Between 2003.04 特集　大学評価のゆくえ
学校教育法の一部が改正され、第三者評価制度を受けることが義務づけられた。文部科学省は、「事前規制から事後チェックへ」という教育行政の流れを加速しつつある。第三者評価の実施は世界的な潮流となりつつあり、国際統一基準を作ろうという動きすらある。アメリカやイギリスではどのような第三者評価を実施しているのか。日本での実施にあたっての課題は何か。第三者評価を中心とする大学評価のゆくえを探る。
【概 説】 大学評価をめぐる経緯と課題
段階的に整備されてきた大学評価の法的規制 　2002年11月に学校教育法の一部が改正され、大学は、04年4月から第三者評価を受けることが義務づけられた。また、同法では大学の設置認可制度も見直され、一定の条件を満たす必要はあるものの、国の認可制から届け出制になり、大幅に規制が緩和されることとなった。「事前規制から事後チェックへ」という文部科学省の政策転換がいよいよ現実のものとなってきたといえよう。 　第三者評価制度が法律として明文化されるに至るまでの、大学評価をめぐる経緯を振り返ってみると以下のようになる。 （1）91年、2月の大学審議会答申を受けて、大学の自己点検・評価の実施を努力義務とすることが大学設置基準に明記される。 （2）98年、大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」の中で、多元的な評価システムの確立のために、自己点検・評価の充実と、第三者評価システムの必要性が指摘される。 （3）99年、大学設置基準を改正し、大学の自己点検・評価の実施とその結果の公表を義務化。あわせて外部検証（当該大学以外の者による検証）を努力義務とする。 （4）00年、98年の大学審議会答申を受けた国立学校設置法の改正により、それまでの「学位授与機構」を改組し、「大学評価・学位授与機構」を設置。 （5）00年、大学審議会答申「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」で、大学評価・学位授与機構などの多元的な評価の推進に加え、技術者教育をはじめとする様々な専門職業教育の分野でのアクレディテーション（適格認定）・システムの導入支援が提言される。 （6）01年、政府の総合規制改革会議において、「規制改革の推進に関する第1次答申」が出される。その中で、「第三者による継続的な評価認証（アクレディテーション）制度の導入」が提言される。02年度中に措置（検討・結論）することに。 （7）02年、中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」で、第三者評価制度の導入の枠組みを明確化。また、機関別第三者評価と専門分野別第三者評価に分けて、それぞれの在り方についても言及。 （8）02年、中教審答申を受けて、学校教育法の一部を改正。第三者評価制度が法律化される。 　こうしてみると、大学審や中教審の答申等を受けながら、「自己点検・評価」から「外部検証」へ、そして今回の「第三者評価」と、大学評価の客観性や透明性を高めるための措置が段階的に講じられ、それにあわせて評価機関も整備されてきたことがわかる。 義務づけられた第三者評価の概要 　今回の改正学校教育法では、第三者による大学評価制度については具体的に以下のようになっている。 1　定期的な第三者評価の実施 　大学はその水準の維持向上のため、（1）全学的な教育研究等の状況（2）専門職大学院の教育研究活動の状況について、文部科学大臣の認証を受けた評価機関（以下「認証評価機関」という）による評価を定期的に受けるものとする。 2　評価結果の公表 　認証評価機関は大学の求めに応じて評価を行い、その結果を当該大学に通知するとともに公表し、文部科学大臣に報告するものとする。 3　認証評価機関の認証 　評価機関の認証は申請により行われるものとし、評価の基準や方法、体制等が公正かつ適確に評価を行い得る一定の要件（以下「機関認証基準」という）に適合しているときは、認証されるものとする。 4　認証評価機関に対する措置 　評価の公正かつ適確な実施を確保するため、文部科学大臣から認証評価機関に対する報告や資料提出の求め、必要な改善の求め、さらには、認証の取り消しができるようにする。 5　審議会への諮問 　文部科学大臣は上記の権限を行使するにあたっては、あらかじめ審議会（中央教育審議会）に諮問しなければならない。 　今回の学校教育法の改正でもうひとつ注目すべきことは、「違法状態の大学に対する是正措置の整備」として、文部科学大臣が法令違反の大学に対し改善勧告、変更命令、学部等の組織の廃止を命ずる措置を段階的に講じることができるようになったことである。これによって、第三者評価を受けようとしない大学は法令違反となるが、状況によってさまざまな措置を講じることが可能となった（図表1）。 評価機関の認証条件 　では、今後の認証評価機関の基準はどのようになるのであろうか。改正学校教育法の第69条の4に「認証評価機関」の認証の条件が提示されている。具体的には、以下の6点のいずれにも適合すると認めるときは、その認証をするとして次のように明記されている。 （1）大学評価基準及び評価方法が認証評価を適確に行うに足りるものであること （2）認証評価の公正かつ適確な実施を確保するために必要な体制が整備されていること （3）認証評価の結果を公表する前に大学からの意見申立ての機会を付与していること （4）認証評価を適確かつ円滑に行うに必要な経理的基礎を有する法人（任意団体を含む）であること （5）認証を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない法人でないこと （6）その他認証評価の公正かつ適確な実施に支障を及ぼすおそれがないこと 　そして、これらの基準を適用するに際して必要な細目は、文部科学大臣が、これを定めるとある。 　そして、その細目の考え方が03年3月に「文部科学大臣が第三者評価機関を認証する際の基準（細目）について」と題する資料として中央教育審議会大学分科会に提出され、了承された。そこには、 1. 大学評価基準について （1）評価項目及びその内容が大学設置基準等を踏まえたものであり、大学（専門職大学院）の教育研究活動の全体の状況を適切に把握した上で評価するものであること。 （2）大学評価基準の策定・変更にあたっては、その過程の公正性及び透明性を確保していること。 2. 評価方法について （1）大学の自己評価結果の分析、実地調査の実施その他適切な方法により評価を行うものであること。 3. 評価体制について （1）大学の教育研究活動に関し、識見を有する者により評価が行われるものであること。なお、専門職大学院評価の場合にあっては、当該専門職大学院の課程に係る分野の実務経験者が含まれていること。 （2）評価の観点や実施方法等について評価員間の共通理解を図るため、研修の実施等の措置を講ずるものであること。 （3）評価の過程において、大学の教員以外の者の意見も反映し得るよう配慮していること。 （4）認証評価を受ける大学の職員は除外して評価を行うものであること。 4. その他 （1）大学評価基準、評価方法、評価体制等に関する情報を公表していること。 （2）大学から認証評価を求められたときは、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく、評価を行うものであること。 （3）機関別と専門職大学院の認証評価を同時に行う場合、 　・一方の認証評価に係る部門が他方の認証評価に係る部門から独立していること。 　・一方の認証評価に係る経理と他方の認証評価に係る経理とを区分していること。 （4）大学評価の実績その他により認証評価を公正かつ適確に実施すると見込まれる者であること。 （5）専門職大学院の認証評価の場合、評価を受けた専門職大学院の教育課程または教員組織に大きな変更があったときは、その部分について速やかに評価等の措置を講ずることとしていること。 （6）法科大学院の認証評価機関に係る細目は、文部科学大臣が別に定める。 積極的に第三者評価機関を利用する姿勢が大事 　このように第三者評価制度が法令化された以上、その結果が資源配分に結びつくのかどうか、また、結びつくとすればどのような形なのかといった点も大学関係者の間では関心の高い問題であろう。 　しかし、文科省では「評価結果がそのまま国の資源配分につながることはない」としている。この第三者評価は、あくまで大学に自己改善を促すことを目的としたものであり、第三者評価機関は複数となることが予想されるため、一律に同じ尺度で結果を比べることができないことから、資源配分につながりにくいと考えられる。 　03年2月、法政大学は学外の投資家向けに学校債を発行するにあたり、学校法人として国内で初めて長期優先債務の格付けを取得した。新しい第三者評価機関が立ち上がるまで受け身の姿勢で待つのではなく、同大学のように、すでに機能しているさまざまな格付け機関に積極的に打って出て、アピールする姿勢を持つことが必要となっている。 ＞トップへもどる ＞大学・短大トップへもどる ＞バックナンバー
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