ベネッセ教育総合研究所
特集 導入期の集団づくり
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同級生、上級生との関係づくりを重視したオリエンテーション合宿
 豊田西高校の導入期指導の一つの山は、毎年4月中旬に実施されている2泊3日のオリエンテーション合宿である。豊田西高校では3月の合格者登校日の時点で各教科の学習の仕方の説明や進路シラバスなどが盛り込まれた『西高生の手引き』などの冊子を生徒・保護者に配付し、高校生としての学びの姿勢を確立する重要性を伝えることから指導がスタートしている。4月中旬に行われるオリエンテーション合宿は、言わば入学前からの一連の指導の「総まとめ」として位置付いているのだ。図1にそのプログラムの一部を示したが、1学年主任の久田恒夫先生はその狙いを次のように整理する。
 「オリエンテーション合宿の主な目的は、目標実現を目指す仲間意識の形成、生活習慣の確立、学習習慣づくりの3点です。特に前者2点には力を入れており、クラスの仲間同士でのレクリエーションや、上級生とのパネルディスカッション、そして卒業生からのビデオレターの上映など、同じ学校に通う仲間としての一体感の醸成を狙った取り組みを数多く実施しています」
図1
 新入生合宿において、学習面のウエイトを高める学校も多い中、豊田西高校がこのような取り組みに多くの時間を割いている背景には、学校特有の事情もあると、寺町教頭は語る。
 「オリエンテーション合宿の最大の狙いは、『この学校で頑張れるんだ』という安心感と、『自分もできる』という自負心を生徒に持たせることです。実は愛知県には、複合選抜制(注)という入試制度があり、本校の場合にも、第二志望で入学した生徒が、例年、学年の3割強に当たる100人程度存在します。オリエンテーション合宿では、挫折感を抱いている生徒の意識を立て直し、本校の生徒であることへの自覚を持たせることを重視します。学習指導の前に、集団形成こそがまずは大切だと考えています」
注)愛知県内の学区内の公立普通科高校が二つの群れに分かれ、各群内の学校さらにA、Bグループに分かれて入試が行われる複合選抜を実施(Aグループ、Bグループは、入試日程・問題内容が異なり、同一群内であれば、各グループ内で1校ずつ受験できる)。
 こうしたコンセプトに照らしたとき、最も注目される取り組みは、上級生を招いて実施されるパネルディスカッションだ。豊田西高校では、新入生の参加意識を醸成することを狙い、この形式にこだわって実施している。新入生の代表者4名と、2、3年生の代表者6名が壇上で討論し、他の生徒も随時挙手をして、質問等が可能なスタイルだ。久田先生は、活動の具体的な様子を次のように説明する。
 「パネルディスカッションにゲストとして招くのは、部活と学習をうまく両立して頑張っている生徒や、入学時には本校を第二志望にしていた生徒です。新入生の中には、第二志望で入学した者や、遠距離通学に不安を覚える者もいますが、先輩が『西高生』としての今の生活に充実感を持っていることを知り、安心するようです。また、討論への参加意識を新入生全員が持てるように、事前にクラス全員の質問事項をまとめ、パネラーの生徒に渡すといった工夫も取り入れています。本音の対話を行うことで、自分たちが2、3年後にあるべき姿をイメージさせ、集団意識を高めていきます」


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