学校でも塾でもない、躍進する
「アフタースクール」という新たな選択肢

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これからの時代、人工知能やロボットが人間の労働をどんどん置き換えていく。今後人間に求められるものは「知識」よりも、他の人たちから慕われる人間性や社会性、コミュニケーション力、難局を切り抜ける力、豊かな感性、文化・芸術を愛でる心といったものになるはずだ。しかし、今日の学校での教育カリキュラムは、基本的には現行の大学入試制度に最適化されているため、そうしたものを養うには十分ではない。そもそも、こうした能力は、家庭や地域コミュニティの生活で獲得する側面が多かったが、核家族化や夫婦共働きが増え、地域での交流も減り、時代とともに教わる場がなくなってしまった。そんな中、「教科」という枠には収まらない「人間力」を育む場として新しい「アフタースクール」(いわゆる学童保育)が注目を集めている。志望校入学を目的とした進学塾の代わりに、社会に出た時の活躍にも大きく関わる「人間力」の育成に期待をして、こうした「アフタースクール」に子どもを預ける親が少しずつ増え始めているのだ。

【取材・執筆】 ジャーナリスト・林 信行
【企画・編集協力】   青笹剛士(百人組)

 駅前、異年齢、出入り自由

東京都世田谷区、東京急行電鉄「二子玉川駅」のすぐ近くに、アフタースクール「キッズベースキャンプ」がある。入り口すぐ脇の小部屋では、学校の宿題を済ませていない子どもたちがローテーブルを囲み、今日のプログラムに参加できるようにせっせと励んでいる。その横では私服に着替えた小学生が学校の制服をロッカーにしまい、バイオリンのお稽古へと出かけていく(バイオリン教室まで、キッズベースキャンプのスタッフが送迎してくれるサービスもある)。逆に、下校後「バレエ」のレッスンを済ませてやってくる子どももいる。

キッズベースキャンプ外観

キッズベースキャンプの外観

次に奥の大教室を覗いてみよう。取材日のメインプログラムは「アート工作」だった。今日はハサミやセロハンテープを使って紙飛行機を作るようだ。教室に置かれた数台のローテーブルに小学生が学年の区別なく一緒に座り、真ん中に指導員が立っている。指導員が紙飛行機の作り方の第1ステップを説明後、子どもたちが一斉に作り始める。

第1ステップを終え、あらかじめ配布されている説明書に書かれた第2ステップに進み始めている高学年の子どももいるが、先に進めない低学年の子どももいる。停滞している子どもたちには、教室にいる他の指導員や、子どもたちから人気の高い送迎を担当するドライバーさんが教えている。中には同じテーブルに座った低学年の子どもに手取り足取り教えている高学年の子どももいる。

「4月から1年生が入ってくると、それまで最下級生だった子どもたちもお兄さんお姉さんという意識が芽生えてきます。1年生の時にはみんなと一緒に行動できないような子どもでも、一転して、子どもたちに教えてあげられるようになっています。同じ学年だけでなく、縦のつながりができているのはいいですね」と語るのは、アート工作を担当した指導員で施設長でもある山本さん。

「キッズベースキャンプ」では、このアート工作の他にも、みんなで料理の仕方を学ぶ食育やスポーツ大会、色々な職業について学ぶプログラムなど多彩なイベントプログラムが用意されている。さらに、遊びや掃除など毎日一緒に過ごす時間を通して、学習習慣を身につけたり、友だちとの関わり方を学んだり、やる気や気づきを引き出したりするような日常プログラムがある。

この日、「アート工作」を指導していたのは山本さんだったが、プログラムによって教える担当は変わる。山本さんは工作系、もう ひとりがスポーツ系、お料理を担当する指導員もいる。キッズベースキャンプでは、指導員のことを「キッズコーチ」と呼び、「キッズコーチ」の資格を与える検定試験も行っている。

キッズコーチ

キッズコーチの山本さん

 

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