ベネッセ教育総合研究所
特集 高校の変化を見据えた大学広報とは
ベネッセ教育総研
統括責任者
原 茂
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高校の変化を見据えた大学広報とは
 高校では、低学年次から職業観や進路観を醸成するために、体験学習を通して大学など外部との連携を深めていく進路指導の動きが顕著になっている。このような変化に対して大学広報はどうあるべきなのか。従来のように、大学の良さをアピールするだけの広報では限界も見えている。今後は高校ごとの進路指導スケジュールに合わせた広報や、生徒1人ひとりの興味や関心を引き出すような広報が必要となっている。本特集では、高校の変化を整理し、高大連携にもつながるような広報のあり方を考えるとともに最新事例を紹介する。
【寄稿】
高校の進路指導はどう変わったか
 5000を超える高校の中で、ここでは主に、公立で、大学などの上級学校に進学する生徒の割合が高い進学校を中心に、近年、どのような問題が起き、その結果どのような進路指導が行われるようになったのか原茂氏に執筆してもらった。
高校生における指導の実態と大学が求めるものとが乖離

 学校週5日制への移行により授業時間が減っている上、教科書の内容が精選されてきたことなどから、日本の子どもの基礎学力は低下している。また、近年の高校生は大学入試で必要ない科目を真剣に勉強せずに卒業してしまうという傾向もある。
 一方、国公立大学ではセンター試験の5教科7科目化が進み、入試科目数が増える傾向にある。難関私立大学でも、センター導入方式では4科目型などの多科目型入試を新たに導入するケースが増えている。
 このように高校における指導の実態と大学が求めているものとの乖離をどのように埋めるかが、高校にとって大きな課題となっている。入試での教科科目数の増加に対応するためには、週5日制という逆境になっても、授業時間をできるだけ維持することが必要だった。そこで年間の授業時間を維持するための策として、以下の三つがなされている。
 一つ目は、「3学期制から2学期制への移行」である。定期考査や終業式、始業式といった学校行事が1回ずつ減るため、その分で授業時間を増やすというものである。ただ、これにはデメリットもある。2学期制になると定期考査は1回減って年4回となる。そのため考査と考査の間隔が長くなり、勉学に対する生徒の緊張感も緩みがちになる。また1回の考査の出題範囲が広くなり、最初から考査に対する勉強をあきらめてしまう生徒が出てきた。そのため、考査の合間に小テストを行う高校も増えている。
 二つ目の取り組みは、「1コマの授業時間の変更」である。高校の授業の標準時間は1コマ50分であるが、それを55分や60分、65分に延長する高校や、逆に45分に短縮する高校が出てきた。従来の50分だと、50分×6コマ=300分が一日あたりの授業時間の標準となる。しかし55分×6コマに変更すると、一日の授業時間は330分となり、1週間(5日)で150分取り戻せる。また、65分×5コマだと一日の授業時間は325分、45分×7コマだと315分となり、いずれも300分より多くの時間が確保できる。  しかしこれにもデメリットがある。一日の授業時間が長くなると、始業時間を早めない限り、部活動の開始時間が遅れることになる。また、生徒の集中力を維持させながら60分や65分の授業を進めることが難しい一方で、理科などの実験を伴う授業の場合、45分ではやや短すぎる。
 三つ目は、「土曜日の再活用」である。ただし公立高校では正規の授業はできないため、あくまでも「教育活動」として希望者対象の特別講座や補習授業、模擬試験などを実施している高校が多い。


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