ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
 
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オンライン大学の明暗

 インターネットの普及に伴い、アメリカではオンライン大学ビジネスが一時期急成長を遂げた。キャンパスに通う必要がなく、各自のスケジュールに合わせて学習できるオンライン大学は高等教育を目指す社会人にとって、あるいは地方に住む学生にとって非常に便利なシステムである。しかし時代の波に乗って、オンラインビジネスに参入した大学の多くは撤退しているのが現状である。株式会社立の大学だけではない。コロンビア大学やニューヨーク大学、デューク大学など大手名門大学が母体となって創設されたオンライン大学も失敗に終わっている。
 多数のオンライン大学が失敗した最も大きな理由は、オンライン教育の運営は、経営者側が予想していたよりもはるかに多額の経費がかかってしまい、それを補うだけの収入の見込みが得られなかったため。そのような状況下で、カプランのオンライン大学は着実に学生数を増やし、現在アイオワ州のカプラン大学では総学生数1万5500人のうち、1万人がオンラインで学んでいる。
 カプランが生き残り、しかも着実に成長している理由は、まず長期的な視野を持っていたこと。次にカプラン社の大学入試準備プログラムや大学院進学プログラムでの大規模なネットワークを使って強力な学生募集を行うなど、会社の経営資源を最大限に生かしていることがあげられる。レビィ氏は「アメリカのオンライン大学は、これからさらに淘汰されていくでしょう」と言う。
 オンライン大学を成功させるためには、今後、雇用市場ではどのような専門職・技術職が必要とされているのかを見極めるための広範で綿密なリサーチが重要であると同時に、優れた経営能力も要求される、とレビィ氏は指摘する。
 強力なネットワークと優れた経営能力で成長を遂げるカプラン・ハイヤー・エデュケーションが直面する問題は、巨大化していく組織をどのように運営していくかにある。学生数の増加に伴って利益が増え、納税額も増える営利大学の経営は、通常の株式会社と全く同じといえよう。


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