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現役教員をはじめとした教育実践者たちが挑戦する、新しい「学びの場」づくり。
こだわりは、話だけでは終わらせず、「模擬授業」など、実験的なアウトプットから議論をすること。あなたも、この実験に参加しませんか?


2020.1.31 update

2020年度に全面実施される小学校の新学習指導要領では、「道徳」が教科として位置づけられる。「道徳」で扱う内容は、子ども一人ひとりのモラルと密接にかかわるため、学校現場からは特定の価値観の押しつけになることを危惧する声も聞かれる。新学習指導要領への移行期間に「道徳」を教科化した学校では、どのような指導をしているのだろうか。2019年6月、小学校の教員ら約40人を前に、東京都小金井市立前原小学校の蓑手(みのて)章吾先生が模擬授業を行った。

 

1.子ども同士が自由に話し合い、規則の必要性を考える授業

 今回の模擬授業では、小学5年生の「道徳」の「規則の尊重」について考える単元を取り上げ、教材には、子どもたちが地域の放置自転車問題と向き合う姿を描いた「駅前広場はだれのもの」を用いた。冒頭では、蓑(みの)手(て)先生が参加者に「皆さん、小学校で受けた『道徳』の授業は面白かったですか」と問いかけた後、自身の小学生時代における「道徳」の印象を次のように語った。

 「私は、正直、『道徳』の授業に興味が持てませんでした。それは、『あたり前』のことを言わなければならない授業というイメージが強く、退屈だったからです。そこで、現在は教員として、子ども同士が自由に考えを述べ合うことを大切にした授業づくりを心がけています。実際の授業で本単元を扱った際も、規則は必要なのか、それはなぜかを考えさせることをねらいとしました」

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2.子どもにテーマを自分事として捉えさせる、発問の工夫

蓑手章吾
東京都小金井市立前原小学校 蓑手 章吾先生

 模擬授業は、蓑手先生が質問し、参加者がそれに答えながら進行した。

 例えば、教材を全員で読んでいる中、教材の前半である「駅前広場に放置自転車がたくさんあり、地域の迷惑になっている」という状況説明が終わったところで、蓑手先生が参加者に「皆さんなら、問題の改善に向けてどんな提案をしますか」と尋ねた。

 「教材の後半では、子どもたちが大人と協働して、駅前広場の掃除をするボランティア活動に取り組んだり、自転車の放置をやめようという啓発ポスターを作成・掲示したりした結果、放置自転車が減少したことが描かれます。実際の授業でも、教材の結末を知る前に『自分であればどうするか』を考えさせられるよう、教材を読む途中で同じ発問をしました。すると、『強制撤去する』『罰金を取ることにする』といった様々なアイデアが出され、子ども同士で活発な話し合いが行われました」(蓑手先生)

 そうした中、ある子どもが『放置自転車がたくさんあっても、よけて通れるはずだから、対策は不要ではないか』と述べ、それに対して、別の子どもが『お年寄りや足の不自由な人には、放置自転車があると危険だから、何らかの対策が必要だと思う』と主張したという。

 「子どもたちは、1つのテーマでも見方・考え方は多様であることを実感したようです。また、他者の置かれた立場や状況を思いやることの大切さを改めて意識するきっかけにもなったと感じます」(蓑手先生)

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3.目的と手段という考え方の大切さを伝える

 教材を読み終えると、蓑手先生は参加者に「子どもたちの活動によって、なぜ放置自転車は減ったのでしょうか」と質問した。子どもたちはどのような目的で活動をしたのか、単に放置自転車がなくなればよいのかを考えさせたいと、実際の授業でも、そうした問いかけをしたという。

 「作中の子どもたちの目的は、皆が公共の場を大切にするという意識を持てるようになることにあると、私は考えています。すると、放置自転車を強制撤去したり、罰則を設けたりしても、その目的は達成されないでしょう。授業では、子どもの答えを聞いた後、そうした私の考えを示し、目的に応じて手段を考えることが重要だと伝えました」(蓑手先生)

 模擬授業の最後には、実際の授業で活用しているワークシートを参加者全員に配布。社会に規則はあった方がよいのか、ない方がよいのか、理由とともに書いてもらい、全体で共有した。

 「実際の授業でも、タブレットなどでクラスメートと考えを共有する場面を積極的に設けました。多様な価値観に触れる中で、子どもは刺激を受け、考えを深めていくと感じています」(蓑手先生)

 

4.道徳の授業を充実させるために、教員には何が求められるのか

 模擬授業後には、参加者が3〜4人のグループに分かれ、教員として道徳の授業でどんな工夫をしたいか、また、子どもの立場に立ってどんな授業を受けてみたいか、意見交換・発表する場を設定。蓑手先生がコメントをした。

 大半のグループの議論に共通していたのが、子どもが自由に話し合える雰囲気づくりが欠かせないという認識だ。そうした授業を実現するため、教員には、子どもの考えを1つにまとめることにこだわらない姿勢が求められると語る参加者が目立った。蓑手先生は、そうした考えに同意し、次のように述べた。

 「道徳で扱うテーマについて、一人ひとりが自分で考えれば、異なる結論に達するのは自然なことです。私は、全員の考えが一致する方が不自然だと思います」

 一方、「多様な見方・考え方の大切にしながら、善悪の判断基準を示すことができるのだろうか」という問いを立てたグループもあった。

 「私の場合、一般のモラルを基準にして、よいとされる考えや悪いとされる考えの両方を示しています。ただし、最終的な判断はあくまでも子どもに委ねています」(蓑手先生)

 道徳の授業における評価のあり方も、複数のグループで議論された。具体的には、「ペーパーテストで評価することができるのだろうか」という問いが多かった。

 「私は、授業で書かせたワークシートの内容を基に評価をしています。回を追うごとに、内容が充実していく子どもが多く、成長を実感できます」(蓑手先生)


 本研究会は、都内で勤務されている先生方が授業を磨き合う場をつくることを目指しています。子どもの目線、あるいは、それぞれの専門の視点から対話の深まりを楽しみながら、今後の授業づくりについて考える場になればと思います。第1回は小学校の先生による「道徳×対話×ICT」の模擬授業、第2回は中学校の先生による「理科×問いづくり×探究」の模擬授業です。あなたも、これからの授業について、実際に体験をしながら対話しませんか? ご参加お待ちしています。


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プロフィール

蓑手 章吾

蓑手 章吾 みのて しょうご

教員13年目。専門教科は国語で、教師道場修了。特別活動や生活科・総合的な学習の時間についても専門的に学ぶ。特別支援学校でのインクルーシブ教育や、発達の系統性、学習心理学に関心をもち、教鞭を持つ傍ら大学院にも通う。特別支援2種免許を所有。ICT活用に関しても高い関心があり、多くのセミナーや勉強会に参加。ICT CONNECT21が主催する「先生発!最新のICT技術で教育現場を変えるハッカソン」ではグランプリを受賞。現任校ではICTプロジェクト主任も務める。 現在「教育の鉄人」こと杉渕鉄良氏主宰のユニット授業研究会に所属。その他、多種多様なセミナーや研修会、文献などからも学力向上について理解を深めている。 セミナー登壇経験多数。共著に『全員参加の全力教室2』『特別支援学校におけるICT活用実践事例集』などがある。
https://ict-enews.net/2017/10/27maehara-2/ https://edtechzine.jp/article/detail/1420

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