希望者に無料で送り、返信用はがきに結果を書いて返送してもらう仕組みだ。戻り先は国際食料情報学部国際農業開発学科の農業環境科学研究室で、そこで年度ごとに全国的な酸性雨のデータをまとめ、毎年発表。生徒たちは、実験を通して研究に参加するわけだ。
東京農業大学がこのキットの配布を始めたのは1992年。大学が特別な広報をしなくても志願者が集まっていた時代だ。東京農業大学でも5月に大学案内、10月に募集要項を高校に送付するだけだったという。
新たな広報活動を始めたのは、大学改革の加速に合わせた幅広いPRが必要と考えたから。長年農学部だけだった東京農業大学が、網走市に生物産業学部を設置したのが89年度。その後学部改組による改革を進め、98年度に現在の5学部体制を築いた。教育研究のキーワードとして「食料」「環境」「健康」「資源エネルギー」を掲げており、酸性雨キットの送付は「環境問題に力を入れている東京農大」というメッセージの発信でもあった。入試センターの上田勉次長は「年2回の資料送付の間の空白期間を埋め、高校とのつながりを深めたかった。一方的に送りつけるのではなく、何かレスポンスが得られるものをと考えました」と説明する。
大学案内などでキットについて紹介し、資料請求はがきに送付希望のチェック欄を設けている。口コミで中学生、小学生にまで伝わり、学校から理科の教材用に人数分送ってほしいという要望も出てきた。小学生向け学習雑誌の夏休み号で告知したこともある。
キットの製作は理化学研究所に依頼。近年の年間送付数は7000〜1万セットで、結果の返送はその約1割だという。「募集広報とは明確に区別しているので、この程度で十分。環境問題への関心をきっかけに、東京農大の存在を知ってもらえれば」と上田次長。はがきは研究室に直に戻るため、入試センターでは返送者のリストなども作っていない。
返ってきた酸性雨データは従来、研究室が日本地図を色分けして示して、学園祭やオープンキャンパスで発表していた。地方で実験に参加した生徒にも見てもらえるよう、02年に大学のHPに「酸性雨調査隊」というページを開設。ここで登場するキャラクター「カッパクン」は、大学案内などのキット紹介ページでも使っている。
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