様々な場所で色とりどりに活躍している20代、30代。
ベネッセ教育総合研究所では、活躍する20代、30代のメディア発信に取り組んでいる、株式会社ドットライフおよび株式会社ユニークの協力のもと、より多様で幸せに活躍する方にインタビューを行いました。
彼らのインタビューを通して、これからの社会で活躍し、「Well-being」に生きるためのヒントを探っていきます。
今回は、伊豆市役所で働く飯塚 拓也さんにお話をうかがいました。
中学校の地域学習から始まった。地元・伊豆での「幸せ」探し

- 飯塚 拓也
伊豆市役所職員
1998年生まれ。静岡県伊豆市出身。中学生の頃、地域学習の授業を通して地元(伊豆地域)の魅力と課題を知る。好きな地元に貢献したい一心で、市役所職員になることを決意。高校卒業後、伊豆市役所に入庁。観光や企画部門での勤務を経て、現在は危機管理部門を務める。プライベートでは豊かな伊豆暮らしの様子を発信するinstagramアカウント@takuya.izu_lifeを運営。
「仕事」「自分らしさ」「家族」をバランスよく大事にする

現在、私は地元の市役所で防災に関する仕事を担当しています。静岡県は南海トラフ地震の発生が予想されるエリアに位置し、県全体としても防災に注力されている中、地域のために必要不可欠な仕事だと思っています。
一方で、仕事以外の時間ではinstagramアカウント@takuya.izu_lifeを運営しています。先祖代々から受け継ぐ実家の里山をフィールドとして、豊かな伊豆暮らしの様子を発信しています。子どもの頃から好きだった伊豆の地で心地いいと思える自分らしい暮らし方をして、多様な季節と日常の中に垣間見える豊かなシーンを発見・発信しているのがinstagramアカウント@takuya.izu_lifeです。
ここまでお話しした「仕事」「自分らしさ」が私にとっての軸だと思っていたのですが、最近もうひとつ大事なものが増えました。それは、「家族」です。2023年1月に入籍、実家を離れ、妻と二人暮らしをするようになってから家族の大切さを一層強く感じています。
今、目指しているのは、「仕事」「自分らしさ」「家族」という3つの軸をバランスよく大切にして豊かな暮らしを送ること。感謝の気持ちを持ち、多様な価値観をを尊重しながら、これらが重なる点を探しています。
地域学習と移住者との出会いで地元の暮らしの魅力に気づく

現在に至るまでには3つの転機がありました。
1つ目の転機は、中学生の頃に受けた総合学習の授業。伊豆地域の魅力を学ぶだけではなく、地域が抱える課題に対して解決策を考える機会がありました。授業を通して、自分が昔から好きだった伊豆の魅力を再確認できたことは非常にいい経験でした。一方で、私の心に強く残ったのは地域が抱える課題でした。
「昔から好きだった地元、伊豆が抱える課題をなんとかしたい」
その想いから、市役所職員になることを決意しました。
その後、地元の高校に入学。高校に入ってからも地域について学ぶ授業を受けました。部活にも熱心に取り組みましたが、地域について考える機会を継続して得られたことは良かったと思っています。この時、課題解決型学習を通して、地域の良いところだけではなく裏側にある課題についても理解を深められたことはいい経験でした。例えば、自然の生態系が抱える課題など。それらに対して、自分も何かできることがあれば……と、より一層考える機会となりました。
高校卒業後、念願叶って無事に市役所に勤めることができました。最初に配属された観光部門の仕事を通して、2つ目の転機を迎えます。
当時、私は市役所ではなく出向先で働いていました。この出向期間に多くの方々と出会い、地元で活躍する大人たちの姿から刺激を受けました。なかでも、特に刺激を受けたというか、大きな気づきを得る転機となったのは伊豆に移住してきた方々との出会いでした。
県外から伊豆へ移り住んだ彼らは、伊豆の自然や地域が好きで、伊豆での暮らしを心から楽しんでいるように見えました。そして、その暮らしと地域の魅力はお金に換えられるものではないと気づきました。この出会いによって、私自身も今まで身近すぎて気づかなかった「あたりまえの日常の中にある幸せ」に気づくことができるようになり、それは伊豆での暮らしの中にあるんだという発見も得ることができました。
それ以来、より一層伊豆を好きになり、暮らしの中にある金銭換算できない価値に目を向けるようになりました。
最後の転機は、プライベートで運営メンバーとして参加したイベント「生き博」。「生き博」とは、自分らしい生き方をしている方をゲストに招き、参加者とゲストが自分らしい生き方について対話を重ねながら、探究していくイベントです。友人に誘われて、運営メンバーに参加しました。イベントの企画や運営メンバーとの対話を通して、自分にとっての「生き方」「豊かさ」について言語化が進み、自分にとって大事な価値観の整理につながる機会となりました。
伊豆の暮らしの豊かさを共有できる場をつくりたい

私の現在の仕事内容とこれまでの経緯についてお話ししました。
何度も言いますが、私は伊豆の地域と暮らしが好きです。最近は、夜空に浮かぶ月を見ながら歩いて帰ることもあります。星空も綺麗で、夜歩いているとふと空を見上げてしまいます。ただ、夜空があることも、そこに月があることも、それ自体は特別なことではありません。お金もかかっていません。身近にある幸せによって、今の私のなにげない幸せはつくられているのです。
とは言いつつも、私も最初からそう思っていたわけではありません。これまでの転機のたびに気づきを得てきました。気づきの多くは、地元である伊豆を客観視するきっかけから生まれました。中学生の頃に受けた地域学習の授業、県外から伊豆へ移り住んだ移住者との関わりがそのきっかけでした。
時には、私の地元愛を認め、後押ししてくれる人の支えもありました。例えば、とある上司はこんな言葉をかけてくれました。
「きのこの山とたけのこの里、どっちが好きだ? お前みたいにきのこの山を選ぶやつは個性が強いんだ。でも、それでいいじゃないか。それ(好きなものに真っ直ぐな姿)がお前らしさだぞ。小さくまとまるな」
幼馴染もこんな言葉をかけてくれました。
「そんなに地元が好きなら、そのことをもっと人に話してみたらどう?」
こうした言葉や出会いも、これまでのびのびと地元愛を持ち続けられた理由の1つだったと言えると思います。
今後は、伊豆の暮らしの中で得られる豊かさを共有できる場を持ちたいと考えています。これからも、「仕事」「自分らしさ」「家族」という3つの軸を大切に、伊豆での豊かな暮らしを楽しみ、発信していきたいです。
編集後記
編集・ライティング=ユニーク
金銭換算できない豊かさ、幸せを大事にする飯塚さん。彼の生き方を見ていると、「よりよく生きる」ということを考えさせられる。特に印象的なのは、好きなものへ向ける真っ直ぐな愛情。人との出会いから客観的な視点を得て、新たな気づきを得る姿勢。自分にとっての幸福・豊かさを1つとせず、いくつかの要素のバランスで成り立っていると語る捉え方。それぞれに「Well-being」に生きるためのヒントが詰まっているように感じる。
2023年1月14日 取材
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