ベネッセ教育総合研究所

  • 検索

現役教員をはじめとした教育実践者たちが挑戦する、新しい「学びの場」づくり。あなたも、この実験に参加しませんか?


2021.03.26 update

分かっているようで、理解できていないのが「自分」では?どうしたら「自分」が見えてくるのか?そうした問いから、「学び場ラボ」では、マインドマップ®を活用した自己理解のワークショップをオンラインで実施した。親子を含む参加者は、自分の好きなものをカテゴリー別に書き出し、メンバーの質問に答える活動を通じて、自分の意外な一面を発見。子どもの理解や多様な力を育むツールとしてのマインドマップ®の可能性を探るとともに、子どもを理解するうえで何が大切なのか見えてくるワークショップだった。

1.好きなことを書き出して、自分を知ろう

 マインドマップ®は、頭の中で行っている思考プロセスをそのままの形で描き出すノート法の1つで、思考を可視化し、整理しやすいという利点がある。イギリスの教育者トニー・ブザンが考案した方法で、日本でも企業や学校を中心に活用が広まっている。

 今回の「学び場ラボ」では、マインドマップ®を使って「自分」を知るというワークショップを実施。親子3組を含めた約20人が参加した。

■ワークショップの進め方

①A4判の用紙(横長に使用)とペンを用意する。
②中心に自分の名前を書く。
③名前の周りに「好きなたべもの」「好きなもの・人・キャラクター」「好きなスポーツ」「好きなこと」を書く。(5分間)

眞島氏提供資料

④4〜5人のグループに分かれ、各グループで1人ずつ自分が書いた内容を発表する。(2分間)
⑤メンバーは、発表者に書かれた内容に関する質問をする。(3分間)
例:発表者「チーズケーキが好きです」
メンバー「おすすめのケーキ屋さんはありますか?」
⑥④⑤の手順でメンバーが順番に発表・質問をする。

 ワークショップのファシリテーターは、同じ内容のワークショップを子どもも大人も参加する形態で行ってきた眞島かな子さんが務めた。

2.質問への回答を通じて、自己理解が深まる

 最初に行った自分の好きなものをカテゴリー別に紙に書くワークでは、自由に書く参加者がいる一方で、普段しない行為に戸惑いを感じているような参加者もいた。

 「思いつくままに書いていたら、4つのカテゴリーに当てはめられないものも出てきてしまいました」(参加者:子ども)
 「好きなものを考えて書くことに慣れておらず、これを書いてもよいのか、ためらう場面が多々ありました」(参加者:大人)
 「もっと好きなものがあるはずなのに、考えても思い浮かばずにストレスを感じました。自分をつくる核にたどり着けないまま終わってしまいました」(参加者:大人)
 「親子でよく山歩きに出かけているのですが、子どもがそれを書いていなくて少しショックでした」(参加者:大人)

 グループワークについては、メンバーからの質問に答えることで、自分の「好き」を改めて考える機会となったという声が聞かれた。

 「ほかの人と好きなものがたくさん共通していることを知って、楽しかったです」(参加者:子ども)
 「質問に答えることで、考えが自然と枝葉に分かれていきました。対話から気づいた発見もありました」(参加者:大人)
 「自分が好きなものについて話すことに慣れていないのだと感じました」(参加者:大人)

 ワークショップへのさまざまな感想が出る中、眞島さんはマインドマップ®が子どもを理解することに活用できると説明した。

 「マインドマップ®は、五感を刺激し、手で書くことで思考が深まり、記憶に残りやすくなりますが、文字を書けなくても十分活用できます。会話ができる4~5歳くらいの子どもであれば、例えば、旅行の後に、楽しかったことや面白かったことを聞いて紙に書き、思考を可視化すれば、子どもがどんな体験をしたのか、何をつかんだのか、子どもの内面を知ることができるでしょう」(眞島さん)

眞島氏提供資料

3.子どもの理解にもつながる「好き」の追求

 ワークショップの感想を述べ合った後は、東京都小金井市立前原小学校の蓑手章吾先生のファシリテーションによるディスカッションが行われた。

 まず、マインドマップ®を子どもの理解に活用する際に気をつけたい点について意見が出された。

 「私の子どもはカテゴリーにこだわらず自由に書いていましたが、カテゴリーが示されないと書けない子もいると思います。一方で、記入例を示すと、それに影響を受けてしまう子もいるはずです。制約をつけるかどうか判断するのは難しいと感じました」(参加者:大人)

 それに対して、同様のワークショップを開催してきた眞島さんは、「小学生を対象にしたワークショップでは、カテゴリーを示さなかったために、書きにくそうにしていた子どもがいました。高学年を対象とした場合には、記入例を提示して自由に書かせてもよいかもしれません」と、ポイントを示した。

 また、「好きなことと、好きなスポーツがかぶってしまいました」と述べた参加者の子どもに、眞島さんは、「それは問題ありません」と伝えた。

 「同じことを何度も書いたり、反対のことを書いたりしても気にせずに、思い浮かんだことをどんどん書くことを通じて自分の『好き』を探っていくのが、このワークの目的です。『発表するから分かりやすく書こう』などと考えずに、思いつくままに書くのが、自分を理解するためのポイントです」(眞島さん)

 保護者からは、「質問への回答を通じて、子どもが自分の好きなことに向き合えたのはよかったです。親として子どもを理解するために、もっと『好き』を掘り下げてみたいです」といった声も挙がった。

 蓑手先生は、マインドマップ®を子どもの理解に活用することについて、次のように指摘した。

 「『どうしてそれが好きなのか』『ほかにも同じような理由で好きなものはあるか』などを聞いていくと、話が広がりすぎて、順序が分からなくなったり、整理しづらくなったりすることもあるでしょう。その場合は、記録にする範囲を自由に広げられるデジタルツールの方が、話を整理しやすいかもしれません」

4. 学びをより深めるツールとして授業でも活用

 ディスカッションでは、マインドマップ®のほかの活用法についても意見が交わされた。

 眞島さんは、読書の備忘録、授業内容のメモ、議事録、to doリストなどにも、マインドマップ®を活用していると説明。

 「単語を書き出し、関係のある単語同士を線で結んでいます。その際、関係によってペンの色を変えると、自分の考えを整理できます。例えば、学校の年間スケジュールもマインドマップ®で整理すると、頭の中にすっと記憶できます」(眞島さん)

眞島氏提供資料

 学校現場では、授業に活用する教員が増えているという声も挙がった。

 「子どもが物語をつくる『作家の時間』に活用しています。物語を書き始める前にマインドマップ®を使って構想を練っておくと、物語の展開がスムーズになったり、物語を肉づけする描写が豊かになったりします」(参加者:大人)

 蓑手先生は、自身の授業でのマインドマップ®の活用例を説明した。

 「工業について学ぶ社会科の授業では、導入で『自動車工場』から連想するものを子どもたちに挙げさせました。それを黒板に書き留める際にカテゴリーに分けておくと、書き込みが少ないカテゴリーに関する連想物を考えてくれる子どもが出てきます」

 すると、眞島さんは、知識の習得にもマインドマップ®は有効だと述べた。

 「歴史上の人物名を真ん中に書き、その周りに功績や関係のある事件などを付け加えていくと、その関係図が頭の中に残ります。1回書いただけではなかなか覚えられませんが、この方法で何度も書くと、関係図がそのまま画像として頭の中に浮かぶようになります」

  蓑手先生は、その理由について、「文字をずらっと並べた継次処理は、パッと見るだけでは情報が分かりません。それに対して、マインドマップ®は絵に近い状態であり、同時処理として認知できるので、そのままの形で記憶に残しやすいのでしょう」と指摘した。

 マインドマップ®は、企業ではプロジェクト管理やプランニングのツールとして活用されている。眞島さんは、授業案の作成に利用しており、全体構成をおおまかに決めてから、説明の順序を練り、それに合わせてスライドを作成しているという。

 「話を広げたり、細かくしたりと、授業の組み立てがしやすくなります。保存がしやすいこともあり、無料で利用できるマインドマップ®のアプリケーションを利用しています」(眞島さん)

 マインドマップ®の学びのツールとしての可能性が多様に示されたことを受け、蓑手先生と眞島さんは次のように語った。

 「グループワークでは、参加者自身にもファシリテーション力やコーチング力、質問力が必要になり、どれも子どもたちに育みたい力です。今日のようなマインドマップ®とグループワークを組み合わせた活動は、自己分析だけでなく、子どもの多様な力を引き出す手段にもなると感じました」(蓑手先生)

 「好きなものが思い浮かばなかった、書けなかった、話せなかったとしても、その発見こそが自己分析の第一歩となったのではないでしょうか。それに気づけば、練習によって改善させることも可能です。今回行ったワークは、物事を体系立てて考える力と相手に適切に説明する力の育成につながります。自分の成長に、また子どもたちの教育にぜひ役立てていただければと思います」(眞島さん)

プロフィール

眞島 かな子

眞島 かな子(ましま かなこ)

2018年よりダイバーシティ&インクルーシブを提唱しているNPO法人GEWELの会員となる。保護者の立場で学校のあり方を考えるようになったことを機に、インクルーシブ教育、ICTの有効活用、個の成長を促す学び、学校の先生と学校外の大人をつなげる活動に取り組む。2021年1月末、勤務先の金融機関を退職し、株式会社ネクストエールを設立。児童・生徒、保護者、先生の居場所づくりに取り組むとともに、ライターとして子育てや教育に関する記事を取り上げる。

蓑手 章吾

蓑手 章吾(みのて しょうご)

教員14年目。専門教科は国語で、教師道場修了。特別活動や生活科・総合的な学習の時間についても専門的に学ぶ。特別支援学校でのインクルーシブ教育や、発達の系統性、学習心理学に関心を持ち、教鞭を執る傍ら大学院にも通い、人間発達プログラムで修士修了。特別支援2種免許を所有。ICT活用についても高い関心があり、多くのセミナーや勉強会に参加。ICT CONNECT21が主催する「先生発!最新のICT技術で教育現場を変えるハッカソン」ではグランプリを受賞。現任校ではICTプロジェクト主任も務める。
多種多様なセミナーや研修会、文献などからも学力向上についても理解を深めている。セミナー登壇経験多数。共著に『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)、『before&afterでわかる!研究主任の仕事アップデート』(明治図書出版)など。教育雑誌『授業力&学級経営力』(明治図書出版)では、プログラミング教育に関する連載を持っている。近著に『子どもが自ら学び出す! 自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)がある。

関連記事

ページのTOPに戻る

ベネッセ教育総合研究所について 6つの研究室がそれぞれの専門領域を研究しています。

  • 次世代育成研究室
  • 初等中等教育研究室
  • 高等教育研究室
  • アセスメント研究開発室
  • グローバル教育研究室
  • カリキュラム研究開発室
  • ベネッセ教育総合研究所について

>所在地

  • 人と社会の幅広い課題に向けたベネッセの取り組み
    サステナブルな社会へfromBenesse
  • 電子書籍
    電子書籍
  • 高校生環境小論文コンクール
    第9回 高校生環境小論文コンクール 7月1日より 受付スタート!
ベネッセ教育総合研究所[公式ツイッター]