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学習者中心の授業づくりを目指して―――
たゆまぬ挑戦をしてきた実践者の経験から、
これからの授業づくりについて議論を深めます。


2019.11.08 update

東京都町田市立鶴川第二小学校では、学校独自の教科「21世紀スキル科」を設置し、「メタ認知力」を育成する授業を全学年で展開している。今回は、小松千草先生が行っていた6年生の「21世紀スキル科」の授業を見学した。子ども主体で自分のよさをいかした貢献活動を企画するという授業を紹介すると共に、「メタ認知力」を高めさせるためのポイントをうかがった。


単元名
「私らしくあなたらしく〜 MY LIFE PLANNING〜」

単元目標
(1)自分がやりたいことを見つめ、活動を企画し、友達と共に取り組んでいく中で、自他の特性を理解するとともに、友達と分担し、計画的に活動に取り組むことや、自らの活動を振り返ったり修正したりすることができる。
(2)目的を意識し、目的に合っているかを確認しながら進めるとともに、その中で自分の考えをもち、それを表現することができる。
(3)目的に向かって粘り強く取り組むととともに、友達と協力し、互いのよさを生かしながら活動しようとする。積極的に人や地域に貢献しようとする

単元計画(全35時間)
1次 目標設定(1〜7時間) ※本時は全35時間中の5・6・7時間目
2次 計画・実行(8〜25時間) ※対象や内容を変えて2度繰り返す
3次 これからの自分(28〜35時間)

前時までの活動
ゲストティーチャーの大学生と留学生、地域の方から、これまでの経歴、現在取り組んでいること、今後の夢などについて話を聴いた。

本時の目標
全35時間中の5・6時間目:3人のゲストティーチャーから聞いた話を踏まえ、各自が自分の「好き」を見つめ、大切にしたい価値観を模索する中から、自分が「できる」ことを考える。そして、他者への「貢献」という視点で、本当に取り組みたい課題や目標を考え、挑戦したいことを企画カードにまとめる。

7時間目
6年生全員が集まり、企画カードにまとめた内容をもとに仲間を見つけ、グループ作りをして、企画内容を更に練る。

 

 

(1)自分のよさを見つめ、のばすことを目的に、自分たちで活動を企画する

 「『21世紀スキル科』は、どんな授業でしたか? 教えてください」

 「21世紀スキル科」の授業は、小松先生の問いかけから始まった。子どもたちは隣の人と話し合った後、挙手して発言した。

 「外国の方や地域の人と交流して、主体性や協調性、思考力を高められる授業です」
「自分をモニタリングことで、今までに自分になかった力を、身につけられるようにする授業です」

 などの声が挙がった。次に小松先生は、前時に行ったゲストティーチャーの話をまとめた模造紙を黒板に貼った。そこにまとめられたキーワードと子どもたちの感想を見ながら、小松先生が話の内容を振り返った。そして、この単元では、自分のよさをのばすこと(主体性)、人のよさをいかすこと(協調性)、途中で目的に合っているか確認すること(思考力)の力をのばすことを目的に授業をすすめていくことを確認した。その後、本時のめあてを次のように伝えた。

 「今日は、自分の心を見つめましょう。みなさんは、やってみたいことや何か夢はもっていますか? 今日は自分を見つめ、自分が何をしていきたいのかを考えていきましょう」

 その際、小松先生は、ゲストティーチャーの話に出てきた「やりたいこと・好きなこと」「できること」「やらなければならないこと」という「3つの視点」の考え方を思い出させた。

 子どもたちはノートに3つの丸を書き、「できること」「やりたいこと」「やらなければならないこと」を5分程度でまとめた。時間内に3つとも書けたのは1人だけだった。「やらなければならないこと」は書けた人が8人いたが、「やりたいこと」や「できること」が書けた人はそれぞれ数人で、書くのが難しいようだ。

 「今日のテーマは「自分のことを見つめる」なので、『自分のやりたいこと』から考えていきたいと思います。このようなことを考えて、小学生のときに会社を立ち上げた人がいます。自分でカードゲームを作り、起業したそうです」

 小松先生は、小学生で起業した事例を挙げ、やりたいことを見つめ、それを実現させる力がみんなにもあることを説明し、ワークシートを配った。ワークシートには、左から「好きなこと、時間を忘れるくらい、やっていて楽しいこと」「それの何がいいの?」「やりたいこと、挑戦したいこと」が書いてある。

 小松先生は、先生自身が「好きなこと、時間を忘れるくらい、やっていて楽しいこと」を書いたシートをスライドに映し出して見せながら、ワークシートの書き方を具体的に教えた。その後、シートに取り組ませた。

 その後、それぞれが書いた「やりたいこと」の中から、「他者への貢献」の視点で取り組みたいことを絞り、画用紙に企画カードを書いた。

 次の時間は、6年生全員が音楽室に集まった。企画カードを見せ合い、自分と似ている企画の子とグループを作った。

 「幼稚園生と交流したい」「スポーツ大会を開きたい」「ブックカフェを開きたい」など全15チームができた。少ないグループは2人、多いグループは20人ほどのメンバーを集めていた。グループで活動内容、目的などを話し合わせ、一つの画用紙にまとめさせて、授業は終了した。

 小松先生が授業で「メタ認知力」を働かせるため、工夫したのは以下の3点だ。

 

(2)工夫その1、授業冒頭にしっかりモニタリングを行う

 「21世紀スキル科」では、自立した学びを目指し、「メタ認知力」を高めることを目標の一つとしている。そのため、授業中に学んできたことを振り返り、できるようになったことや課題を自覚(モニタリング)し、何をどのような目標にして学ぶのかを考える(プランニング)といった活動を授業に積極的に取り入れているという。

 「今回は、授業冒頭に前回の講演をクラス全体で振り返りを行い、21世紀スキル科の目標と本時のめあてをしっかり確認してから、ワークに取り組ませました。またゲストティーチャーの話も振り返り、本時で子どもたちがすべきことを焦点化させ、主体的に取り組んでもらえればと考えました」(小松先生)

 

(3)工夫その2、自分の見つめさせ方を工夫する

 一昨年も、6年生に同様の授業を行ったというが、内容は大きく見直したという。その理由を小松先生は、次のように話す。

 「子どもに主体的に取り組んでほしいという思いから、自由に考えさせたのですが、何をどのように考えればよいのか手がかりを与えなかったため、子どもたちは苦労していました。そこで今年度は、ゲストティーチャーの話と自分を比較しながら、3つの視点から自分のやりたいことを分析させ、地域活性化活動の企画カードを書かせるようにしました。また、私の好きなことも具体例として挙げ、『好きなこと』から『やるべきこと』をどのように抽出するか、ロールモデルにしてもらえればと考えました」(小松先生)

 小松先生は、一連の過程の中で特に難しいのは、「なぜ自分は○○が好きなのか」の理由を深める作業だと考えたという。

 「事前に私自身がこのワークに取り組み、そう感じたからです。私の好きなこととして『おしゃべり』を挙げたところ、共感してくれた子どもが多かったので、なぜおしゃべりが好きなのか、隣の席の子と話し合わせました。これは、好きな理由を深く掘り下げる練習です」(小松先生)

 ワークシートに記入させる際も、事前にワークが難航すると予想していた小松先生は子どもたちに「書くのが難しいときはどうする?」と問いかけていた。

 「『友だちと話し合う』という声が多数出たので、友だちと話し合わせるようにしました。また、子どもたちに考えを広げたり、深めさせたりするために、様々なモチーフの写真が貼られているイメージカードも用意しました。カードの写真からヒントを得て、イメージを膨らませてくれた子もいたので、用意してよかったと感じました」(小松先生)

 

(4)工夫その3、「メタ認知」することを楽しめる活動にする

 モニタリングをして自己評価をさせることが大事ですが、その過程が子どもにとって有益であると感じなければ、活動の質は高まらないと小松先生は考えているという。

 「4年前、『21世紀スキル科』の授業をはじめた当初は、メタ認知をさせるためには、モニタリングを繰り返すことが良いと考え、回数を多くしていました。また、その方法が単純な方が良いのではないかと考え、授業の最後にノートに振り返りを書くだけなど、モニタリングの方法を単純化してしまった結果、機械的な振り返りになっていました。そこで、『モニタリングをすることで自分の頑張りや成長に気付くことができる』と感じられるよう、モニタリングやプランニングをする回数や内容をより精査し、深い活動が行えるように考えました」(小松先生)

 そこで昨年は、グループごとに評価規準を事前に作らせ、活動後にそれを基に振り返りを行わせた。今年は、個人で評価規準を作らせたいと計画中だという。

 「自分が身につけたい力を意識して、それがどの活動でどのように発揮できたのか項目をつくり、自分で評価させるようなものを考えています。3段階で評価するチェックリストでもよいし、10段階の点数で評価する方法でもよいと思います。評価形式も、個人に任せてみようかと思っています」(小松先生)

 

(5)今後の課題

 今後の課題を小松先生は、次のように話す。

 「多くの子どもが自分を見つめ、企画カードを書くことができてよかったです。ただ、せっかくやりたいことを導きだすことができたのに、グループを作る際、仲間の意見に影響を受けてしまう子もいました。どのようなグループ作りが良いのか、次年度に向けてさらに考えていきたいと思います。

 「メタ認知力」を高めるための授業づくりに4年前から取り組む鶴川第二小学校。小松先生によると、『21世紀スキル科』で学んだ「メタ認知力」を、普段の授業でも発揮してくれる子が増えているという。

 「例えば、毎授業後、ノートの最後に、今日のめあてに対して自分はどれくらいできたのかを10段階で自己評価していた子どもがいました。そうした子のように、様々な場面で21世紀スキル科で培ったメタ認知力を働かせて、自分の学びを自分で進めていけるようになってくれたらと思っています。そのためにも、他の先生や子どもたちからも意見をもらいながら、より良い授業にしていきたいと考えています」(小松先生)

著者紹介


小松 千草 こまつ ちぐさ  プロフィール

■ご担当

 東京都町田市立鶴川第二小学校21世紀スキル科担当

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