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「撰壇塾」は、関西経済連合会（以下、関経連）が進めている「インテリジェントアレー構想」プロジェクトの一環として実施されている。同構想は、都心部に大学機能を集積し、大学と企業の交流を促進することで関西経済圏の発展を目指している。
この背景には、40年ほど前に施行された既成市街地での大学設置を制限する法令に基づき、多くの大学が郊外に移転したため、大阪の都心部は、東京都心部に比べて圧倒的に大学が少ないという状況がある。特に大阪の環状線内には大学が一つもないため、大学を都心に呼び戻して、産業界との連携を深めようというわけだ。
構想実現に向けて、2001年11月、「大阪インテリジェントアレー推進懇談会」が発足。24大学、関経連の会員24企業、行政団体などおよそ60の団体が名を連ねた。
大学側は、18歳人口の減少により社会人を大学教育の中に取り込まざるを得ず、産業界もまた人材育成や技術革新などの点で大学からの支援を必要としているため、互いの利害が一致した形だ。
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学ぶ意欲は高いが大学院は敷居が高い!?
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同懇談会は02年8月、社会人教育のプログラム開発に先立って、「社会人の学びに関するアンケート」を実施した。関経連の会員企業などに勤める20～30代の個人を対象にしたニーズ調査で、約3700人から回答を得た。社会人には高い学習意欲がある反面、「学び」に対する情報が不足しており、時間的・金銭的な悩みも大きいことがわかった。
学習意欲の高さは、「ためになりそうなものがあれば、すぐにでも学んでみたい」が6割以上に達し、「資格が取れるもののみ学びたい」と合わせて4分の3近くが前向きな姿勢を見せた。
学ぶ目的としては、より高い条件の職場に転職したり、独立開業などを目指す「キャリアチェンジ」よりは、現在の職場における職務遂行能力を高める「キャリアアップ」志向が強い（図表1）。ただし、回答者の約半数が従業員5000人以上の大企業に勤務している点は考慮する必要があるだろう。
学ぶ上での阻害要因は、時間的な制約、金銭的な制約の順で多かった（図表2）。スクールなどで学ぶ時間帯の希望は、「平日夜間」が45％と圧倒的に多く、授業開始時刻は「19時～」の希望が最も高かった。多くの夜間講座は18時または18時30分開始のところが多いが、社会人の希望はもっと遅い時間帯であることがわかった。
注目すべきは、大阪市内のサテライト大学院の存在を半数以上が「まったく知らなかった」としたことだ（図表3）。
サテライト大学院で学ぶつもりがない人は約8割に達しており、その理由として「サテライト大学院がどんなものかよくわからないから」が半数を超えていた（図表4・5）。大学側が発信する情報が個人まで届いていないことが明らかになった。
アンケートではさらに、パソコンやビジネススキルなどの講座の種類ごとに、学びたい講座とそのために支払える限度額なども細かくたずねている。関経連の吉崎賢博参事は、「これらの結果から、平日夜の19時以降に、プレゼンテーションスキルなどの人気講座を、自己負担できる程度の受講料で設定し、適切な方法で個人に訴えかければ、多くの社会人が学びに来る可能性が高いことがわかります」と語る。
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「撰壇塾」から大学院へ社会人の学びを階段状に整備
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懇談会では、社会人がいきなり大学院教育を受けるのは抵抗があるだろうと考え、大学院入学までの道のりを段階別に想定し（図表6）、特に学びのきっかけとなる“入り口”の整備が重要だと判断した。
その結果誕生したのが、03年1月から大阪・梅田で開催している「インテリジェントアレー撰壇塾」だ。企業人や労組への教育研究事業で実績を持つ関西生産性本部との共催で、「企業経営」「日本経済・国際経済」「政治・社会」「ビジネススキル」「文化・スポーツ」「科学技術」の6分野にわたる全25回の講演会を立ち上げた。
開始時刻はアンケート結果を反映して19時に設定。講演は1回ごとに完結し、受講者は聞きたい講演の枚数だけチケットを購入して受講する。講義終了後に毎回、隣席の人と意見交換を行う「ミニワークショップ」を実施。また、2カ月に1回程度の割合で業種・職種・年齢・立場を超えた交流を目指す「立食交流会」などを開催。
1講演当たりの受講者は毎回平均120人で、男性は40歳前後、女性は30歳前後の人が多い。関西生産性本部経営革新部の五百籏頭（いおきべ）健氏は「男性は30歳前後の人が、女性は全体数が増えてくれるとうれしいですね」と語る。
これらの講座をファーストステップとし、第2段階として「ワークショップ」や「専門セミナー」を実施する予定だ。ワークショップは、テーマを決めて受講生が議論をする場であり、意識を高める目的で行われる。専門セミナーはさらにテーマを絞り込んだ講義で、現在、各大学の社会人大学院で行われている講座をリーズナブルに提供できないか検討中だ。
このステップアップについて関西生産性本部の小宅誠司経営革新部長は、「撰壇塾は多様な分野について広く浅く最新情報を提供する場ですが、ワークショップや専門セミナーは、各大学の得意分野で、その研究の専門家と直接話し合いながら学ぶ場として、カリキュラムも特化したものを想定しています」と説明する。このレベルよりもっと深い研究に目覚めた人は、専門職大学院へ進むことが期待される。出口整備も手がけている。社会人が努力して社外の教育機関で講座を受けたり、資格を取っても、企業から評価してもらえないことが多い。吉崎参事も「学んだことだけを取り上げて評価することはできませんが、学んだ人に結果を出すチャンスを与えてあげることは必要だと思います」と企業への要望を口にする。
もっとも、多くの企業はそうしたノウハウを持ち合わせていないことが多い。そこで、年功序列を廃して成功した企業や、独自の人事制度で業績を上げている企業などの例を紹介したり、社会人大学院を修了して採用された人とされなかった人の違いについて調査を行いながら、企業での採用に結び付く要素をまとめる予定だ。「それらの要素のいくつかを社会人大学院できちんと保証できるようになれば、企業にとって大きな人材供給源になるはずです」（吉崎参事）。
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