| Betweenは（株）進研アドが発刊する情報誌です。 |
|
 |
| ９／14 |
  |
|
教員養成系学部の再編・統合問題
「養成担当校」をめぐり大学間協議が難航 |
| focus |
国立大学の改革に関わる大きなテーマの一つに、教員養成系大学・学部の再編・統合問題がある。この問題は、少子化→教員養成系学部卒業者の教員就職率の低下→入学定員の削減→学部の小規模化による非効率性、という状況で浮上した。全国に48ある教員養成系大学・学部のうち、教員養成課程の定員が100人以下のところが３分の１を占めている。また、議論の過程で、教員免許取得を必修としない「新課程（ゼロ免課程）」の存在意義と今後の在り方も焦点となっている。
文部科学省の基本姿勢は、2001年11月に「国立の教員養成系大学学部の在り方に関する懇談会」がまとめた報告に示されている。そこでは、県域を超えた再編・統合が提起され、「１都道府県１教員養成学部体制」という方針からの転換を打ち出している。同報告の要旨は以下の通り。
・教員養成課程全体の入学定員は現在の１万人規模を維持する。
・一学部あたりの学生数や教員組織が適正な規模となるよう、近隣の複数都道府県を単位として再編・統合を行う。
・特に小学校教員の養成機能の地域偏在を避け、全国的にバランスのとれた養成体制にする。
・ゼロ免課程は原則として教員養成学部から分離する。
・再編・統合する大学・学部間で教員養成課程とゼロ免課程の役割分担を図り、ゼロ免の定員を既存組織の充実にあてるなどして、大学の個性・特色を強化する。
・教員養成学部がなくなる都道府県では、教育委員会と連携して、現職教員の大学院での再教育体制を整備する。
■教員養成担当大学
・原則として教員養成課程のみを置き、幼稚園から中学（必要に応じ高校）までの各種免許取得に対応、ゼロ免課程は置かない。
・教員養成学部がなくなる都道府県を含め、教員の養成・採用・研修の体制整備に関し教育委員会と連携する。
・大学院では、教員養成学部がなくなる都道府県も視野に、現職教員の教育体制を整える。
■教員養成学部がなくなる大学
・教員などの資源は、教養教育や地域のニーズに即した人材養成を行う組織、学内既存組織の充実にあてる。教員養成担当大学への振り替えも検討する。
・当該都道府県の現職教員再教育については、教員養成担当大学のサテライト教室や遠隔教育で対応する。
文科省ではこの報告に沿って再編・統合を進める方向で、現在、検討・協議を続けている大学には、
（1）宮城教育大学、山形大学、福島大学
（2）弘前大学、岩手大学、秋田大学
（3）群馬大学、埼玉大学
（4）三重大学、和歌山大学
（5）京都教育大学、滋賀大学
（6）島根大学、鳥取大学
（7）鳴門教育大学、香川大学、愛媛大学、高知大学
などがある。このうち（6）では将来的に、教員養成課程とゼロ免課程の定員を交換し、島根大学では鳥取県への教員供給も視野に教員養成課程の体制強化を図り、一方の鳥取大学では現在の教育地域科学部を、地域のニーズにより対応した教育組織として充実させる方向になっている。
しかし協議中の大学の多くで、再編・統合の基本路線には合意しても、教員養成の担当校をどこが担うかという問題をめぐって交渉がまとまらず、協議を白紙に戻すケースも出ている。教員養成担当大学がなくなる地域の教員養成と現職教員の再教育機能について、同報告では、サテライト教室や遠隔教育による対応を提言しているが、その実効性を疑問視する声も根強い。
文科省では、協議が難航しても同省が主導して再編・統合を進める考えはないとしており、今後も大学の主体的な検討に委ねる方針だ。同省の担当者は、「この問題はあくまでも教員養成系大学・学部の充実・強化が目的であり、再編・統合はその手段の一つ。各大学には、充実・強化策として実効性ある組織体制の改革案を積極的に考えていただきたい」と話す。
今回の再編・統合問題を機に、各大学は、これまで真に地域の要請に応える形での教員養成や現職研修、ゼロ免課程での独自性ある教育を行ってきたかという問題も突き付けられているといえそうだ。 |
|
