質の性質や変化を考える上で非常に大切です。そこで、実際の授業でも、模擬授業と同じ『質問の焦点』を設定しました」(井久保先生)

2.児童・生徒が質問を出しやすくなるよう、声かけを工夫

 参加者は、4〜5人のグループに分かれて「質問づくり」に取り組んだ。

 まずは、各グループで思いつくままに質問を挙げ、それを紙に書いていった。例えば、「アリストテレスは、そんなことを考えて面白かったのか」「四元素説は、アリストテレスが自分で調べて得た結論なのか」「空気からできている物質とは何なのか」「火・水・空気・土は、物質なのか。物質だとしたら、それらは何からできているのか」など、様々な質問が出された。

 「実際の授業でも、グループによる『質問づくり』を行いました。どの児童・生徒も質問を出しやすい雰囲気を醸成するため、出された質問について評価をしたり、答えを言ったりしないよう伝えました」(井久保先生)

3.質問の分類・変換で、児童・生徒のものの見方・考え方を広げる

 次に取り組んだのは、質問の分類だ。グループ内で話し合いながら、多様な答えがあり得る質問であれば、オープンクエスチョンとしてアルファベットの「O」、答えが1つしかない質問であれば、クローズドクエスチョンとしてアルファベットの「C」を、それぞれの質問の横に書いていった。そうした中では、「今のままではクローズドクエスチョンだけれど、この言葉をこう変えればオープンクエスチョンになる」など、活発な議論が行われた。

 「実際の授業では、質問を分類させた後、オープンクエスチョンをクローズドクエスチョン、クローズドクエスチョンをオープンクエスチョンに変換させました。そうして、1つの質問を異なる観点から捉える練習を積ませ、児童・生徒の考えを深めさせるねらいがありました」(井久保先生)

 模擬授業の最後には、書き出した質問の中から、グループごとに本単元の学習で最も重要になると考えられるものを3つ選んだ。

 「実際の授業では、グループの代表者が、3つの質問の内容とそれらを選んだ理由を発表する場面も設けました。各グループでの学びや気づきを、クラス全体で共有することを大切にしたいと考えました」(井久保先生)

4.「質問の焦点」設定のポイントは、児童・生徒に疑問を抱かせること

 模擬授業後には、東京都小金井市立前原小学校で児童主体の指導改善を推進している蓑手(みのて)章吾先生の司会により、井久保先生と参加者との質疑応答を中心とするワークショップが行われた。目立ったのは、井久保先生が「質問づくり」で重視している具体的なポイントを尋ねる参加者だ。例えば、「『質問づくり』で出された様々な質問の中から、重要な質問を適切に選べるよう、児童・生徒に何らかの基準を示す必要があるだろうか」という問いには、井久保先生は次のように答えた。

 「私の授業では、基準は示していませんが、児童・生徒は重要な質問とそうでない質問を選別できるようになっています。各単元の『質問づくり』で、最も大切な質問を3つ選ばせていますが、そうした中で、児童・生徒は次第に取捨選択する力を伸ばしていると感じます」(井久保先生)

 また、児童・生徒の関心を引きつける「質問の焦点」を設定するための方法については、井久保先生と参加者との意見交換が行われた。井久保先生は、「児童・生徒が反論をしたくなるようなものにすること」を挙げた参加者に賛同し、こう述べた。

 「私の場合、『質問の焦点』は、問いかけではなく、断定的な文章にしています。それは、児童・生徒を『本当にそうなのか?』『違うのではないか?』と思わせたいからです。『質問の焦点』に疑問を抱くことが、学習内容に意欲的に取り組む出発点になると考えています」(井久保先生)


 本研究会は、都内で勤務されている先生方が授業を磨き合う場をつくることを目指しています。子どもの目線、あるいは、それぞれの専門の視点から対話の深まりを楽しみながら、今後の授業づくりについて考える場になればと思います。第1回は小学校の先生による「道徳×対話×ICT」の模擬授業、第2回は中学校の先生による「理科×問いづくり×探究」の模擬授業を行いました。あなたも、これからの授業について、実際に体験をしながら対話しませんか?ご参加お待ちしています。

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プロフィール

井久保 大介

井久保 大介(いくぼ だいすけ)

「探究するって楽しい!」そんな児童・生徒の声をたくさん聞ける理科の授業を目指しています。在職中に派遣された東京学芸大学教職大学院で、教師が自ら学び続けることの大切さ、おもしろさに目覚め、修了後も様々なワークショップや教育イベントに参加したり、企画運営をしたりしています。現在『科学者の時間』という探究的な理科の授業を実践中。児童・生徒が自ら学ぶ姿を、そっと見守っている東京都の公立中学校教員です。

蓑手 章吾

蓑手 章吾(みのて しょうご)

教員13年目。専門教科は国語で、教師道場修了。特別活動や生活科・総合的な学習の時間についても専門的に学ぶ。特別支援学校でのインクルーシブ教育や、発達の系統性、学習心理学に関心をもち、教鞭を持つ傍ら大学院にも通う。特別支援2種免許を所有。ICT活用に関しても高い関心があり、多くのセミナーや勉強会に参加。ICT CONNECT21が主催する「先生発!最新のICT技術で教育現場を変えるハッカソン」ではグランプリを受賞。現任校ではICTプロジェクト主任も務める。 現在「教育の鉄人」こと杉渕鉄良氏主宰のユニット授業研究会に所属。その他、多種多様なセミナーや研修会、文献などからも学力向上について理解を深めている。 セミナー登壇経験多数。共著に『全員参加の全力教室2』『特別支援学校におけるICT活用実践事例集』などがある。
https://ict-enews.net/2017/10/27maehara-2/ https://edtechzine.jp/article/detail/1420

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