ベネッセ教育総合研究所
特集 学びに向かう集団づくり
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生徒だけでなく当初は教師側にも戸惑いがあった
 こうした教科センター方式の導入に対し、当初は慎重な検討を求める声も少なからずあった。その最たるものが、「教師や教室が頻繁に変わる環境に、生徒が対応できないのではないか」という心配の声だった。
  確かに、教科センター方式を導入した当初、特に1年生には、新しい学習環境と生活リズムに落ち着きを失う生徒も見られたという。そこで聖籠中学校では、1年生の1学期は、習熟度や課題別のグループ分けをせず、HB単位で授業を行った。2学期以降、集団の枠組みを段階的に流動化することで、生徒は無理なく順応できることがわかったという。
  一方、生徒ばかりではなく、教師側の対応にも解決すべき課題があった。とりわけ、5教科では習熟度別・課題別に三つのHBの授業が同時進行するため、それぞれの進度にバラツキが生じないようにする必要がある。だが、聖籠中学校では、同じ教科の教師は、それぞれの教科エリアの職員室にいるため、日ごろから密接な連携を取るには最適な環境となっている。そのような環境を生かして、今では授業の進行に関する打ち合わせに加え、情報交換の密度も高まり、互いの指導力を高め合う好循環が生まれているという。
  ただ、学級とHBの担任が異なることによるメリットを確かなものにするためには、言うまでもなく、学級担任とHB担任との連携が欠かせない。通知表の記述や保護者への連絡、進路指導などは学級の担任が担当するが、やはりそれにはHBの担任との密接な情報交換が不可欠になってくる。その点への配慮として、聖籠中学校ではすべての教師がパソコンを持ち、情報の入力・確認を行い、情報を共有できるようにしている。
  教科センター方式に加え、聖籠中学校が取り入れた個性的な制度はほかにもいくつかある。その一つが、地域交流棟の設置である。
  ここには、町民ホームベースがあり、ボランティアが交代で常駐している。町民ホームベースはランチルームの隣にあり、生徒が毎日通るところに設置され、交流が意図的に起こるように配慮されている。また地域住民は、その他にもボランティアとして授業にも頻繁に顔を出す。このような仕掛けにより、生徒は交流のなかで地域集団の一員としての経験を積んでいくことができるのだ。


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