VIEW21 2003.2  国際人を育てる THINK GLOBAL

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個人の努力に報いる教育制度の必要性

 集団主義・感性指向は決して悪いことではないけれども、国際社会で活躍するためには、国際社会の価値観も身に付けなければならないということですね。

 日本人は今まで、海外の思想や技術、文化を非常にうまく取り入れ、国の経済を発展させてきました。国際社会で活躍するためには、合理主義・個人主義に、日本の価値観をうまくミックスさせていくのが一番です。そのためにはまず、国際社会と日本の価値観の違いをきちんと認識すること、そして足りない部分を補っていくことが必要ですね。そこで、重要になってくるのが教育なのです。

 日本の教育制度をもう一度見直す必要があるということですか。

 そうです。まず初めは自主性の育成ですね。学校では、友達との関係を大切にするためにどうしても横並び主義になる。仲間がサボれば自分もサボる。この状況から脱するためにはもっとインセンティブ、つまり個人の努力に報いる制度が必要です。今のところ日本には入試しかない。しかも一発勝負です。一方、欧米の教育制度では、個人の努力を評価する機会がたくさんあります。高校では、習熟度別クラスは当たり前。試験も多く、その試験の成績が大学受験にも大きくかかわってきます。大学に入れば厳しい試験があり、かなり勉強しないと卒業することはできない。入り口が難しくて出口が簡単な日本とは反対ですね。
 このように、欧米では就職するまでに様々なハードルがあり、自助努力によって報われる仕組みになっています。また、一度失敗しても挽回できる環境が整っている。日本では、大学に入ってしまえば卒業するのは簡単で、就職の際にも大学での成績はあまり考慮されませんね。最近は徐々に変化しているようですが、まだ学んだ内容よりも大学名の方が就職に与える影響は大きいでしょう。大学は学問を追究する場ではなく、人間関係をつくる場となっています。一流の大学に入れば、社会に出てからも力を持ったOB・OGと交われ、恩恵を受けられる。このクラブ的意識が政治や経済の腐敗につながる場合もあるんです。集団主義社会の一つの弊害ですね。これでは、生徒は学校で勉強する必要性も感じないし、自主性も育たないでしょう。

 頑張った生徒や能力のある生徒が報われる制度が、社会や学校で求められているということですね。

 飛び級や飛び入学も生徒にとっては大きなインセンティブになります。また、大学を9月入学に変えるのも、生徒の自主性や社会性を高める一つの手段ですね。高校を3月に卒業し、大学に入るまでの半年間モラトリアムを与えるのです。その間、ボランティアやアルバイトをしたり旅行に出掛けたりして社会経験を積む。現在の高校生は学校が生活のすべての場になっており、社会と触れ合う機会が非常に少ない。これでは、自分の将来を十分に考えることが難しくなります。半年間自由に行動する機会を持つことで、ある程度自己の将来について熟考する時間が与えられるのではないでしょうか。

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