ベネッセ教育総合研究所
特集 高校の変化を見据えた大学広報とは
 
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【レポート5】
コンテストを通じて教育内容を伝える
くらしき作陽大学
 岡山県のくらしき作陽大学は2004年度から、高校生に郷土の食材を使ったお弁当を考案してもらうコンテストを始めた。社会全体に広く大学名の浸透を目指す考えだ。

優秀作品は百貨店が商品化

 コンテストの正式名称は「高校生商品開発コンペ2004」。テーマに「郷土の食材を使ったお弁当の開発」を掲げ、高校生に地元の食材でお弁当のメニューを考えてもらい、レシピと完成品の写真で入選作を決める。優秀作品は地元百貨店が商品化し、店頭に並べて売り出す予定だ。
 コンテストを企画した教育企画部の佐藤親久氏は、「フードシステム学科の内容を、高校生に知ってもらうためのイベント」と説明する。同大学の食文化学部は、栄養士を養成する食生活学科、管理栄養士を養成する栄養学科、食品産業界の商品開発リーダーとなる人材を育てるフードシステム学科の3学科からなる。
 02年度に開設されたフードシステム学科は、他の2学科に比べて教育内容がうまくアピールできないことが原因で、学生募集で苦戦が続いていた。そこで、主要な教育テーマである「商品開発」を前面に押し出し、アイデアを募り、それを実際に商品化するコンテストを企画した。
 告知開始は04年5月。兵庫以西の高校を中心に1000通ほどDMを郵送し、高校訪問でもチラシを配布した。8月末の締め切りまでに63件の応募があり、調理法、栄養価、マーケティングなどの観点から、最優秀11点、優秀賞3点を含む入賞作品15点を決定。10月24日のオープンキャンパスで表彰した。最優秀賞には、ままかり、そうめん南瓜など地元・牛窓町の魚や野菜を使った県内の高校1年生の作品「エーゲ海弁当」が選ばれた。商品は1〜2月、天満屋ストアで限定販売される予定だ。募集時とは食材の旬の季節が異なることや、製造コストの問題などを考慮し、優秀作品そのままではなく、上位4作品をアレンジして1〜2点のお弁当として商品化される。
 コンテストに対する高校の反応は概ね良好だった。調理科がある高校からは、「夏休みの課題にしたい」との声も聞かれたという。佐藤氏は「テーマが、『地産地消』や『食育』といった現代のキーワードに合致していたことや、実際に流通に乗せて商品化するというコンセプトに、好印象を持ってもらえたのではないか」と分析する。
 コンテスト開催の結果、資料請求件数が前年より増加したり、それまで志願者がいなかった高校からも受験者が出たりするなど、全体的に受験者層が広がった。応募者に対する直接的な募集活動はしなかったが、その中から推薦入試を受験する生徒も現れ、結果的には入試広報にも一役買った。
 一方で、くらしき作陽大学の学生に対して、岡山市内の食品メーカーから新商品の共同開発の話が持ち込まれるなど、思わぬ波及効果もあった。「将来的な就職先の確保という面も含めて、広報としては成功したと思っています」(佐藤氏)。



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