ベネッセ教育総合研究所
特集 自学自習力の育成
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信頼感
進路ノート
 同校では生徒が「伸びようとする姿勢」を教師がサポートしていくよう心掛けているが、このスタンスを端的に表しているのが「進路ノート(Career Research)」である。3年間の進路学習の手引きとなる小冊子で、「学習編」と「活動編」の2冊に分かれている。「学習編」は進路学習の流れや学習方法、教科ごとの最新トピックなどを網羅。「活動編」は合宿オリエンテーションや個別面談、進路関係LHRなど、日々の進路学習の記録を書き込むノートである。
 この冊子の最も大きな特徴は、進路学習の様々な場面について、内容や自分の感想などを段階的に書き込んでいくことで、生徒が自らの成長過程を把握できる「ポートフォリオ形式」で編集されている点だ(図7)。
図7
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進路ノートの編集を担当している濱野雅樹先生は、その利点を次のように述べる。
 「とかくこの手の冊子は、生徒の活用が、担任の力量に左右される場合が多いのですが、本校の場合、ノートを開けば、生徒は手取り足取り教えられることなく、自分が今、3年間の活動のどの位置にいるのかが、一目で分かるようになっています。自主的に取り組めるよう工夫することで、主体的にキャリアプランを考えさせることができるのです」
 進路ノートは生徒の立ち位置を確認する他に、同校のアイデンティティを示すものでもある。例えば「学習編」冒頭の文章は「第2次世界大戦(太平洋戦争)終結から50余年が経過した」で始まる。
 「こうした大上段に構えた文章をあえてぶつけることで、指導スタンスを生徒と共有できるのではないかと思います。進路ノートは、本校の進路指導の拠り所と言ってもいいでしょうね」(濱野先生)
 進路部が一堂に会して実施する進路ノートの編集会議。同校の教師の進路指導に対するスタンスが最もよく表れる場面だ。LHRで活用するトピックスにはどのようなテーマを持ってくるのか、各教科でどの参考書を推薦するのかといった、進路ノートを構成する諸要素について議論を交わす中で、「他の教師が何を考えているのか、どういう生徒に育ってほしいのかが見えてくる」と濱野先生は言う。
 進学の先にある職業や社会、人生を見据える目を持たせつつ、今の自分をしっかりと振り返らせるための取り組み。それが同校の進路ノートである。生徒は進路ノートから教師の熱意を感じ、教師への信頼感を背景に自律した学習者へと育っていくのだ。

 新課程を視野に入れ、学校改革に乗り出した98年以来、「高高将来構想委員会」「21世紀委員会」などを設置し、変化に対応してきた高崎高校。だが、「学力向上委員会」の設置にも見られるように、新課程導入に伴う生徒気質の変化に新たな対応を迫られている。
 「今、学校教育は大きな変わり目にあります。中でも生徒気質の変化への対応は大きな課題です。本校の活動の多くは、学習の動機を与える効果を発揮していますが、そうしたノウハウが通用しない生徒も増えています。学校活動のあらゆる場面で生徒の変化を感知し、適切に対応していく必要があると思います」(関根正史先生)
 「総合的な人間力の育成」という揺るぎない理念の下、学年団が機動的に行動し、生徒を側面からサポートする──。それが、生徒の自学自習力を構築し、進路実現へ向かう力になっているのだろう。


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