ベネッセ教育総合研究所
特集 進路学習の深化を探る
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3  「大学・学問」への意識を早期に深める
 難関大志望者が多い同校では、2年12月末には「生徒を受験生にする」ことを目標としている。そのため同校では、志望校・学部学科研究の山場を2年前期に設定し、大学研究を実施している。一見すると、2年の早い時期に一気に「選択させる」ように見える取り組みだが、その背後には、様々な「拡散」と「揺さぶり」の仕掛けが散りばめられているようだ。まずその一つが、1年後期に実施される学問研究だ。
 「2年生から具体的な大学名を前面に出した取り組みとなる分、1年後期では、『現時点での志望に捕らわれず、面白いと感じた学問から幅広く進路を考えること』を重視します。もちろんこうした狙いはガイダンスで生徒に説明し、最初から視野・興味を絞らないように注意します」(丹宗先生)
 研究のスタイル自体は、職業研究とほぼ同じ手法が踏襲される。すなわち、個人研究をベースとしながら、適宜クラスで中間発表会などを行い、生徒同士が相互の研究成果を学び合える機会を取り入れているのだ。また、この活動においても、前期の職業研究同様、生徒に考えさせたいのは、社会との関わり方や人生観といった、進路選択の根っこになる部分である。
 「学問研究に際しては、『具体的な社会問題の解決に向け、どういう学問がどのように貢献できるのか』、というアプローチで研究するよう生徒に伝えています。もちろん、いきなりそうした課題を考えるのは容易ではありませんから、代表的な社会問題について理解を深める『用語概論』などの講義形式の指導も適宜取り入れています」(越智先生)
 更に、学問研究と並行して、興味を持った学問が学べる大学や学部・学科の名前をある程度は調べさせておくのも工夫の一つだ。
 「1年次は視野を広げる活動を重視していますが、2年次からは一気に具体的な大学名を意識させる取り組みにシフトします。そこで、この時点で具体的な大学名を出す活動を入れることで、接続をスムーズにする狙いがあります」(鶴田先生)
 このような事前準備を経て、同校の生徒たちはいよいよ2年前期から学部・学科研究に取り組んでいく。ここでの狙いは、1年次の「拡散」のアプローチを踏まえて一気に「決める」プロセスに入ることだ。この意識転換を図るため、同校では、2年次9月までに志望校の「志望理由書」が書けるようになることをあらかじめ目標として設定し、生徒に伝えている。
 「志望進路を絞り込む段階で重要になってくるのは、志望校に『惚れる』というレベルまで、しっかりとした志望理由を持たせることです。1年次の取り組みでも生徒には書かせる活動を必ず行わせていますが、ここではその成果を生かして、1年後の自分の人生について、しっかりした見通しを立てさせるわけです」(鶴田先生)
 一方、研究の過程で作成される各種の報告書は、担任が生徒一人ひとりを把握する上でも重要なツールとなっている。
 「学部・学科、志望校研究の過程では、生徒の状況を把握しつつ指導を行うため、2年次に担任は最低でも年5回、生徒との面談を行います。その際には、志望していなくても、興味を持った大学を複数調べるよう促す、あるいは、調査の方向性や比較研究の観点に関わる相談なども行い、2年前期からの志望決定が無理なく行えるよう配慮しています。こうしたきめ細かな指導を実現する上で、生徒が作成したフォームの活用が欠かせないものになっているんですね」(青木先生)
図4


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