ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
目標に向かって前向きにチャレンジする姿勢を育てる
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これだけ
幅広い企画を実現するには、外部の機関・講師に頼らざるを得ない場合が多く、その人選や対外交渉などで多大な労力を要することは想像に難くない。
 「まずは、プログラムに賛同する教師だけで『とにかくやってみよう』ということになりました。ところが、実施を重ねるごとに、実際に『やれる』ということが分かると、参加する教師が増えていったのです。どんな企画もそうですが、とにかく、やってみることによって良さが分かってくるという面はあると思います」(木村先生)
 とは言え、プログラムに積極的な教師の間にも、実施までは不安があったことは確かである。しかしそうした不安も、事前準備に伴う負担も、参加した生徒たちの生き生きとした姿や笑顔によって払拭されたという。
 「生徒の笑顔を見るとどんな不安も苦労も吹き飛びますよ。だから、一緒に参加する教師も生徒と同じくらい楽しんでいます。当初、高3学年団の教師による自由参加という形で実施していましたが、一度参加した教師は次の年から積極的にかかわってくれるようになりました」(谷口先生)
 さらに、生徒たちの積極的な姿勢は、訪問先の施設の人々の心も動かした。前年度に保育体験を5日間実施した幼稚園から、翌年度は2週間に延長してもいいという申し出があった。看護体験を受け入れてくれた病院は、入院患者と交流する場を新たに提供してくれた。生徒たちの前向きな姿勢が、外部機関の人々から損得勘定抜きのサポートを引き出しているのである。
 毎年、プログラムの実施後には総括を行い、生徒へのアンケートによって改善を行っている。また、校内に「アイディア募集ボックス」を設置して、生徒から希望する企画を募るなど、質・量共に年々充実しており、参加する生徒の数も増加している(図2)。
図2
このような
規模の拡大に伴い、03年度からはこれまで学年行事だったものが学校行事として位置付けられることになった。さらに、進学が決まった生徒にはチャレンジプログラムを、決まっていない生徒には「進学補習」を実施し、生徒一人ひとりの状況に応じた指導ができる体制も整える。以前より、同校では英語科独自の試みとして、進学決定者と未決定者にクラスを分けて授業を行っているが、03年度からの取り組みは、その手法をより大規模に展開し、卒業間際の生徒の指導を徹底していこうというものである。
 また、同プログラムの2本柱の一つである大学特別講座もさらに充実させる予定だ。高大連携を視野に入れて、内部推薦が決まった生徒を対象とした大学の単位の先取りについても系列の大学・短大と交渉中である。さらに川崎校長は、将来の抱負を次のように語る。
 「看護体験や保育体験といった取り組みは、もっと多くの生徒に、できれば中学からでも体験させてあげたいと思っています」
 また、谷口先生は、進路指導における外部活用を大切にしていきたいと言う。
 「本校では、学問・職業の紹介や受験体験を語ってくれる人材を『進路アドバイザー』と呼んで把握し、進路指導の随所に活用できる体制を構築しています。卒業生を中心に、保護者、チャレンジプログラムで知り合った人も随時その中に入れています。中高のスムーズな接続のために、中3生の3学期に行う『高校生になろう』という企画では、卒業直前の現役高3生に高校生活の体験を語ってもらいます。また、高3の5月上旬に1週間かけて行う『先輩、勇気をください』では、志望分野別に各教室に分かれて、卒業生に受験勉強の方法を語ってもらっています」
 中高一貫制、系列大学を持つ強みを生かし、チャレンジプログラムは、さらなる発展を遂げようとしている。新たなアイディアを実現させるための、教師たちの「チャレンジ」は続く。
※同校のチャレンジプログラムの活動については、こちらで見ることができます。
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