VIEW21 2001.06  指導変革の軌跡 三重県立川越高校

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小論文指導も
学校の雰囲気づくりに一役買っている取り組みだ。同校で'97年から本格的な小論文指導を始めた。1、2年次に定期的に新聞の切り抜きをさせたり、読書指導を徹底することで社会に目を向けさせる一方、定期テストでは200字作文を出題し、小論文を書くための土台づくりに力を入れている。
 「3年生になってから、いきなり小論文を書けといっても無理です。1、2年次には基本的な作文力と『人間力』を身に付けさせることを目的にしています。これらは学校の知的な雰囲気づくりにも役立っていると思います」と小論文委員会(現小論文指導部会)のとりまとめも務める中村先生は胸を張る。
 「入学直後は、200字というマス目を埋めることもできないほど作文力のない生徒が、指導の積み重ねで新聞を読むようになり、本を読むようになっていきます。次の段階では、ディベートができるように生徒を育てられたらと思っています」(鈴木先生)
 また、'00年度には初めての取り組みとして、2年生を対象に大学教授による模擬講義を開催した。県内及び近県の大学への進学を希望する生徒の要望に合わせて、名古屋大、三重大、愛知県立大、愛知大、南山大、四日市大などの教授に講師を依頼。生徒には大学が身近に感じられる一方、大学の勉強の厳しさを感じることができたと好評であった。だからといって、今年度も同じ形態で続けるつもりはないと水谷先生は言う。
 「前回、そのやり方で成功したからといって、安易にマニュアル化するのは危険です。生徒の気質や周囲の状況は毎年変化しています。それに合わせて私たちもやり方を常に見直していく必要があるからです。成功は失敗のモト、なんです」
 学校の雰囲気をつくり上げ、生徒の学習意欲につなげている川越高校。その成果は確実に現れ、国公立大学への進学実績も継続的に100名を超えるようになった。
 「3年生の指導については、きめ細かい指導ができるようになってきていると思います。しかし、1、2年生についてはまだこれからです。現状では、どうしても3年生になったら頑張り始めるという生徒が多く、受験生としてのスタートが遅いんです。進路週間を経て、初めて受験生になるのではなく、もっと前の段階から将来の進路を考え、それに必要な勉強に取り組むという意識付けをしていきたいですね」(鈴木先生)
 「私たちが行っていることの一つひとつはどこの高校でもやっているような、当たり前の取り組みばかりです。ですが、それら一つひとつに全力で取り組み、試行錯誤を積み重ねることによって、川越高校独自の校風をつくってきたという自負はあります」(水谷先生)
 教師たちの熱意に呼応するように、今日も廊下に職員室に生徒が集まってくる。

写真 くっつき学習
くっつき学習も川越高校ならではの学習スタイル。先生にくっつくだけではなく、質問するために待っているときも、先生に質問している他の生徒の横にくっついて、その話を聞く。



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