様々な場所で色とりどりに活躍している20代、30代。彼らのインタビューを通して、これからの社会で活躍し、「Well-being」に生きるためのヒントを探っていきます。
今回は、外資系大手IT企業でエンジニアとして働く河村聡一郎さんにお話をうかがいました。
自分の好奇心を大切にしながら社会貢献をしていきたい

- 河村 聡一郎
1987年生まれ。京都府出身。東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻修了。大手ITベンダー、大手Webサービス会社を経て、2021年、外資系大手IT企業に入社し、エンジニアとして勤務。趣味は、登山中や海外旅行先で写真撮影をすること。
自己裁量の大きい職場を求め、2回転職を経験
私は、10歳のときにインターネットに出合い、広い世界とつながる経験をし、テクノロジーに興味を持ちました。両親は、「自分の好きなことをしなさい」という教育方針で、私の自主性を大切にして育ててくれたと思います。私の興味を広げるために、科学系のイベントに連れていってくれたり、大きな書店で興味のある書籍を買ってくれたり……。今、振り返ると、とても感謝しています。
大学卒業後は、東京大学大学院で電子情報学を学び、大手ITベンダーにエンジニアとして6年間、勤務しました。金融系のシステム開発に3年間携わった後、本社の研究部門に異動し、新しいサービスを利用して、ソフトウエア開発を円滑に行うための方法論の研究に携わりました。この会社でシステム開発と研究開発の両方を経験して、自分は技術開発そのものより、技術の活用により面白みややりがいを感じるのだと分かりました。
そこで、より先端技術の適用を自由にできる環境を求め、ボトムアップな企業文化が根付く大手Webサービス会社に転職。新しい技術を取り入れ、組織を横断してデータを扱う基盤の再構築に取り組みました。
この職場は、個人の裁量が大きく、常に自己決定しながら開発をすることができました。そうした仕事内容ややり方に手応えを感じ、より自分で考え、選択し、判断できる環境で、仕事をしたいと考え、転職することにしたのです。
現在は、外資系大手IT企業でエンジニアとして働いています。日々お客様に紹介すべき技術やサービスがアップデートするため、自分自身も学び続けなければなりません。この「学び続ける」ということが、エンジニアとして最も重要な力だと、私は考えています。業界全体が進化しているため、自社以外の知識や技術を理解していくことが重要だからです。仕事に関わる資料を読むほか、TwitterなどのSNSからも最新技術を活用するヒントが得られることもあるため、様々なメディアから技術に関する情報を収集するように心がけています。
中高生や大学生からすると、社会人になってもまだまだ学び続けるのかと思うかもしれませんが、「常に新しいことを知りたい」という自分にとっては、とても理想的な環境です。日々最新技術を学んでいくことで、自分の業務領域が広がり、それを武器に社会貢献ができるからです。
画面越しのやりとりで仕事は可能だが対面の良さを実感する毎日
現在、コロナ禍の影響で、多くの方が在宅勤務になり、テレビ会議やチャットなどを活用していると思います。私もその一人ですが、業務上のコミュニケーションは十分成り立っています。
しかし、画面越しやテキストベースのやりとりだけでは、そぎ落とされてしまった情報や感情もあるため、雑談のようなコミュニケーションが恋しいです。以前の職場では、仕事以外の会話からアイデアやヒントをもらうこともあり、職場で仲間と顔を合わせて仕事をする重要性を感じています。
コロナ禍以前は、休日には山登りやアジアへの海外旅行などに出かけ、アクティブに過ごしていましたが、最近はゲームやネットサーフィンの時間が増えてしまっています。自分はエンジニアですが、画面から得られる情報には限界があると感じています。コロナ禍が終息したら以前のように山や海外旅行にも出かけ、様々な刺激を受けたいですね。
新しいサービスをスペシャリストとして創り出したい
私は、部下のマネジメントをして組織を強くするというよりも、一生涯技術者でいたいと考えています。ただ、今後、ディープラーニングをはじめとする、様々な新しい技術が世界を席巻していく中で、自分は定年まで同じペースで学び続けていられるのか……という不安もあります。
また、今は独身のため、休日を自分の勉強に費やすことができますが、結婚し、子どもが生まれたら仕事と家庭を両立できるのかと考えることもあります。ただ、自分の周囲には、子育てをしながらエンジニアとしても活躍している人が大勢いるので、自分もできるだろうという気持ちも強いです。
将来的には、新しいサービスを立ち上げたいと考えています。自分でアイデアを生み出すだけでなく、何かアイデアを持つ人を見つけて、自分がその人の力になるのもよいかもしれません。どのような道がよいのか、これから模索していきたいです。
学び続けることの楽しさを子どもたちには伝えたい
学校の先生や保護者の方には、ぜひ子どもたちに「学び続けることは楽しいことだ」ということを伝えてほしいと思います。学校の教科の勉強に限らず、これだけは自分は人に負けないというもの、これがあれば自分は強くなり続けられるというものを見つけてほしいと思います。
自分は小さい頃からテクノロジーに新しいものがあると自分の手で動かしてみたくなり、どんどん知りたいことが増えていって、今に至るという感じです。もちろんその過程では、失敗や試行錯誤することもたくさんありました。特にインターネットから得られる情報は玉石混淆しており、高校時代は誤った情報をつかんでしまうこともありました。ただ、繰り返していくうちに、正しい情報を見極められるようになりました。失敗から得られることも多いということも、伝えたいと思います。
また、これからの世界では、知識を覚えるだけでは機械にはかないません。与えられたことをただ消化するよりも、学んだことを自分の言葉になるまで咀嚼し、それ以上のものを創造できる存在を目指してほしいと思います。それが、機械とは違う人間らしさであり、自分のやりがいにつながるのだと感じています。
編集後記
小さな頃からテクノロジーに強い興味があり、興味・関心を持ち続け、大学院進学、就職、転職をして成長し続ける河村さん。転職という人生のターニングポイントにおいて、軸になっているのは、河村さん自身が「自己効力感」を感じられる場所かどうかということだと感じました。学び続けられる環境、自己裁量の大きい環境こそが、自分をより成長させられる場所だと考え、より高みを目指す姿にとても刺激を受けました。一方、先端業界で働き続けることやエンジニアとしての不安も吐露されている姿も印象的で、40代、50代と歳を重ねた河村さんにまたお話をうかがいたいと感じました。
2021年6月10日取材
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