ベネッセ教育総合研究所
キャリア教育再考
IPUコーポレーション
チーフディレクター
松高 政(まさし)
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キャリア教育再考

第4回 “自分に対する不安”の自覚を促し解決への行動と進路決定に導く

学校→社会の移行の支援

 最近、「NEET(ニート)」という言葉を聞くようになった。Not in Education,Employment or Trainingの略で、働こうとしていない、学校に通っていない、仕事に就くための訓練も受けていない、という若者をそう呼ぶらしい。若年者の就業問題といえば、フリーターや失業者に注目が集まるが、フリーターはアルバイトやパートであっても働いているからまだましであり、失業者は仕事を探そうと行動している。ニートは、仕事をしていないだけでなく、仕事に就こうという意欲すら失ってしまった無業者である。労働に全く関わっていないため「非労働力」として扱われ、労働統計でもカウントされない。

図表1 非労働力(非在学・非家事)の人口の割合

図表

(国勢調査・各年から)

 図表1は95年と00年の非労働力人口の割合を表している。男女とも増加傾向にあるが、19歳と23歳に山がある。高校や大学を卒業して1年目という年齢で、学校から職業への移行がスムーズに進んでいない状況を端的に物語っている。大学教育の役割が、人材を育成し社会に送り出す機能にあるとすれば、その役割を十分に果たしていると自信を持って言える大学人はどのくらいいるだろうか。
 「新卒、一括、正社員採用」という仕組みが大きく変化し、新しい仕組みをつくらなければならない段階になった今、「大学は就職のためにあるのではない」という発想は、あまりにも現状の把握が甘すぎる、と思わずにはいられない。社会学的に捉えれば、大学生の就職とは「学校」から「社会」へという別の局面への社会移動の問題である。就職支援とは単なる方法論の指導ではなく、社会へ移行(トランジション)するための支援なのである。大学生活全般に関わる大局的な捉え方が求められているのだ。



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