ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 未来を模索する単位制高校
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2 教師の加配を生かし、質の高い授業を追求
 単位制を導入するメリットの一つには、教師の加配が受けられることがある。浦和高校ではこれを、カリキュラムの多様化に振り向けるだけではなく、同一教科内での少人数授業の拡充にも当てている。例えば、同じ3年次の数学の場合でも、基礎・基本の定着を図るものから、受験に向けた実力養成を目指したものまで、できるだけ多くの授業を開講しているのだ。
 だが、浦和高校の少人数授業は、単なる習熟度別授業とは一線を画するもののようだ。特に、こうした授業の中に、大学の専門基礎教育に相当するような講座を各教科とも必ず用意していることは注目すべき取り組みと言えよう。杤原正浩先生は、この点には大きな意味が込められていると強調する。
 「本校では伝統的に、『授業で勝負』し、その中で生徒に学ぶ楽しさを伝えることを、一番大切にしてきました。ポテンシャルの高い生徒であれば、授業を面白いと思えば、必ず自ら学習に向かいます。授業を通じて学問の面白さに目覚めさせることができるかが勝負であると考えています。そこで単位制への移行を機に、大学の専門基礎科目のような授業を、選択科目の一環として実施することにしたのです。もちろんこの理念は、本校のすべての授業の根幹を成すものです」
 実際にどのような授業が行われているのか、中村先生は物理の授業の様子を次のように語る。
 「例えば私の担当する講座では、教科書をほとんど使いません。独自のプリントを中心に授業を進め、30テーマの生徒実験を実施しています。各実験の後、一週間の時間を与え、調べたり再実験したりして十分な考察をした自前のレポートを作成します。授業の中で教師は生徒の気付きや発見を促し、安易な結論を出さないように働き掛けています。自分の手と頭をフルに使って実験し、結果を考察するというアプローチを身に付けることは、理工学系の学問を本当に学びたいという思いを生徒が持つことにつながっていると考えています」
 確かにこのような授業は、直接的な「受験学力」の養成にはつながりにくいだろう。しかし、浦和高校は単位制を採ることにより、知的欲求の喚起を重視したアプローチをしやすくし、本質的な学びへと生徒を向かわせることを選択したのである。


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