進路意識が高いから交流に取り組んだのかその逆なのかは、残念ながらこの調査からは明らかにできなかった。しかし、進路意識、教員とのコミュニケーション、大学満足度の三つが強い相関関係にあることははっきり言える。
学生の進路意識を高めようとすると、どうしても「働くことについて考える」「職業について知る」など、進路に直接関連するテーマを取り上げがちだ。しかし、まずは大学生活全体に対していかに前向きな意識(満足度)を持たせるかが前提となり、そこでは教員が積極的に学生と関わることが重要である。そうしたことを抜きにして、進路意識の向上は難しい。
もちろん、進路や職業に直結したテーマでのキャリア教育に意味がないというわけではない。ただし、それはあくまでも条件つきである。今回の調査で、キャリア系の授業・セミナーを1、2年次で受講した学生と受講しなかった学生とで比較すると、3年次の進路意識で統計的な差は見られなかった。では、このような授業やセミナーには効果がないかというと、答えはノーである。それを裏付けるデータを紹介しよう。
受講した学生に、それが同一の講師によるものか、複数の講師によるものかを聞き、3年次での進路意識を比較した結果、同一の講師が行った方が進路意識が高くなる傾向が見られた。複数の講師の場合、ゲスト講師が毎回様々なテーマで講義を行うケースが多い。講師陣は学生にとって刺激のある話をしてくれるであろう。しかし、全14回なりの授業を通して見ると、学生に何を学んでもらうかという一貫した目的と各回の関連性が不明確な場合が多いように思われる。同一の講師が行う場合は、少なくとも前後の授業のつながりを考えた上で体系的なカリキュラムを組みやすい。その違いが、学生の進路意識に反映されるのだろう。
私も授業の1、2コマでゲスト講師を依頼されることがあるが、前回の授業や次の授業で何が話されるのか、よくわからないことが多い(さすがにテーマと講師については事前に知らされるが)。1コマだけでは、授業というより講演である。講演は1回きりでよくても、授業は全体的なテーマが重要になる。講演はできるが授業はできないというゲスト講師が多いため、やむを得ないという事情もあるかもしれないが、キャリア教育とは文字通り「教育」である。教育の中心が授業であるなら、そこには意図的、計画的、組織的な組み立てが求められるはずだ。
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